社会人になってから看護師を目指す方法

投稿日:2015-03-09
更新日:2022-10-12

社会人になってから看護師を目指す方法

介護のお仕事をしていると、一緒に働く看護師の仕事に興味を持つ事があるのではないでしょうか?

看護師の仕事に興味はあるものの「既に社会人で年齢が若くなくても目指せる?」「看護師になるための費用はどれくらいかかる?」と気になることも多いでしょう。

この記事では、社会人経験のある方が看護師を目指す方法、活躍できる場所、その他注意点を解説します。

看護師を目指す理由

社会人経験者が看護師を目指すケースは少なくありません。
では、看護師を目指す理由にはどのようなものがあるのでしょうか。以下、一つずつ見ていきましょう。

活躍の場が拡がる

看護師資格を取得すると、病院やクリニック等の医療機関や介護事業所はもちろんのこと、次のような場所でも活躍することができます(参考1)。


  • 訪問看護ステーション
  • 企業の健康管理室(保健師として)
  • 助産施設
  • 学校(保健師として、養護教諭として)
  • 介護施設
  • 公共施設(役所、保健所等)
  • 海外(国際協力機構等)

また、最近では脱毛や美容医療、美容整形を行う自由診療のクリニックで働く看護師の需要も高まっています。

医療行為の一部が出来るようになる

看護師になると、医師の指示に基づく医療行為(注射や点滴、採血等)を行うことができます(参考2、3)。

介護施設では、主に利用者のバイタルチェック、健康管理、インスリン注射、服薬管理の業務を担いますが、これらの医療行為は、専門的な知識・技術と資格が必要となるため、介護職には担うことができません。
施設に勤務する介護職が看護師になれば、これまで担ってきた介護業務に加えて、医療行為の一部ができるようになるため、業務の幅が広がっていくといえます。

キャリアアップできる

看護師資格を取得すると、医療の現場でも実務経験を積むことができるようになります。
仕事内容がハードなイメージがありますが、年収は約498万円(介護職は約396万円、参考4、5)で高収入が期待でき、また社会的な尊敬が得られる職種です。

また、看護師資格+実務経験があれば転職がしやすく、より給料の高い医療機関を選んでキャリアアップすることができます。

それだけでなく、認定看護師(参考6)や、専門看護師(参考7)などの上位資格を取得すれば、さらなる自身のキャリア向上につながるでしょう。

看護師になるためには

看護師になるためには、次の2つの条件を満たさなければなりません(参考8)。


  1. 看護師の養成校に通い、決められたカリキュラムを履修し受験資格を得る
  2. 看護師国家試験に合格する

高校卒業後に看護師を養成する短期大学や大学、養成学校を卒業して、国家試験を受けることが一般的ですが、受験資格に年齢制限はありませんので、社会人になってからでも養成学校に入学することは可能です。費用はかかるものの、なりたいと思ったときに目指せる職業であると言えます。

正看護師と准看護師の違いを知る

いざ看護師を目指そうと思っても、正看護師と准看護師のどちらを目指すのかで、通学する期間やその後出来る業務の内容は大きく異なります。
以下の表を参考に、あなたがどちらを目指すのか考えるきっかけにしてくださいね。


項目 正看護師 准看護師
資格の種類 国家資格 都道府県が認定する公的資格
取得方法 看護師を養成する大学・専門学校等を卒業し看護師試験に合格する 准看護師養成所2年を卒業し、准看護師試験に合格する
授業時間 3,000時間以上 1,890時間以上
就学方法 全日制、通学 半日制、定時制、通信課程
業務内容 医師の指示に基づいて、診療補助や医療行為を行う。看護師単独でできる医療行為もある。 医師の指示に基づく診療補助・医療行為、看護師の指示に基づく医療行為を行う。自分の判断だけではできない。
勤務場所 どの医療現場でも勤務できる。クリニック~大学病院・総合病院だけではなく、美容クリニックで勤務が可能 どの医療現場でも勤務できるが、大学病院や総合病院での勤務は少ない。
キャリアアップ 経験を積めば認定看護師や専門看護師、管理職になれる キャリアアップには正看護師資格が必要

正看護師は国家資格であり、自分の判断で一部の医療(補助)行為を行うことができます。その分、給与待遇が良く、勤務先も選びやすいといえます。

一方の准看護師は公的資格(国家資格ではない)で、通信教育等を利用することで資格を取得できます。現場では自分の判断で医療行為を行うことはできず、給与は正看護師より低い傾向にあります。

養成学校の種類と費用

看護師を養成する学校は、次のような種類があります。通学にかかる費用と合わせてご確認下さい。

大学

大学に通って看護師を目指す場合、就学期間は4年間です。
附属病院を持っている大学の場合は、近くに附属病院があることが多く、臨地実習に通いやすいメリットがあります。また、学内の図書館は専門図書が揃っているため、調べ物をするのにも便利です。

