障害者の外出を支援するガイドヘルパー(移動介護従事者)とは
投稿日:2015-04-08
更新日:2022-08-19
障害者(児)を支援する仕事の中には様々なものがありますが、その1つに「ガイドヘルパー(移動介護従事者)」という仕事があるのをご存じですか?
この記事では、ガイドヘルパー(移動介護従事者)の具体的な仕事内容を説明するとともに、資格の取得方法や、活躍する場・勤務先を紹介します。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)とは
ガイドヘルパーは「移動介護従事者」の通称で、一人で外出することが難しい障害者(児)に対して、外出や移動の介助を行います。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)の利用対象となるのは、主に視覚障害や全身性障害(常時車椅子を利用する方)、知的・精神障害を持つ方です。
単純に外出時や移動の介助を行うだけでなく、障害者(児)の生活の質を維持・向上させることや、地域社会での生活を営むことを支援することもガイドヘルパー(移動介護従事者)の役割とされています。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)の仕事内容
ガイドヘルパー(移動介護従事者)の仕事内容は対象者が抱える障害によって異なります。
視覚障害、全身性障害、知的・精神障害といった障害特性ごとに見ていきましょう。
視覚障害
視覚障害者(児)に付き添い、外出を支援することが主な仕事で、「同行援護」と呼ばれます。
外出先では必要に応じて代読や代筆を行うなど、言葉で周囲の状況を伝え、対象者が安心して外出できるように支援します。
例えば、ドアの開閉や階段の昇降や交通機関の利用等の場面で、利用者に現在の状況や注意点を伝えることなどが挙げられます。
全身性障害
全身に障害を持ち、常時車椅子を利用する方の外出に付き添って支援を行います。
段差のある歩道や階段など、車椅子では通行しにくい場所での介助や、電車やバスを利用する際などの支援を行うことはもちろんのこと、他の歩行者や車両に気を配ることも大切です。
知的・精神障害
知的・精神障害者(児)の外出を支援することが主な仕事で、「行動援護」と呼ばれます。
対象者によってはコミュニケーションを取ることが難しかったり、その場に適した行動を取ることが難しい場合などもあるため、対象者の特性に応じたコミュニケーション方法で、本人にとっては安全に、周囲にも配慮をしながら支援することが重要です。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)になるためには
ガイドヘルパー(移動介護従事者)になるためには、都道府県等が行っている研修を受講し、修了すれば取得することができます(参考1)。前述した障害特性によって研修も異なるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
同行援護従業者養成研修
概要
視覚障害により移動に著しい困難がある障害者等の、外出・移動時の支援方法を学ぶ研修です。
研修では、視覚障害の種類を知るとともに、食事介助・屋内でのドアの開閉、屋外での階段昇降等の移動支援を学びます。
一般課程と応用課程
研修には一般課程と応用課程があり、次のような違いがあります。
課程 | 内容 | 資格の有効性 |
---|---|---|
一般課程 | 障害福祉制度の基本 視覚障害分野についての基礎知識 移動支援に関する基本的な技能 等 |
同行援護を行っている訪問介護事業所に勤務できる |
応用課程 | 障害や疾病の理解 障害者・児の心理 移動支援の技能や公共交通機関を利用した基本・応用技能 等 |
サービス提供責任者の資格要件を得ることができる |
受講資格について
一般課程の場合は、受講資格は特になく誰でも受講することができます。
一方の応用課程の受講資格は、一般課程を修了している人に限られています。よって応用課程のみを受講する人は、申し込みをする段階で一般課程の修了証の提出を求められます。
カリキュラムの時間
一般課程のカリキュラムは次のとおりです(参考2)。約3日間かけて実施されます。
科目 | 時間数 |
---|---|
視覚障害者(児)福祉サービス | 1時間 |
同行援護の制度と従業者の業務 | 2時間 |
障害・疾病の理解① | 2時間 |
障害者(児)の心理① | 1時間 |
情報支援と情報提供 | 2時間 |
代筆・代読の基礎知識 | 2時間 |
同行援護の基礎知識 | 2時間 |
基本技能(演習) | 4時間 |
応用技能(演習) | 4時間 |
計 | 20時間 |
応用課程のカリキュラムは次のとおりです(参考3)。研修日程は2日間です。
科目 | 時間数 |
---|---|
障害・疾病の理解② | 1時間 |
障害者(児)の心理② | 1時間 |
場面別基本技能(演習) | 3時間 |
場面別応用技能(演習) | 3時間 |
交通機関の利用(演習) | 4時間 |
計 | 12時間 |
全身性障害者ガイドヘルパー研修
概要
全身に障害を持ち、常時車椅子を利用する人等の外出、移動時の支援方法を学ぶ研修です。
研修では、通院時の介助、車椅子の介助、外出時の更衣介助等、ショッピング、旅行の際の外出支援を学びます。
研修機関によっては「ガイドヘルパー養成研修(全身性障害課程)」や「全身性移動介護従事者養成研修」というように、研修名称が異なる場合があります。
受講資格について
都道府県により異なります。
無資格でも受講可能な地域もあれば、介護職員初任者研修修了者以上の有資格者でなければ受講資格のない地域もあります。
詳細については各都道府県の担当窓口にお問い合わせ下さい。
カリキュラムの時間
カリキュラムは次のとおり(参考4)で、研修期間は約3日間です。
科目 | 時間数 |
---|---|
ホームヘルプサービスに関する知識 | 3時間 |
ガイドヘルパーの制度と業務 | 1時間 |
障害者(児)福祉の制度とサービス | 2時間 |
障害者(児)の心理 | 1時間 |
重度脳性まひ者等全身性障害者を介助する上での基礎知識 | 2時間 |
移動介助にあたっての一般的注意 | 3時間 |
移動介助の方法(演習) | 3時間 |
