介護保険とは

投稿日:2015-04-08
更新日:2022-08-30

介護保険とは

介護保険とは、要介護者とその家族を社会全体で支える公的な仕組みです。

この記事では次の4点について解説します。

  1. 介護保険制度の基本的な仕組み
  2. 介護サービスを受けるために必要な手続き
  3. 介護保険制度で受けられるサービスについて
  4. 介護サービスを受けるうえでの注意点

新たに被保険者となった方や、介護保険の利用を検討している人は、この記事を読んで、介護保険の基礎知識をしっかりと身につけておきましょう。

介護保険の基本的な仕組み

40歳になって、給料から「介護保険料」が天引きされるようになり、介護保険とは?と思った方も少なくないのではないでしょうか。

介護保険とは、2000年に施行された介護保険法に基づく公的な制度で、介護が必要な被保険者(高齢者等)が介護サービスを利用者負担分のみで受けることが出来るものです。
健康保険料を納めている人が、医療機関にかかり診療を受けるのをイメージすると分かりやすいでしょう。その介護バージョンが介護保険です。

ここでは、介護保険の基本となる、保険者と被保険者(利用者)、そして介護事業所の関係を見ていきましょう。

介護保険の仕組み

保険者

全国の市区町村です。被保険者から徴収する保険料(50%)と税金(50%)を用いて保険事業を運営しています。被保険者が介護保険を利用する場合、かかった費用の自己負担分以外は保険者が介護事業所に支払いを行います。

被保険者

40歳になると、介護保険への加入が法的に義務付けられ被保険者となり、保険料を支払う必要があります。
また、被保険者は年齢によって以下の2種に分類されます。


  1. 65歳以上の人(第1号被保険者)
  2. 40~64歳までの医療保険に加入している人(第2号被保険者)

介護サービスを利用する場合は、原則としてかかった費用の1割が自己負担金となります。ただし、いきなり利用出来るようになるのではなく、利用前に要介護認定(後述)を受ける必要があるので注意しなければなりません。

介護事業所

都道府県・市区町村の指定を受け、各種介護サービスを提供する事業者です。提供するサービスには次のようなものがあります(詳細は後述)。


  • 居宅サービス
  • 施設サービス
  • 地域密着型サービス

介護保険サービスを受けるために必要な手続き

被保険者が介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要があると述べましたが、具体的には次のようなプロセスを踏みます。

  1. 要介護認定を市町村に申請
    利用希望者は介護保険証を持って、住んでいる市町村の窓口へ申請。申請自体は郵送で申請することも可能。

  2. 市町村による訪問調査(1次判定)
    介護サービスがどの程度必要なのか判定するための調査(訪問調査)が行われる。

  3. 介護認定審査会による判定・審査(2次判定)
    市町村は、1次判定で得られた調査結果と主治医の意見書を添えて、介護認定審査会へ(2次判定)送る。ここで最終的な判定結果が出る。

  4. 結果の通知
    判定結果が申請者の元へ送られて来る。判定の結果によって、受給できるサービスの量・種類が異なる。

  5. 介護支援専門員(ケアマネジャー)によるケアプラン作成
    担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)を決めて、利用したい介護サービスの内容・量について相談する。

  6. 介護事業所と契約する
    ケアプランの作成が終わったら、介護サービスを提供する事業所を選び契約を行う。

  7. 介護サービスの受給開始
    利用者はサービスにかかった費用のうち、原則1割(所得によって2〜3割)を負担する。

要介護認定の結果

要介護認定の結果、利用者は次のいずれかに判定されます。

判定結果 要介護の程度 受けられる介護サービス
非該当 ほぼ自立 介護保険を利用できないが、自治体が定めるその他のサービス(総合事業)を受けられる
要支援1・2 軽度 介護が必要な状態にならないよう予防するサービスを中心に受ける
要介護1~5 中度~重度 介護サービス全般が受けられる

判定結果は永久的なものではなく、年齢を重ねたり、身体状態が変化することもあるので要介護状態が変わった時のために、有効期間が設けられています。

介護保険制度で受けられるサービスについて

介護保険制度は、自宅や施設で様々なサービスが受けられるように組み立てられています。大きく分けると次のようなサービスの種類があります。

種類 主なサービスの例 概要
居宅サービス 訪問介護
デイサービス
ショートステイ
福祉用具貸与・販売
住宅改修
自宅で生活する人を対象とした介護サービス。ホームヘルパーが利用者宅を訪問して介護を提供したり、利用者が施設等に通って介護を受けたりする。
施設サービス 特別養護老人ホーム
介護老人保健施設
介護療養型医療施設
主に要介護1以上と認定された高齢者が施設に入所して受ける介護サービス。ただし、施設によっては入所の要件等がある。
地域密着型サービス グループホーム
小規模多機能型居宅介護 等
要支援1・2と認定された高齢者を対象に提供されるサービス。主に、認知症進行の恐れがある中重度の高齢者が対象で、住み慣れた地域・自宅での生活を継続するのが狙い。

このように、介護保険サービスに様々な種類がありますが、どのサービスを利用したら良いか分からない人も多いのではないでしょうか。このような悩みを解決してくれるのが、介護支援専門員(ケアマネジャー)です

介護支援専門員とは

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護に関する専門的知識を持つ専門職で、利用者が介護生活を送るうえで相談に応じ、解決に向けての助言・調整等をしてくれる役割です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者から困っていること・受けたいサービス等の要望を聞いて、一人ひとりに合ったケアプラン(サービス計画書)を作成してくれます。

介護保険サービスを受けるうえでの注意点

これまで紹介した介護保険サービスを受ける場合、利用者はどのような点に注意したらよいのでしょうか。利用者負担と介護保険料の滞納の2点を解説します。

利用者負担

利用者は、介護サービス全体にかかった費用のうち、1割を負担します。残りの9割は介護保険でまかなわれます。
ただし、一定以上の所得のある場合は2割、特に所得の高い場合は3割負担となります。40歳から64歳までの方は1割負担です。

介護保険料の滞納

介護保険料の納付を滞納した場合は、その滞納期間によってペナルティが定められています(参考2)。次のとおりです。

滞納期間 ペナルティの内容
1年以上~1年6ヶ月未満 介護サービスにかかった費用の全てを負担する。その後申請により費用の一部が償還払いされる。
1年6ヶ月~2年未満 介護サービスにかかった費用の全てを負担する。ただし申請しても費用の一部は償還払いされず、滞納した保険料に充てられる。
2年以上 所得に関わらず自己負担金額が3割へ引き上げられる。

※滞納=すぐにサービスが受けられない、とはなりませんが、注意が必要です。

まとめ

介護保険制度は、様々なルールや手続きがあるうえ、利用できるサービスの種類が豊富にあります。一見すると、利用するのは難しいのではと感じることがあるかもしれません。

しかし、実際には介護支援専門員(ケアマネジャー)が、専門知識を持って介護サービスの計画を立ててくれるため、それにのっとってサービスを利用することができます。本人や家族にとっては、とても助けになる制度です。

将来、介護が必要になったときにも、1日でも長く健康で自分らしく生活できるよう公的な介護サービスを受給できるように準備しておきましょう。

参考文献

  1. 介護保険制度の概要 令和3年5月 厚生労働省老健局 https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf(閲覧日:2022年8月27日)
  2. 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟=編集(2021)『最新 社会福祉士養成講座 高齢者福祉』 株式会社中央法規出版(閲覧日:2022年8月27日)