後悔しない介護転職5つのポイント

西山 喜代司

後悔しない介護転職5つのポイント

その1「介護福祉の仕事が適職かを自己診断

急速なスピードで進む日本の高齢化

介護保険制度の運用は、施設入所者へのケアの質的な向上と在宅介護の普及を推し進めました。特に在宅介護では住み慣れた自宅や地域社会の中で暮らし続けることが大切、という考えの下に食事の支度、部屋の掃除から、排泄や入浴、食事の介助、体位交換などの在宅支援サービスの拡充が図られています。介護は高齢者だけではなく、身障者や知的障害者、児童分野がありますが、福祉・介護関係の従事者の中で増加の著しいのは高齢者関係です。

総人口に占める65歳以上の老年人口の割合が7%を超えると高齢化社会といわれますが、これは少子化が大きく原因しており、日本は1970年(昭和45)に7%を超えました。以降日本は急速に高齢化が進み、高齢社会とされる14%に達したのは94年(平成6)でわずか24年でした。ドイツでは40年、スウェーデンが85年、フランスはなんと128年となっており、アメリカはまだ14%に達していません。日本の高齢化が急速に進んでいることを実感できる数字です。日本では2015年に25%を超えるといわれ、4人に1人以上が「お年寄り」で超高齢社会です。このような状況から高齢者への介護の仕事に対するニーズがますます高まり、また専門員の不足することも容易に予想できます。

転職を決める前に実体験

全く経験のない介護福祉、なかでも高齢者への介護職に転職を考えておられる方へアドバイスです。介護職の給料は安く、残業も多く、尽くしても相手はサービスを受けて当たり前と思っている、名指しで苦情がきたりする、などと辛い仕事です。非正社員(登録制非常勤)の募集は多いですが、それに較べると正社員は少ないです。介護福祉に熱い情熱を持ち、高齢化社会を支えているという自覚を持たないととても続けられる仕事ではありません。自分が本当に介護福祉の仕事に適しているかを知ることが大事です。ホームヘルパーなどの資格が無くても高齢者だけではなく、心身障害者への介護も含めれば、かなり仕事はあります。まずはお住まいの近くにある高齢者施設や障害者施設を訪れてみましょう。

特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護職である入所者の食事介助、入浴介助、排泄介助、おむつ交換、着替え介助、話し相手やレクリエーション運営など介護保険制度上は無資格でもできます。募集要項にはホームヘルパー2級以上、介護福祉士という条件がついていても、事情を話せば働かせてもらえるでしょう。また、在宅の高齢者や障害者への支援サービスである「訪問入浴のヘルパー」はきつい仕事であるためか、随時募集されていることが多く、この仕事も資格は必要ありません。訪問入浴は、通常3人で1チームとなり、訪問宅に組立式浴槽を設置し、入浴を提供します。所要時間は1時間前後で、一日に4から5軒を回り、かなり体力的にハードな仕事ですが、介護の仕事を身をもって体験できます。

退職は慎重に

在職中の方のこのような転職に向けての活動は、あくまで休日か会社が終了してからにすべきで、決して今の仕事を辞めてはいけません。これは介護福祉への転職に限ることではなく、転職全般にいえることですが。今の会社を自ら退職するという選択は最後に残し、介護福祉の仕事が本当に自分に合っているかを評価することが重要です。体験をしている間に介護職員と話す機会が得られ、いろいろな情報が入手できます。

介護福祉の仕事の実態をしっかりと見て、それでもやりたいと思えたら、最も多く求められる資格「ホームヘルパー2級講座」の受講をお勧めします。費用は7万円~13万円ぐらいで、講義58時間、実技講習42時間、施設での介護実習など、実地での実習が30時間の計130時間。修了までの期間は最短で1か月から3か月程度となっています。体験では補えなかったことを講義と実習で学びます。ホームヘルパーの養成研修は各自治体で行われています。資格がなくても転職はできますが、資格を持ったほうがかなり有利になります。

福祉人材センター・バンクの活用

本格的な転職活動を始めるには、まずお近くの福祉センター・バンクを訪ねるかホームページを閲覧し、求職状況や給与水準を調べて転職活動をしましょう。求人だけではなく、介護福祉に対しての相談もできます。ホームヘルパーの求人ニーズは高いですが、正社員の募集は非常に少なく、募集は非常勤の登録ヘルパーになります。しかし欠員が出れば正社員に登用される道がありますので我慢強く待つことも必要です。

