令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、主に育児休業について令和4年4月1日から段階的にこれから紹介する事項が施行されることになっています。女性だけでなく男性も育児休業を取得しやすくなりますので、内容を確認していきましょう。
育児休業制度について
まず、育児休業制度について確認しておきましょう。
育児休業制度とは、子どもが1歳(一定の場合は最長で2歳まで)になるまで取得できる休暇制度です。出産予定日が近くなると、産前産後休暇を取得し、産後休暇が終了すると同時に育児休暇を取得することが一般的です。
休業だけでなく、以下も制度の一部として含まれています。
- 短時間勤務の申出(子どもが3歳になるまで)
- 所定外労働の制限(子どもが3歳になるまで)
- 時間外労働の制限(子どもが小学校就学前まで)
- 深夜業の制限(子どもが小学校就学前まで)
- 看護休暇制度(子どもが小学校就学前まで)
- 転勤についての配慮
- 不利益扱いの禁止(育休取得を理由に解雇など)
- ハラスメント防止措置(育休取得を理由とした暴言など)
(参考:育メンプロジェクト”育児休業を取る 育児休業制度とは”)
ここからは、令和4年(2022年)4月1日から順次施行される改正内容について見ていきましょう。
雇用環境整備、個別の周知、意向確認の措置の義務化(令和4年4月1日~)
ここでは、事業主に対して義務化された内容を紹介します。
育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業の申し出が円滑に行われる様、事業主は以下の措置を講じる必要があります。複数が望ましいですが、いずれかでも問題ありません。
- 育児休業に関する研修の実施
- 育児休業に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
- 自社労働者の育児休業取得事例の収集・提供
- 自社労働者へ育児休業制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
妊娠や出産の申し出をした労働者に対する個別の周知、意向確認の措置
申し出があった際に、以下の周知と休業の取得移行の確認を個別に行う必要があります。
- 育児休業に関する制度
- 育児休業の申し出
- 育児休業給付に関すること
- 労働者が育児休業期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
※男性が配偶者の出産後に取得する育休、通称『産後パパ育休』については、令和4年10月1日から対象となります。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日~)
有期雇用契約を結んでいる労働者(契約社員やパートなど)が育児・介護休業を取得する際の要件が一部緩和されています。
現行 | 改正後 |
①引き続き雇用された期間が1年以上 ②子が1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない |
①の要件は撤廃される。 ※無期雇用労働者と同様に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者の場合は労使協定の締結により除外される可能性もあります。また、育児休業給付についても同様に緩和されます。 |
現行の育児休業とこれからの育児休業(令和4年10月1日~)
現行の育児休業の一部が変更になるだけでなく、パパになる男性も取得することが出来るようになりました。これまで独自の福利厚生として類似する休暇が取得出来る企業もありましたが、今回の改正により新設されたことで、これまで以上に夫婦揃って育児をすることが出来るようになりました。
また、「男性なのに育児休暇を取得するなんて」「仕事の忙しい時期に男が育児休暇を取得するのは迷惑」といったハラスメントを防止する措置を講じることが事業主には義務付けられていますので、ご自身のまわりに未だ取得した人がいない状況でも遠慮せず相談してみましょう。
現行 | 令和4年10月~ | 産後パパ育休 (令和4年10月~) |
|
申出期限 | 原則子が1歳まで(最長2歳まで) | 原則子が1歳まで(最長2歳まで) | 子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能 |
対象期間と取得可能日数 | 原則1ヶ月前まで | 原則1ヶ月前まで | 原則休業の2週間前まで(※1) |
休業中の就業 | 原則不可 | 原則不可 | 場合により可 (※2) |
分割取得 | 原則不可 | 分割して2回取得可(※3) | 分割して2回取得可(※4) |
休業期間の延長 | 休業開始日は子が1歳もしくは1歳半の時点に限定 | 休業開始日を柔軟化 | ー |
休業の再取得 | 不可 | 特別な事情がある場合は可 | ー |
※1 雇用環境の整備など、改正で義務付けられた内容を上回る取組みの実施を労使協定で定めている場合は、1ヶ月前までとすることが可能
※2 休業する者が就業しても良い場合は事業主に条件を申出し、事業主がその条件の範囲内で候補日と時間を定時し、同意が得られた場合はその旨を通知することで可能。ただし就業可能日数には上限があり、休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分とする。また、休業開始日、終了予定日に就業する場合は当該日の所定労働時間未満とすること。
※3 取得の際にそれぞれ申出を行うこと
※4 初めて取得する際にまとめて申出を行うこと
『産後パパ育休』も育児休業給付(出生時育児休業給付金)の対象となります。ただし、休業中に就業する場合は、休業を取得する日数に応じて就業日数や時間に制限があります。詳細はハローワークに確認するようにしましょう。
育児休業取得状況の公表の義務化(令和5年4月1日~)
従業員数が1,000人を超える企業は、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。
公表する内容は、男性の育児休業等の取得率または育児休業等と育児目的休暇の取得率で、公表日の前年度の率が公表されます。会社のホームページ等、誰でも閲覧できる方法で公表される他、厚生労働省が運営する『両立支援のひろば』で公表することも勧められているため、従業員数が1,000人を超える企業への就職や転職を検討されている方は、こちらも確認しておいた方が良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、2022年4月以降に適用される育児・介護休業法の改正について紹介しました。
諸外国に比べて日本の男性の育児休業取得率はまだまだ低い水準ですが、今回の改正を機に取得率が上がっていくかもしれませんね。