介護職員として取っておきたい資格3選

投稿日:2015-03-09
更新日:2022-07-12

介護に関する資格はどんなのがあるの?

介護現場は慢性的な人手不足です。厚生労働省によれば、有効求人倍率は2020年度で施設の介護職員が3.90倍、ホームヘルパーが14.92倍と高水準となっており、文字どおり「売り手市場」だといえます。
求職者はあまり苦労しなくても、仕事を見つけることができる業界だといえるでしょう。

とはいえ、介護の経験が全くない、介護の資格を持っていないという人は就職活動がうまくいくのか不安な人がいるでしょう。
また、実際に就職できたとしても、うまく仕事ができるのか心配な人もいるはずです。

この記事では、介護分野で役立つ資格を紹介するとともに、その資格の取得方法を解説します。希望する仕事に就くためにも、どのような資格が必要となるのか知っておくことが重要です。

介護の代表的な資格にはどのようなものがある?

介護職員として求められる資格には様々な種類があります。代表的な資格は次のとおりです。

  • 介護職員初任者研修
  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護福祉士

以下、各資格の概要を説明するとともに、その取得方法について説明します。

それぞれの資格の特徴、取得方法

ここでは介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士の概要を説明するとともに、それぞれの資格取得までのプロセスを紹介します。

介護職員初任者研修

初任者研修は、介護系資格のなかで最も基本となる資格です。介護業務が未経験の人でも、イチから学ぶことができます。
数年前まではホームヘルパー2級といわれていたものが、制度改正により名称が「初任者研修」となりました。その名のとおり、介護に関わる初任者が取得するものです。

受講期間

実施機関によって異なりますが、基本としては130時間以上の講習受講が必要です。最短で1ヶ月程度で取得できるコースがあり、短期間で時間をかけずに取得することも可能です。

受講の要件等

受講のための要件(学歴、介護経験の有無等)は、一律に定めがありません。
ただし、実施機関によっては、細かな要件等(日本語の読解能力がある、受講場所に通学することができる距離に在住している等)を定めていますので、申し込み前に必ず確認して下さい。

どこで受講できるのか

日本全国、様々な場所で、様々な機関(各都道府県知事の指定する養成施設等)が、初任者研修を開講しています。
各都道府県が開講状況を集約して発信していますので、実施者、場所、費用等を確認してみましょう。

学習スタイル

基本的には通学し、一部を通信教育で履修するというスタイルです。 開講日時・曜日等は、実施機関の設定するコースによって異なります。

  • 平日5日間に通学するの短期集中コース
  • 土日に受講する週末コース
  • 上記の組み合わせ+一部の通信教育を加えたコース など

自分の都合・希望に合う講座を見つけてくださいね。

研修終了のためには

初任者研修修了のためには、一般的に以下の2つの修了条件を満たさなければなりません。

  • 全てのカリキュラム履修
  • 修了試験の合格

きちんと研修に参加して復習することを心がけておきましょう。

介護福祉士実務者研修

介護福祉士実務者研修は、初任者研修の上位とされる資格です。初任者研修と比べると学習に費やす時間が増えますが、介護未経験の人でもイチから学ぶことができます。

受講期間

受講期間は、基本として450時間・6ヶ月と定められています。ただし、受講者が既に持っている資格によって、受講する科目の一部が免除され、学習時間を少なくすることができます。
下記はおおよその目安ですので、詳細は実施機関に問い合わせてみて下さいね。

  • 無資格者:科目免除なし。450時間の履修
  • 初任者研修を持っている人:320時間の履修(130時間が免除
  • ホームヘルパー1級:95時間の履修(355時間が免除)
  • 介護職員基礎研修:50時間の履修(400時間が免除)

受講要件は

初任者研修と同じで、受講のための要件(学歴等)は、一律に定めがありません。ただし、細かな受講要件等は実施機関が定めます。

どこで受講できるのか

実務者研修も、たくさんの機関が実施しています。
各都道府県が情報を集約・発信していますので確認してみましょう。

学習スタイル

基本的には通信教育で、一部を通学で履修します。通学に要する期間は6日〜9日間で済むので、仕事をしながらでも受講が可能です。

研修終了のためには

実務者研修修了のためには、一般的に以下の3つの条件を満たさなければなりません。

  • 全てのカリキュラム履修
  • 定められた全ての課題の提出
  • 筆記試験、実技試験の合格

修了試験を設定するかどうかは実施機関に委ねられているため、一律ではありません。

介護福祉士

介護福祉士は、国が介護のプロフェッショナルと認めた国家資格です。
前述の初任者研修・実務者研修の上位資格であり、介護分野における最上位資格といっていいでしょう。
施設等で提供される介護の質を担保する役割で、現場の介護職員を指導・管理する立場でもあります。

介護福祉士国家試験は年1回実施され、例年であれば、毎年1月末の日曜日に全国で試験が行われます。

受験資格が必要

介護福祉士国家試験の受験資格を得る方法はいくつかありますが、ここでは代表的な2つのルートを紹介します。

介護福祉士養成校ルート

介護福祉士養成施設(専門学校や短期大学等)へ通学し、専門知識や技術を学び、決められたカリキュラムを履修して、卒業と同時に介護福祉士国家試験の受験資格を得るルートです。
入学してから卒業までにかかる期間は2年〜3年、卒業年度の1月末に「受験資格取得見込み」として、初めて国家試験を受験することができます。