その2 「転職を有利に、資格を取る」

ますます必要となる介護職

改正介護保険が4月から施行されました。大きな改正点は「介護予防」に重きが置かれたことと、「地域密着型サービス」による介護の提供です。要介護1の一部が要支援2となり、要支援1と要支援2は「介護サービス」ではなく「介護予防サービス」になりました。また、住み慣れた地域の中での介護によって利用者の疎外感を解消します。たとえば、定員30人程度の小規模介護施設を街中に建てることによって、住みなれた地域を離れずに介護サービスを利用できるようにします。このように益々質の高いサービスを提供するために介護職の求人が増えることと同時に「介護職の質的向上」も求められています。

まず「ホームヘルパー2級」を取る

介護福祉への転職を決められたなら早めに「ホームヘルパー2級」の資格を取得しましょう。受講資格の制限はなく、また修了にあたっての試験もないため取りやすいです。資格がなくても介護の仕事に就けますが、やはり給与も高く、条件のあった職場を探すにはあったほうが有利です。介護保険制度化ではホームヘルパーは欠かせない存在です。資格取得後は、グループホームや老人ホームなどの施設や民間のホームヘルプ事業所で働く(非常勤が多い)のが一般的で、ヘルパー派遣会社に登録してパートタイムで働く方も多くいます。将来的には、実務経験を積んで上級資格であるホームヘルパー1級、または国家資格である介護福祉士を取得し、正職員としての介護職に就きます。

ホームヘルパー資格とその仕事

ホームヘルパーは正式名称を「訪問介護員」といい、公的資格です。名称は「訪問介護員」ですが、施設での介護援助の仕事もできます。介護保険法で定められた保健師や介護支援専門員が作成するプランに沿って、要支援・要介護認定を受けた在宅の高齢者や障がい者の家庭を訪問し、食事、排泄、入浴、衣服の着脱や移動などの身体介護や、調理、洗濯、掃除、買い物などの生活支援を提供します。また、利用者本人や家族への精神的なケアや家族への介護技術の指導も大切な仕事です。

ホームヘルパーの資格は1級~3級があり、2~3級は受験資格を問われませんが、 3級は家事程度と業務範囲が狭いので、介護のための資格としては2級が一般的です。1級は2級ヘルパーとして実務経験1年以上かつ業務従事日数が180日を越える方が対象になります。資格を取得するには、各地方自治体や民間の養成研修機関が主催している講座を受講し修了すれば得られます。実施主体が多岐にわたり研修費用もさまざまですが、大体地方自治体は6~7万円程度で、民間の場合は8~9万円程度です。また厚生労働省の教育訓練給付金が付いた講座もありますので、各都道府県・指定都市の福祉担当課、または各都道府県福祉人材センター・福祉人材バンクに問い合わせてください。

民間の研修機関を選ぶポイントですが、通信制も通学制(昼、夜間ともに)ともに施設に赴いての実習がありますので、お住まいの近くにある研修所を選ばれることをお勧めします。また終了後の仕事紹介実績も重要なポイントになります。研修時間はトータル130時間で、期間は3から4ヶ月です。研修内容は、講義58時間、演習42時間で実習30時間です。通信制は講義は在宅で、演習はスクリーングの教室で実施され、実習は施設や在宅へ実際に出かけての体験学習で、72時間は自宅外学習となります。
講座の内容は自治体も民間も同じです。

-講義で学ぶこと 福祉制度・ホームヘルプサービス・介護の基礎知識講座
-演習で学ぶこと ホームヘルパーが介護する現場をいろいろと想定し、介護を受ける役とヘルパー役をしながらの実技練習
-実習で学ぶこと 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や老人保健施設など実際の施設での体験学習

介護従事者の質的向上を図る

今秋から「介護職員基礎研修」が実施、制度化される予定です。まだ履修期限などは明らかになっていません。対象者は介護福祉士の資格を持たない現任介護職員とこれから介護職に従事しようとする人で、ホームヘルパー1級、2級取得者もその対象になります。介護職員のスキルを全体的にレベルアップしようというものです。介護福祉士を標準任用資格とするまでの移行策として設けられています。
研修は「基礎理解とその展開」の講義と演習、そして現場実習の合計500時間です。実務経験者には受講に際して一部免除の優遇措置が取られます。一日1時間の介護でも経験としては1日に換算されますので早く実務に就くと受講に際して有利になります。ここ数年(5年といわれている)は「介護職員基礎研修」と「ホームヘルパー養成研修」は並存しますので、ホームヘルパー2級の資格で介護の職につけなくなることはありません。詳細は下記URLの全国社会福祉協議会「介護サービス従事者の研修体系のあり方について (最終まとめ)」を参照ください。
http://www.shakyo.or.jp/research/05kaigofinal.html

