障害者総合支援法における就労支援事業について

投稿日:2015-04-08
更新日:2022-11-2

障害者総合支援法における就労支援事業について

就労支援とは、障害を持つ方が働くことを支援する制度です。

この記事では、障害者総合支援法における就労支援事業について、各事業の特徴・対象を説明するとともに、提供されるサービスの具体的内容を解説します。

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法は、障害者を対象に提供される福祉サービスの基本的な部分を定めた法律です。
「地域社会における共生の実現」という理念のもと、障害者の日常生活及び社会生活の総合的な支援を図ることを狙いとしています(参考1、2)。

支援対象

障害者総合支援法において福祉サービスを受けることができる対象者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害者を含む)だけでなく、これまで制度の谷間となって支援の充実が求められていた難病罹患者も含みます。
支援対象となるかの判断は、市町村が行う障害支援区分の認定調査の結果によって判定されます(後述)。

障害支援区分とは

障害支援区分とは、障害によって支援を必要とする度合いを数値化したもので、1〜6の6段階に分けられています。1が支援を必要とする度合いが最も低く、6が最も高くなっています。

就労支援事業とは

就労支援事業は障害者に対して、一般就労に向けたサポートや、就労に向けた訓練を行うサービスです。
このサービスは「就労移行支援」と「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」「就労定着支援」に分けられます。

就労移行支援

就労を希望する障害者(65歳未満)に対し、生産活動や職場体験などの機会を提供し、一般企業への就労に必要な知識や能力向上のために必要な訓練を行います(参考3)。具体的には次のようなものがあります。


種類 内容
職業訓練 就職に必要な知識、能力を身につける訓練
就職サポート 履歴書や応募書類の添削、模擬面接の実施とその助言
現場実習 企業における現場実習の機会の提供
定着支援 就職後、職場に定着するための支援

就労継続支援A型

一般企業では働くことが難しい、就労移行支援を受けることが難しい場合でも、一定の支援があれば継続して働くことができる方(65歳未満)が対象となるサービスです。
障害者が一定の支援がある企業と雇用契約を結び、ここに通って様々な業務に従事し、その対価として賃金が得られる点に特徴があります。
なお、就労継続支援A型における賃金の平均は、次のとおりとなっています(参考4)。

令和2年度工賃(賃金)

施設種別 平均賃金(月額) 平均賃金(時間額)
就労継続支援A型事業所 79,625円 899円

出典:厚生労働省「令和2年度工賃(賃金)の実績について」

具体的な業務には、次のようなものがあります。


  • レストランのホールスタッフとして、食事を提供する
  • パソコンを使ったデータの入力の代行
  • インターネットオークションの梱包、発送作業
  • 車両部品などの加工 ほか

就労継続支援B型

体調や年齢が理由で、就労継続支援事業所と雇用契約を結ぶことが難しい(就労継続支援A型には通うことが難しい)方が対象です。事業所へ通って生産活動を行うとともに、知識および能力の向上のために必要な訓練を行い、就労継続支援A型や一般就労への移行を目指します。

年齢の制限はなく、障害や体調に合わせて比較的簡単な作業を行い、生産物に対する成果報酬として工賃が支払われる点に特徴があります。
工賃は作業する方の体調や作業内容、利用状況によって様々ですが、平均工賃額は次のとおりとなっています(参考5)。

令和2年度工賃(賃金)

施設種別 平均賃金(月額) 平均賃金(時間額)
就労継続支援B型事業所 15,776円 222円

出典:厚生労働省「令和2年度工賃(賃金)の実績について」

就労継続支援B型は雇用契約を結ばずに働き、作業をした分や出来高に応じて工賃が支払われるため、結果として最低賃金よりも低くなってしまうのが現状です。

就労継続支援B型で行う作業内容は次のとおりです。


  • 農作業
  • パンやクッキーなどを作る
  • 衣類のクリーニング ほか

就労定着支援

前述の就労移行支援などを利用して一般就労をしている障害者の中には、環境の変化等によって生活上の課題や困りごとを抱えるケースが少なくありません。
就労定着支援は、このような方たちが勤務先の労働環境や業務内容に順応し、長く働き続けられるように支援・サポートするサービスです(参考6)。

支援員は次のような支援を行います。

種類 内容
相談支援 勤務先を訪問して、障害者・企業担当者双方の相談に応じるとともに、必要に応じて指導や助言を行い、課題の解決を図る。
生活支援 障害者の自宅を訪問し、生活リズムや体調の変化をチェックし、生活上の課題を把握する。
連絡調整 勤務先の担当者や障害福祉サービス事業者、医療機関などと連絡を取りながら、課題解決に向け、指導・助言などの必要な支援を行う。

つまり、障害者が就職後に抱えがちな不安や悩みを解決するための支援を行うだけでなく、働きやすい職場づくりができるよう企業とも連携を取ります。利用期間は最大3年間で、経過後の支援は、障害者就業・生活支援センターが引き継ぎます。

まとめ

就労支援事業には様々なサービスがあり、それぞれに目的や対象、特徴、賃金(工賃)の有無が定められています。

就労支援をはじめとした福祉サービスが広がることで、障害のある方もない方も働くことに喜びを感じて共に生活することができる社会が実現される未来も遠くはないでしょう。

参考文献

  1. 「障害福祉サービスの利用について 障害者総合支援法 地域社会における共生の実現に向けて 2021年4月版」全国社会福祉協議会 https://www.shakyo.or.jp/download/shougai_pamph/date.pdf(閲覧日:2022年10月31日)
  2. 障害者総合支援法 e-Govポータル https://www.e-gov.go.jp(閲覧日:2022年10月31日)
  3. 「サービス一覧/サービス紹介」 WAM NET 独立行政法人福祉医療機構 https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/(閲覧日:2022年10月31日)
  4. 「令和2年度工賃(賃金)の実績について」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000859590.pdf(閲覧日:2022年11月1日)
  5. 同 厚生労働省(閲覧日:2022年11月1日)
  6. 「就労定着支援事業所」WAM NET 独立行政法人福祉医療機構https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/fukushiworkguide/jobguideworkplace/jobguide_wkpl84.html(閲覧日:2022年10月31日)