介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格と仕事内容とは

投稿日:2015-01-30
更新日:2022-10-27

介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格と仕事内容とは

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護を必要とする高齢者等(以下、利用者)が、公的介護サービスを受けられるようにケアプランを作成したり、関係機関と連絡・調整したりします。

この記事では、介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事内容、勤務する施設・機関を紹介するとともに、資格取得までを解説します。

介護支援専門員(ケアマネジャー)とは

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者とその家族の相談に応じ、ケアマネジメントを行う専門職で、都道府県の認定する公的資格の一つです。

主に、居宅介護支援事業所や特別養護老人ホーム等の福祉施設、地域包括支援センター等に勤務しており(後述)、利用者やその家族の相談に応じるとともに、ケアプラン作成のための情報収集や、介護サービスのチェックを行っています。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割

ここからは介護支援専門員(ケアマネジャー)の具体的な仕事内容と、求められている役割について解説します。

ケアプランの作成

ケアプランの作成は介護支援専門員(ケアマネジャー)の代表的な仕事です。

利用者の要介護状態を踏まえたうえで、家族の意向を聴きながら、彼らの希望に適うような介護サービスが利用できるようにケアプランを作成します。

ケアプランでは次のような事項が定められます。


  • 利用者の長期的な目標と、支援内容の方針
  • 利用する介護サービスの頻度
  • 利用する介護サービスの内容
  • サービス担当者会議で話し合う要点
  • 利用者からの相談内容、事業者との連絡内容
  • 利用者負担額 など

適切なケアプランの作成には、利用者の身体・精神的な状況を的確に把握するだけでなく、家族の抱える課題も汲み取る必要があります。

サービス担当者会議の開催

ケアプランを作成した後は、サービス担当者会議を開きます(参考1)。
これは利用者や家族の参加はもちろんのこと、ケアに関わる専門職等が集まる貴重な機会であり、チームケアが機能するために欠かすことのできない会議です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は関係者を招集したり、司会進行を行うなどの重要な役割を担うとともに、ケアの方針を定めて参加者の共通理解を得るようにします。

つまり、介護支援専門員(ケアマネジャー)は、様々な専門職の共通理解の基に滞りなくケアが提供され、利用者の生活の質的向上に繋がっているか進捗を管理する立場であるということができます。

利用者とサービス事業者との調整

介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事はケアプランを作成して終わりではありません。

ケアプランに沿ってサービスが提供されるなかで、利用者や家族と面談したり、適宜介護サービス提供事業者と連絡を取り、適切なサービスが提供されるように調整を行います。
また、ケアプランに沿った介護サービスが提供されているかチェックする役割を担います。

チェックする項目は、主に次のようなものです。


  • 提供されているサービスの内容は適切か
  • サービスの量に過不足は無いか
  • 利用者のニーズに適うサービス内容になっている
  • 利用者のニーズに適うサービス内容になっている

利用者のなかには、提供されるサービスに対し「介護が雑だ」「職員によって提供されるサービス内容が異なる」「レクリエーションの内容が幼稚」などの不満がある人もいます。
この場合、介護支援専門員(ケアマネジャー)は、彼らの言葉に耳を傾け、どのようにしたら問題は解決されるのか十分に聞き取ったうえで、介護サービス提供事業者に対して改善のためのクレームを言う役割を担います。

要介護認定の申請代行

利用者がサービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。
要介護認定とは、利用者が日常生活の中でどの程度の介護を要するのかを認定するもので、これを受けるためには市町村に申請しなければなりません。

原則、介護サービスを利用しようとする本人が申請を行いますが、体調が悪かったり、入院していたりして、利用者が申請できない場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)が申請の代行をすることができます。

介護支援専門員(ケアマネジャー)が働く場所

介護支援専門員(ケアマネジャー)は次のような施設・機関で活躍しています。それぞれ整理して説明します。

施設・機関 仕事内容
居宅介護支援事業所 利用者が介護サービスを利用しながら住み慣れた自宅で生活ができるように、介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者の心身の状況や置かれている環境に応じてケアプランを作成する。
老人ホーム等の福祉施設 入所する施設において利用者の長期目標を定め、どのような介護サービスを利用するか、どのくらいの量のサービスを利用するのかを定めたケアプラン(施設サービス計画)を作成する。
地域包括支援センター 要支援1・2と認定された人が利用する介護予防サービスに関するケアプランを作成する。その他、地域住民から介護に関する様々な相談に応じるとともに、地域で活躍する介護支援専門員(ケアマネジャー)へのアドバイス・指導を行う。