その3 「いよいよ開始!転職活動」

転職求人情報の収集

最適な求人情報を得るためには情報雑誌、新聞の広告、インターネットによる情報、知人からの紹介、ハローワークなどの利用があります。ここではインターネットから情報を入手するための主なホームページのアドレスを記します。サイトに必要事項を登録することによって自分の希望する求人情報が電子メールで送信または郵送されてきます。登録は通常無料で、登録内容は秘匿されます。

<公的な機関>
●福祉のお仕事(福祉人材センター・バンク)
http://www.fukushi-work.jp/
各都道府県福祉人材センター・バンクが各地域での福祉に関わる求人情報を提供しています。運営は都道府県社会福祉協議会で、ナースセンターや公共職業安定所(ハローワーク)、他の都道府県福祉人材センターと連携し情報を提供しています。また、ホームヘルパー等の養成研修、社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員等の資格取得準備講習、その他各県の実情に応じてさまざまな研修事業を行い、福祉従事者の専門性の向上を図るために必要な支援を行っています。

<民間の機関>
●「e介護転職」(当社のホームページ)
http://www.ekaigotenshoku.com/
介護業界に特化した求人情報検索サイトです。また、介護に関する情報が1週間ごとに更新されるため常に新しい情報に接することができます。会員登録によって希望する分野の新着求人情報が入手でき、またコラムなどの更新情報がメルマガで届きます。検索項目は利用状況によって更新されていくため利用頻度が増すごとに検索しやすくなります。他のサイトにない特徴として当社社長と高齢者福祉介護業界の著名人とのインタビュー記事を掲載しています。リアルな介護福祉業界の現場を知ることができます。

転職を今一度検討する

極端な例ですが、老人介護の特集をテレビ番組で見て、お年寄りとの楽しい会話の場面にあこがれて介護職に就いたが、失禁による排泄の処理を見せられ、自分にはとても向いていないことを知った、という話を聞いたことがあります。介護・福祉職でない人から見れば4Kか5Kの仕事と思われがちですが、楽な仕事でないことは確かです。異職種からの転職を希望する方は介護・福祉職の現状をよく知っておいてください。このコラムの「その1」でも書きましたように会社は辞めないで、休日のヘルパー仕事をボランタリーでやり、介護・福祉の仕事の一端を垣間見ることができます。このようなチャンスをつかめない方は「ホームヘルパー2級」の講習を受け、現場実習を経験されることが介護の仕事に適性であるか否かを見る上で有効なひとつの方法でしょう。介護福祉の仕事は熱意だけではなく、適性が大きく左右します。
また、ボランタリーではなく、生活していくための収入を得るわけですから介護・福祉への転職を決められたならば、次の点を整理しましょう。「仕事内容」、「やりがい」、「待遇(給料、出張手当など各種手当て)」、「地位」、「勤務時間」、「研修・教育 体制」、「福利厚生」、など自分の希望する内容を書き出します。そして、自分の要望する優先順位を明確にし、客観的に整理して求人情報を調べます。こうすることが転職成功のポイントとなります。

転職活動中も自己研鑽を怠らない

このような転職活動中でも自己研鑽を怠らず、介護をするうえでのいろいろなケースを想定しての「イメージトレーニング」、「介護保険の仕組みを理解」、また「講習会への積極的な参加・出席」などは仕事への意欲を益々盛んにするでしょう。