生活行為の介助(演習) | 1時間 |
計 | 16時間 |
行動援護従業者養成研修
概要
知的・精神障害等によって行動上著しい困難を有する障害者の外出、移動時の支援を学ぶ研修です。
研修では、行動障害に関する基本的知識を学ぶとともに、外出時に必要な支援の方法を学びます。
受講資格について
特にありません。介護系資格の保有や実務経験等は問われていないため、誰でも受講することができます。
カリキュラムの時間
カリキュラムは次のとおり(参考5)で、研修期間は3〜4日程度です。
科目 | 時間数 |
---|---|
強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義 | 1.5時間 |
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 | 5時間 |
強度行動障害のある者へのチーム支援 | 3時間 |
強度行動障害の生活の組み立て | 0.5時間 |
基本的な情報収集と記録等の共有(演習) | 1時間 |
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解(演習) | 3時間 |
行動障害の背景にある特性の理解(演習) | 1.5時間 |
障害特性の理解とアセスメント(演習) | 3時間 |
環境調整による強度行動障害の支援(演習) | 3時間 |
記録に基づく支援の評価(演習) | 1.5時間 |
危機対応と虐待防止(演習) | 1時間 |
計 | 24時間 |
介護職員初任者研修を取得している人は
介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修を修了し、訪問介護事業所に勤めている方は、前述したガイドヘルパー(移動介護従事者)の研修を修了することで、高齢者だけでなく障害者(児)に対する外出支援も行うことが出来るようになり、仕事の幅が拡がります。
勤務先によっては手当が付くなどして給料がアップする可能性もありますので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)の勤務先
ガイドヘルパー(移動介護従事者)の主な職場・就職先は、訪問介護事業所や障害者支援施設などが一般的です。
訪問介護事業所
介護保険法・障害者総合支援法等に基づいて訪問介護サービスを提供する事業所を指し、障害者(児)を対象としたガイドヘルプサービスを行っている事業所も多くあります。
障害者(児)支援施設
日常的にサポートを必要とする障害者(児)のための福祉施設を指します。
施設で職員として働きながら、ガイドヘルパー(移動介護従事者)の資格を生かし、普段の介護だけではなく、外出支援を担うことができます。
共同生活援助(グループホーム)
共同生活援助(グループホーム)は、障害者が日常生活上の支援を受けながら少人数で共同生活を送る施設です。
日中は就労支援事業所等で作業を行い、夕方になると施設へ帰ってくるという生活リズムを送ることが多いとされています。
児童発達支援・放課後等デイサービス
児童発達支援とは、主に小学校就学前までの子どもが通い、支援を受けるための施設です。
日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、遊びや学びの場を提供しています(参考6)。
一方の放課後等デイサービスは、6歳〜18歳までの子どもが、放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる福祉サービスです(参考7)。個別の発達支援や集団活動を通して、家と学校以外の居場所づくり、友人づくりをするのが狙いです。
まとめ
外出が難しい人たちのなかには、自由に外出し、自分の行きたいところに行って様々な人や物、情報に触れたがっている人がいます。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)は外出を専門とする支援者です。これらの支援を通して、彼らのより良い人生を送る手助けになればいいですね。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)は自身のキャリアアップや、転職等にも役立つ資格であるといえます。
興味がある人は、お住まいの自治体が開催している研修内容をチェックしてみて下さい。
参考文献
- 静岡県ホームページ 同行援護従業者、全身性障害者ガイドヘルパーの養成について 更新日:令和4年5月30日 http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-320/guide.html(閲覧日:2022年8月15日)
- 大阪府同行援護従業者養成研究事業実施要領 大阪府ホームページ https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/33389/00290470/04-dokou%20youryou-ikkatu.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
- 大阪府ホームページ 同 (閲覧日:2022年8月19日)
- 神奈川県ガイドヘルパー養成研修事業認定要綱 神奈川県ホームページhttps://www.pref.kanagawa.jp/documents/22205/youkou.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
- 千葉県「行動援護従業者養成研修」実施要綱 千葉県ホームページhttps://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/kenshuu/documents/koudouyoukou.pdf(閲覧日:2022年8月19日)
- 厚生労働省 児童発達支援ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf(閲覧日:2022年8月15日)
- 厚生労働省 放課後等デイサービスガイドライン https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf(閲覧日:2022年8月15日)