このように、所属する施設・機関によって仕事内容や担う役割が異なります。

介護支援専門員(ケアマネジャー)になるには

介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得する流れは、次のとおりです(参考2)。


  1. 介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格を満たす
    介護をはじめ医療・保健分野の国家資格を持ったうえで、5年以上の実務経験が必要。
    例)介護福祉士、社会福祉士、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等

  2. 介護支援専門員実務研修受講試験を受験する
    試験を受験し合格する。第24回(令和3年度)の合格率は23.3%(参考3)。

  3. 介護支援専門員実務研修を受講する
    試験合格者だけが受講できる研修。定められたカリキュラムを履修し修了する。

  4. 介護支援専門員(ケアマネジャー)として登録する
    研修を修了した後、在住する都道府県にて登録を行う。

  5. 介護支援専門員証の交付を受ける
    業務に従事することができる。

介護支援専門員実務研修受講試験は年に1回行われ、合格率は例年10〜20%を推移しており(参考4)、福祉系資格のなかでも比較的難易度は高めです。
そのうえ、受験資格を満たすにも時間がかかり、試験合格のために長い時間の学習が必要な資格であるといえます。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事のやりがい

では次に、介護支援専門員(ケアマネジャー)となった場合、どんなことにやりがいを感じることができるのかを見ていきましょう。

利用者・家族から頼りにされる

介護支援専門員(ケアマネジャー)はケアマネジメントの専門家として、利用者や家族が困った時に手を差し伸べ、相談に乗り、課題解決に導く存在です。
利用者・家族から頼りにされ、「あなたに相談して良かった」と感謝された時には、この上ない達成感や、やりがいを感じることができます。

一人ひとりに合ったケアプランを作成し、利用者が住み慣れた地域・自宅で、自分らしい生活を送るために包括的なサポートを行える点は、介護支援専門員の仕事の醍醐味であるといえます。

夜勤がないため働きやすい

介護支援専門員(ケアマネジャー)は原則日勤のみで、夜間勤務(夜勤)が無く、また早出や遅出などのシフト制の勤務がありません。

仕事内容は主にデスクワークや、利用者宅や関係施設・機関の訪問なので、介護職に比べると身体的負担が少なく、働きやすい・長く続けられる仕事だといえます。

介護職よりも給料が高い

厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護支援専門員(ケアマネジャー)と他の介護職の平均給与額は次のとおりです(参考5)。


資格の有無 平均給与額
介護支援専門員 362,290円
介護福祉士 328,720円
介護福祉士実務者研修 307,330円
介護職員初任者研修 300,510円

出典:厚生労働省令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果 P23


介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均給与は、介護職の最上位資格である介護福祉士の平均給与よりも上回っています。よって、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得することで、給与UP・待遇の質的向上が期待できます。

まとめ

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者一人ひとりに合ったケアプランを作る専門職であり、利用者とその家族から頼りにされ、感謝される存在です。

今後、高齢化の進展に伴い要介護高齢者が増加すると予想されるなかで、より一層、介護支援専門員(ケアマネジャー)のニーズは高まっていくと考えられます。

介護支援専門員(ケアマネジャー)になるまでの道は決して簡単ではありませんが、仕事自体に大きなやりがいを感じられるだけでなく、給与額も高い傾向にあるため、介護職からのキャリアアップ例として人気のある職種です。

参考文献

  1. 「ケアマネジャーのしごとガイド」独立行政法人福祉医療機構 WAM-NET https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/(閲覧日:2022年10月26日)
  2. 同 独立行政法人福祉医療機構 WAM-NET (閲覧日:2022年10月26日)
  3. 「第24回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00008.html(閲覧日:2022年10月26日)
  4. 「介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況等」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/hoken/jissi.html(閲覧日:2022年10月26日)
  5. 「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」 P23 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/21/index.html(閲覧日:2022年10月26日)