その4 「事前準備もOK、リラックスして面接に臨もう!」

履歴書で自分の商品説明

履歴書はあなたというものの商品説明で、採用担当者にとってはあなたを下調べするための資料となります。この履歴書で次のステップ、面接に進めるかが決まります(同時に面接をする場合もあります)。
履歴書の1頁目は正確に書きましょう。学歴はもちろん、転職が多くても職歴はすべて正確に記します。貼付する写真はスーツなどフォーマルな服装を着用したものにします。写真からビジネスマナーを垣間見ることができます。
次に2頁目です。「免許・資格」は取得年順に記入します。多すぎて困るものではありませんが、欄に書ききれない場合は厳選しましょう。このときは介護福祉に関連した資格を優先します。さて、「志望の動機」「スポーツ・クラブ活動・文化活動などの体験から得たもの」「特技など」「本人希望記入欄」は最も自分をPRできるところです。今までの経験と実績をじっくりと整理し、そこから得たものを介護福祉にどのように活かそうとしているかを引き出します。これは面接の下準備にもなります。自分の特徴を知ることは自分を明快にアピールすることができます。この欄を半分以上の空欄にすることは避け、自分を前面に出せるような文章を考えましょう。「志望の動機」はありきたりの動機や見本の写しでは採用担当官は魅力を感じないでしょう。自分の言葉で具体的に書きましょう。「スポーツ・クラブ活動・文化活動などの体験から得たもの」「特技など」は直接、介護福祉に関わらなくても積極的な活動をPRします。特技に「幼少のころからピアノを習っている」と書かれた男性がおられます。就職した「介護センター」ではお年寄りにピアノ演奏をし、大変喜ばれているとのことです。たとえ特技などがなくても今、勉強したり、やろうとしていることを記入し、空欄は避けます。「本人希望記入欄」は特に希望することがない場合には、入社後の自分の職務上の希望や目標を記入するのが良いでしょう。書き終わったらコピーをとり、面接の前に書いたことを確認します。

面接の前の準備が重要

面接は、事業所に入ったところから始まリ、面接が終わって事業所から出るまでです。どのような職種でも同じですが、スーツなどのフォーマルな服装で臨んで下さい。
まず、面接の前に準備しなければいけないこと、それは面接で必ず質問されることに対しての十分な準備です。「転職理由」「志望動機」「自己PR」です。この質問に的確に答えられない場合は、まだまだ自己分析が足りない、と自覚してください。
面接は自分という商品を売りに行っているのです。よってこの商品のことをよく知っていないと売りに出すことは出来ません。自分の「強いところと弱いところ」「介護業界で何をしたいのか」を明確な答えとして出しておくことです。必ず紙に書いて下さい(またはPCのワープロを使う)。はじめて社会に出るのではなく、転職ですから、なおさら自己分析が要求されます。
「転職理由」では、特に他の業種から福祉業界へ転職希望する方は、なぜ転向しようとしたのか、を明確にしてください。一般的な注意事項ですが、前の(今の)会社に対するネガティブな意見はタブーです。仕事を前向きにとらえていない、と判断されます。あくまで、理由は自分にあり、です。たとえ、残業を強制されるなどの職場の環境が劣悪だとしても、これを理由にしてはいけません。まして、会社の悪口はご法度です。不満を抱えた人は次の新しい職場でも不満を持つ、と見られてしまいます。
「志望動機」は、業界の魅力、事業所そのものの魅力、仕事内容の魅力などのポイントを3つぐらいに絞ってまとめます。なぜその事業所で働きたいのか、をきちんと問うことが転職を成功に導きます。
「自己PR」は背伸びをする必要はありません。自分のスキルをしっかりと評価してもらえるようにすることです。自分のPRポイントをあれこれ多くをアピールするのではなく、2、3点にまとめて、明るく、前向きに伝えることです。

逆面接で志望動機の大きさが分かる

そして、面接の最後には必ず面接官から「何か質問はありませんか」と問われます。応募者の熱意はこの最後の質問でわかる、といわれています。「何もありません」という回答で合格することはまずないと思ってください。なぜなら、本当に入りたい事業所ならば、多方面にわたって、時間をかけ、その事業所を調べているでしょうから、当然わからないことや質問があるはずです。何も調べていないと、質問もないわけです。本気で入りたいと思っているのかどうかの意欲が試されています。勤務条件や給与のことをたずねてもいいですが、この質問だけではマイナスイメージになります。本当にない場合は、「○○についてお聞きしたかったのですが、これまでのお話しで十分理解できました」と言うと、面接官は納得します。
そしてもっとも大事なことは、笑顔で答えることです。暗いイメージですと、なにか隠し事があるのでは、と見られてしまいます。

それでは、GOOD LUCK!!

