介護事務とは?仕事内容や必要な知識・スキル、資格、給料事情などについて分かりやすく解説

未経験者やブランクのある方にも人気のある職種である介護事務ですが、介護事務の仕事は一般事務と比べて何が違うのか、介護事務の具体的な仕事内容や必要な資格があるのかなど、気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、介護事務の仕事内容や、介護事務になるために必要な知識、民間資格について、やりがいや気になる給与事情についてもご紹介します。

介護事務とは?

介護事務は、その名の通り介護サービスを提供する事業所や施設で事務をする仕事です。一般的な事務職との違いとして特徴的なのは、介護保険に関する深い知識が必要となる点や、事業所によって仕事の範囲が異なることと言えるでしょう。

介護事務の仕事内容

介護事務が従事する具体的な仕事内容は、大きく以下の3つに分けられます。

  • 介護報酬請求
  • 受付業務、問い合わせ対応
  • 会計業務

この他に、勤め先の事業所によっては労務管理や備品購入・修繕などの管理業務に携わることもあります。また、場合によっては介護職のフォローを業務に組み込んでいる事業所もあるので、就業先を決める場合はしっかり確認しておくことをおすすめします。

今回は、先に紹介した3つのメイン業務ついて詳しく見ていきましょう。

介護報酬請求

介護事務のメイン業務と言える介護報酬請求事務とは、事業所の経営に関わる重要な仕事です。そもそも介護報酬とは、事業所が利用者に対して介護サービスを提供した場合に、その対価として利用者の自己負担分を除き、保険者(市町村)から給付されるもののことを言います。


出典:厚生労働省介護報酬について

自身が勤務する事業所が、「どんなサービス」を「どの要介護区分の利用者」に対して「どれくらい」提供したのかということを利用者全員分毎月計算し、翌月の10日までに国民健康保険団体連合会に請求する必要があります。

国民健康保険団体連合会とは
国民健康保険団体連合会とは、各都道府県ごとに設置された介護報酬の審査支払機関です。一般的には国保連と略されます。

国保連による審査の結果、請求内容に問題がなければ、事業所に介護報酬が支払われます。内容に不備があった場合は、国保連から請求書が戻されるため、内容を確認・修正し、翌月に再度請求を行います。介護報酬請求をきちんと行うことができなければ、事業所の経営問題に発展してしまうのでとても重要な役割だと言えます。

受付業務、問い合わせ対応

介護事務は、具体的に次のような場面で受付・問い合わせ対応を行います。

種類 対象 用件・対応方法
来訪 利用者の家族等 利用者との面会、利用者の生活に関する相談等

→用件を聞き取り生活相談員に繋ぐ

入所希望者 入所・費用に関する相談

→用件を聞き取り、面談室へ案内し、生活相談員に繋ぐ

医療機関の関係者、他事業所の職員、介護支援専門員、関連業者 サービス担当者会議への参加、要介護区分更新のための調査、福祉用具のメンテナンス等

→用件・アポイントの有無を聞き取り、関係する部署・担当者へ繋ぐ

電話 全員 用件を聞き取り、担当者へ引き継ぐ

来訪者及び電話での応対は、事業所の第一印象となる可能性が高く、表情や言葉遣いなど基本的なことではありますが、丁寧に受け応えるように心掛けましょう。

会計業務

利用者は、事業所が提供した介護サービス費用の1割〜3割(所得により異なる)を自己負担する必要があります。この自己負担は「窓口負担」ともいわれ、施設の受付窓口等で支払います。

介護事務は、この窓口負担に関する請求書・明細書を作成して、利用者またはその家族がスムーズな支払いができるよう事務手続きを行います。これが、会計業務です。支払いに対する質問をされる場合もあるため、その場合は費用内訳の説明を行うこともあります。

介護事務になるには

実際に介護事務になるために、必要な知識・スキル、必要な資格についてご紹介いたします。

介護事務に求められる知識・スキル

介護事務として求められる知識・スキルは、主に以下の4つです。

  • コミュニケーション能力
  • PCスキル
  • 介護保険・介護報酬に関する知識
  • 医療保険・診療報酬に関する知識

未経験者歓迎としている求人でも、最低限必要なスキルはコミュニケーション能力です。職員間の連携ももちろんですが、利用者やそのご家族、入所希望者や関係機関の対応など、人と関わる場面が多い職種であることから、非常に重要であると言えます。

介護保険や介護報酬に関する知識は実際に従事しながら覚えてくださいね、という職場でもPCスキルは必要です。スキルと言っても、ExcelやWordの基本的な入力が出来る、操作方法が分かる程度で問題ありません。介護給付費請求書や窓口負担の請求書の作成は今はほとんどPCで行いますし、入居の問い合わせや、関係機関からの連絡もメールで入ることも多くなってきているので、慣れているに越したことはありませんね。

最後に挙げた医療保険・診療報酬に関する知識がなぜ必要なの?と思った方は少なくないはずです。これには理由があります。介護保険サービスを利用する多くの方は、病院やクリニックにかかっています。利用者が受けたサービスによっては、介護保険で請求するものか医療保険で請求するものかの判断が必要になる場合もあります。また、利用者によっては医療と介護それぞれのサービスを受けたことにより、自己負担の合算額が高額となり、自己負担額を軽減する「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用するケースもあるため、この説明や手続きを行う可能性もあるので、こういった知識があると即戦力として採用される可能性も高まります。