文部科学省の「令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、通学にかかる費用として、初年度は約145万円かかるとされているため、4年間で約500〜600万円かかると想定できます。(参考9)。

専門学校

専門学校は大学と比べて修業年限が3年程度と短いため、その分学費が安く済みます。また、カリキュラムは専門科目がほとんどで、大学のように教養科目の履修は必要ありません。

公益社団法人東京都専修学校各種学校協会の「令和2年度 学生・生徒納付金調査」によれば、初年度は約110万円かかります(参考10)が、就学期間は多くの学校が3年制であることを考えると、トータルで約200〜350万円程度の負担が必要でしょう。

国家試験を受験する

大学や専門学校で必要な科目を履修した後は、国家試験を受験します。ここでは、国家試験の受験の申し込みから合格に至るまでの大まかなスケジュールを説明するとともに、ここ数年の合格率の推移を紹介します。

受験の流れ(参考11、12)


  1. 受験願書の請求(10月頃)
    各養成学校で入手するか、郵送による請求ができる

  2. 受験願書の提出(11月~12月頃)
    提出する願書に必要な書類を添付する

  3. 受験票の配布(1月頃)
    受験予定者の元へ受験票が郵送される

  4. 国家試験の受験(2月中旬)
    全国各地の大学のキャンパスや大規模会場で国家試験が実施される

  5. 合格発表(3月末)
    厚生労働省ホームページに合格した受験番号が掲載される

  6. 看護師免許の申請(合格後)
    受験者の住所地にある保健所(一部県については県庁)へ提出する

合格率

直近5年の合格率は次のとおりです(参考13)。


開催回(年) 合格率
第107回(2018年) 91.0%
第108回(2019年) 89.3%
第109回(2020年) 89.2%
第110回(2021年) 90.4%
第111回(2022年) 91.3%

合格率が約90%と高いのが特徴で、2022年は前年より0.9%増となり、合格率が90%を超えたのは2年連続です。

一見すると簡単なように見えますが、国家試験の受験者は大学や専門学校で規定のカリキュラムを履修したうえ、レポート課題や臨地実習などを乗り越えてきた人たちです。このようなハードルを乗り越えた人たちが受験するため、高い合格率が出ているのかもしれません。

まとめ

医師や看護師の人手不足が叫ばれて久しく、厚生労働省が発表した「東京の一般職業紹介状況」によると、看護師を含む「保健医療サービス」の有効求人倍率は約2.05倍(全職種平均は1.16倍)となりました(参考14)。しばらくの間、この状況は続くものと見込まれています。

新卒・既卒問わず、看護師は人手が求められています。社会人経験があることで、看護学校へ入学しにくかったり、就職で採用されにくいということはありませんし、むしろ、社会人としての経験・知識を活かし、広い視野を持った看護を提供できると期待されています。

看護師を目指そうか迷っている社会人のあなた、動き出すなら今です!

参考文献

  1. 「看護職活躍の場所いろいろ」公益社団法人川崎市看護協会 https://www.kawa-kango.jp/pre_nurse/place.php(閲覧日:2022年10月6日)
  2. 看護師 職業情報提供サイト jobtag 厚生労働省 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/156(閲覧日:2022年10月6日)
  3. 「看護師や介護職員の医療(補助)行為について」東京都医師会 https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/338-348.pdf(閲覧日:2022年10月6日)
  4. 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdfを元に、介護福祉士の平均給与額に12ヶ月を乗じた。(閲覧日:2022年10月12日)
  5. 「令和3年賃金構造基本統計調査」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html(閲覧日:2022年10月7日)
  6. 「認定看護師ってどんな看護師?」公益社団法人日本看護協会https://nintei.nurse.or.jp/nursing/wp-content/uploads/2020/09/leaflet_CN2020_1.pdf(閲覧日:2022年10月7日)
  7. 「専門看護師・認定看護師・認定看護管理者」 公益社団法人日本看護協会 https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns(閲覧日:2022年10月6日)
  8. 「看護師国家試験の施行」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/kangoshi/(閲覧日:2022年10月7日)
  9. 「令和元年度 私立大学等入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_sigakujo-000011866_1.pdf(閲覧日:2022年10月7日)
  10. 「令和2年度 学生・生徒納付金調査」公益社団法人東京都専修学校各種学校協会https://tsk.or.jp/image/info/2.pdf(閲覧日:2022年10月7日)
  11. 「看護師国家試験の施行」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/kangoshi/(閲覧日:2022年10月7日)
  12. 「資格申請案内」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shikakushinsei.html(閲覧日:2022年10月7日)
  13. 「資格申請案内」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shikakushinsei.html(閲覧日:2022年10月7日)
  14. 「東京の一般職業紹介状況(令和4年1月分)を公表します 」厚生労働省東京労働局https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001101000.pdf (閲覧日:2022年10月10日)