その5「会社に迷惑をかけず円満退職」

採用内定通知、おめでとうございます。

採用内定通知が届いたなら、まず担当者に電話を入れ、今後の予定や同封の書面ではわからない点を確認してください。次に、採用の条件を書面で確認してください。入社後に面接時での条件と違う、というトラブルを避けるためにも必ず書面でもらってください。そして応援してくれた家族に連絡を入れましょう。

さて、円満退職に向けての「退職交渉」です。転職活動のなかで、面接と並ぶ重要な活動です。人材不足(人で不足ではなく)が叫ばれる今日、会社にとって必要な人には強引な引き留めが行われることもあります。今の会社の人や取引会社の方と仕事上いつまた関係を持つかわかりません。円満退職に臨みましょう。

円満退職までの順序

1.就業規則を確認する。
法律上は退職の2週間前に意思表示をすればいいことになっていますが、会社によっては退職届の期限を就業規則で定めており、これに従って行動します。

2.直属の上司に退職の意思表示をする。
同僚や先輩、部長、社長など周囲には内密にすることが大事です。上司が他の人から部下の人事に関する情報を得ることは人事管理能力を問われることになります。感情的になって退職を妨害されることのないよう、まず直属の上司に話します。そのタイミングですが、朝夕の忙しい時間帯ではなく、できれば昼休みに「課長、ちょっとご相談したいことが」といって食事をしながら切り出すのがいいのではないでしょうか。テレビで見かける「問答無用」とばかりに「退職願(退職届)」を上司の机にたたきつけるのは、たとえ嫌な上司といえども、それはドラマの世界です。

退職理由ですが、異業種からの介護・福祉への転職なら、ほぼ納得してもらえるでしょう。同業種間の転職は退職理由を「キャリアアップ」「身体障害関係の仕事」のように、やりたい仕事を前向きに話します。絶対に言ってはいけないことは、今の会社(施設)に対する不平不満です、たとえば「給料が安い」「福利厚生が不十分」など会社の施策批判、同僚や上司などへの不平・不満はご法度です。退職願はいったん「預かり」という形になります。というのは上司の一存で受理(承認)することはできないためです。プロジェクトの進捗など退職時期として問題ないか、後任者選びなどを人事部や部長、社長が話し合った後、決まります。直属の上司から正式な発表があるまでは周囲に退職することを話すのは控えましょう。

昇進や昇給などの条件を出して、上司や会社から強い引き留めがあっても、今までに得た教育や訓練に感謝しながら、退職の決意に代わりがないことを告げます。退職の自由は法的に認められた権利で、上司がどうしても退職を受け入れない場合は、上長や人事部に相談し、それでも認められない場合は労働基準監督署に相談すればよいでしょう。

3.転職先への出社日の報告。
退職願が受理されると今の仕事の引継ぎなどをスケジュールし退職日が決められます。決まったら転職先にすぐさま連絡しましょう。出社日が数ヶ月先になる場合は定期的に転職先に連絡を入れることを怠らないようにします。一般には採用内定通知日から2ヶ月以内に出社します。これ以上長いと採用内定を取り消される場合もあります。また、転職先への連絡に今の会社の電話を使ってはいけないことは言うまでもありません。

4.引継ぎは十分に行う。
退職前は通常の業務と引き継ぎ業務の両方をこなさなければならず多忙です。引継ぎ事項を書き出し、退職日から逆算してスケジュールを立てます。引継ぎの業務内容は文書化してパソコンに保存しておくことがベストです。そうすると後任者がいつでもこのファイルを開いて業務内容を確認することができます。退職日から3日前に引継ぎが終わるようにプランするのがポイントです。3日あれば緊急の仕事も消化できます。引継ぎのなかに後任者との取引先へのあいさつ回りを入れることも忘れないようにしてください。後任者一人で挨拶に回るのは会社の教育体制を疑われ、取引先との信頼関係が壊れるかもしれません。最後まで今の会社に対して誠意を尽くすよう努力しましょう。挨拶状も忘れずに出しましょう、書状でも電子メールでもどちらでもかまいません。

5.会社に返却するもの・受け取るもの。
健康保険被保険者証、身分証明書、社員章、制服、名刺、通勤に使っていた定期券を返却する。会社の経費で購入したり、会社から支給された書籍や文房具、パソコン(データも含めて)なども返却します。取引先や顧客の名刺も返却します。
退職日に必ず受け取るものは「雇用保険被保険者証」「年金手帳」「源泉徴収票」の3つです。転職先がまだ決まっていない人は失業給付の受給手続きでハローワークに提出する「離職票」も必要です。ただし、源泉徴収票や離職票は、手続き上、退職当日にはもらえないため、自宅への郵送を依頼します。「雇用保険被保険者証」「年金手帳」は転職先に提出します。

「人生は往復切符を発行していません。一度出立したら、再び帰ってきません―『魅せられたる魂』―」(ロマン・ロラン、フランスの小説家) 素敵な終着駅がきっと待っていることでしょう。