実務経験ルート

専門学校等の養成校に通わずに受験資格を得るルートです。
受験資格取得の要件は、実務経験3年+実務者研修の修了です。よって、介護の実務経験を積みながら、ちょうど3年を迎える頃に実務者研修の修了を目指します。要件を満たした、または、満たす見込みで国家試験の受験を申し込むという流れです。
社会人として仕事をしながら国家資格の取得を目指している方は、このルートが現実的ではないでしょうか。

どこで受験できるのか

社会福祉振興・試験センターのホームページによれば、試験地は全国35か所で、どの試験地での受験を希望するのかを受験者が申込時に選ぶことができるとされています。

合格基準・合格率は

社会福祉振興・試験センターのホームページによると、介護福祉士の合格基準(筆記試験)は次のとおり定められています。

次の2つの条件を満たした者を筆記試験の合格者とする。
  • 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。
  • アを満たした者のうち、以下の試験科目11科目群すべてにおいて得点があった者。

    [1] 人間の尊厳と自立、介護の基本

    [2] 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術

    [3] 社会の理解

    [4] 生活支援技術

    [5] 介護過程

    [6] こころとからだのしくみ

    [7] 発達と老化の理解

    [8] 認知症の理解

    [9] 障害の理解

    [10] 医療的ケア

    [11] 総合問題

    (注意) 配点は、1問1点の125点満点である。


合格率は、ここ数年69〜72%を推移しています。20年前と比べると合格率は上昇しており、以前よりは合格しやすくなりました。
例年、社会人の受験者が多く、現実的に手の届く資格です。国家資格を取得したい!と考えている人は、十分に対策をしたうえで受験するようにして下さい。

資格取得支援・補助制度の利用

介護施設を運営する法人等が、職員の資格取得を応援していることがあります。
就職を検討している施設や、現在の勤務先で下記のような支援制度があれば、ぜひ利用して資格取得を目指して下さい。

初任者研修・実務者研修の場合

初任者研修 実務者研修
A施設 就職内定者が、同研修を修了して入職した場合、1年間勤続したら研修費用を全額キャッシュバック 勤務する職員が同研修を受講する場合、受講費用の半額を補助する。また、優先してシフトの調整を行う。
B施設 B施設自体が同研修を開講。勤務する介護職員がこれを受講した場合、研修費用が無料。かつ、優先してシフトを調整。 勤務する職員が同研修を受講する場合、研修費用の2/3を補助する。また、上司が修了試験に向けた対策演習実施。

介護福祉士の場合

支援・補助の内容
C施設

・勤務する職員が国家試験の対策講座を受講する場合、受講費用の一部補助を行う。
・勤務する職員が受験し合格した場合には、お祝い金を進呈する。

D施設

・就職内定者が受験して合格した場合には、お祝い金を進呈する。
・勤務する職員が合格した場合には、毎月の給与に資格手当を上乗せして支給する。


転職を検討している人は、このような研修支援・補助制度の有無を確認してみてください。

未経験の場合はどの資格を取れば良いのか

これまで介護分野に関わる3つの資格を紹介してきました。
介護が未経験・初心者の人は、介護職員初任者研修が最適だといえます。介護現場で必要とされる基本的な知識、実務を学ぶことができるでしょう。
また、あまり時間をかけずに取得することができる点も、初心者にとっては適しているといえます。

介護職員として、より専門的な知識や技術を身に付けて「介護の仕事を長く続けて行きたい」、「自身の専門性を高め、幅広く活躍していきたい」と考える方は、介護福祉士の取得を目指しましょう。
国家資格は取得までに手間と時間がかかってしまうデメリットもありますが、一度取ってしまえば更新の必要はなく、キャリアアップの味方になってくれるうえ、転職などの際にも有利に働いてくれます。

介護福祉士を取得するためには養成校(専門学校や短期大学等)に通うのが最も近道です。
しかし、このような養成校に通う時間と費用を捻出できないという人は、社会人でも受講・修了が可能な実務者研修がいいでしょう。
実務経験3年+実務者研修修了で国家試験の受験資格を得て、介護福祉士を受験するというルートが現実的かもしれません。

まとめ

この記事では、介護分野で役立つ資格を紹介するとともに、その資格の取得方法を紹介してきました。自分の目指す目標に合う資格を選択して、取得に励んでください

資格取得に関する疑問がある方や、介護職に関する情報をお求めの方は、ご遠慮なくe介護転職までお問い合わせください。

参考・引用文献

  1. 第93回社会保障審議会介護保険部会 令和4年5月16日 資料2 厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000938163.pdf
  2. 介護福祉士国家試験 受験資格(資格取得ルート)社会福祉振興・試験センター
    https://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/route.html
  3. 同 出題基準・合格基準
    https://www.sssc.or.jp/kaigo/kijun/kijun_02.html
  4. 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(介護福祉士養成施設における医療的ケアの教育及び実務者研修関係)(通知) 厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/care/dl/care_6.pdf
  5. 介護職員初任者研修の指定要綱等 大阪府ホームページ
    https://www.pref.osaka.lg.jp/houjin/youseikennsyuu/syoninn.html