介護事務に必要な資格

介護事務の仕事には無資格でも就く事が可能です。ただし、介護報酬などに関する知識がない場合、人気の職種でもあるため、採用される確率が下がってしまいます。

独学で学ぶことも良いですが、せっかく勉強するなら、民間資格の取得を目指すこともおススメです。介護事務には公的な資格はなく、民間の資格が複数存在し、どの主催団体・機関の資格試験を受けても介護保険や介護報酬について広く学ぶことが出来ます。

介護事務の民間資格

今回紹介する資格は、介護事務資格の中の一部です。それぞれ運営団体が異なり、学べるスクールも違うため、どれを取得しようか悩んだ時は通いやすいスクールから選んでも良いでしょう。
ここでは、数ある介護事務資格のなかでも、代表的といえる資格を3つご紹介します。それぞれの特徴・概要についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

介護事務管理士

JSMA技能認定振興協会が運営する介護事務資格です。介護保険制度や介護請求事務などに関するマークシート形式の試験に加え、レセプト点検やレセプト作成の実務試験で構成されています。受験資格の制限はありません。試験の実施は年6回、1月・3月・5月・7月・9月・11月に全国主要都市にて行われます。

指定講座受講生は自宅で受験することも可能です。生涯学習のユーキャンや、運営団体と業務提携している株式会社ソラスト等の通信講座を受けると、資格取得のための勉強ができ、自宅受験が可能となります。
 
参考 介護事務管理士JSMA技能認定振興協会

ケアクラーク

日本医療教育財団が運営する資格試験です。介護事務に必要な技術と知識以外にも、コミュニケーション技術や高齢者・障害者の心理や一般医学の知識も問われ、やや広い出題範囲となっている点が特徴です。受験資格は制限なし、年6回(2月・4月・6月・8月・10月・12月)試験が実施されています。試験科目は学科と実技があり、それぞれ70%以上の得点率をクリアすると合格です。

受験場所は各都道府県の公共施設等に設置されます。自宅受験はできません。資格取得のための勉強は、ニチイ等の「介護事務講座」や、一部の専門学校でも行えます。

参考 ケアクラーク日本医療教育財団  

介護報酬請求事務技能検定

日本医療事務協会が主催する資格試験です。主に介護報酬請求事務に関する知識や技術が出題・審査対象となります。受験資格は、日本医療事務協会が認定する介護事務講座の修了者、受験申請のあった学校などに限られており、無制限ではありません。

未経験者が受験資格を得るには、日本医療事務協会の介護事務講座の受講が一般的です。通学と通信の2種類から選ぶことができます。通学の場合は3日間のカリキュラムで修了するため短期間での資格取得が目指せます。
試験日は偶数月の第3日曜日で、試験会場は開催月により異なります。

参考 介護報酬請求事務技能検定日本医療事務協会

その他紹介した資格のサイト

参考 介護事務実務士医療福祉情報実務能力協会 参考 介護管理専門秘書検定資格日本能力開発推進協会 参考 介護保険事務管理士日本病院管理教育協会

介護事務として働ける職場・就職先

介護事務の主な就職先は、介護サービスを提供する施設や事業所です。

  • 介護老人福祉施設
  • 有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • デイサービス
  • デイケア
  • 訪問介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • グループホーム
  • 居宅介護支援事業所
注意
事業所の規模によっては、現場の職員が介護事務も兼任するケースも珍しくありません。入所施設の方が通所や訪問事業所と比較すると求人を掲載していることが多いです。

介護事務の給料事情

事務職員の平均給与額(月給・常勤)は236,100円でした。他の職種の給与額と比較しますと、介護職員の平均給与額は245,600円、生活相談員・支援相談員は242,700円、介護支援専門員は271,350円となっています。これらはあくまでも平均給与額なので、勤続年数や役職の有無、資格の種類等により異なりますが、他の専門職に比べると介護事務の給与はやや低めとなっています。
(※給料の算出はe介護転職に掲載されている求人情報を元に行っています。)

介護事務のメリット・やりがい

介護事務に関する資格は、通信講座で勉強できるものが多く、就職活動中に自宅で受験対策しやすいのもメリットです。独学で知識や技術を身に付けることも可能なので、転職を検討している人や子育てが一段落した段階で正社員として就職したい人にも人気の職種です。

介護職は夜勤や早朝勤務など不規則勤務となりがちですが、介護事務の場合は日勤業務がほとんどです。そのため、不規則勤務に不安のある方や決まった休みをとりたい方も従事しやすい職種です。月末・月始めは請求業務が集中するため休みがとりにくい可能性もありますが、それ以外の時期は融通が利きやすい点もメリットでしょう。

介護事務は、その施設や事業所の経営に関わる重要な仕事です。介護報酬請求業務やレセプト作成においては、複雑な介護保険制度の深い知識が必要となり、さらに3年に1度改定される制度の最新情報を常に把握することが必須です。こうしたことから、仕事に対する熱意や学ぶ姿勢、そして正確性が求められます。決して簡単な仕事ではありませんが、自分の携わる業務で多額のお金が動くため、やりがいも大きいでしょう。

また、窓口で利用者やその家族などとコミュニケーションをとることも珍しくなく、気持ちの良い対応によって感謝の言葉をもらうこともあります。

まとめ

介護事務は、デスクワークの他にも多職種と連携しながら行う仕事や窓口業務も多いため、人とコミュニケーションをとることが得意な人に向いています。

何らかの形で介護の仕事に携わりたいと考える人や、介護保険のエキスパートとして深い知識と技術を持ちたいと考える人にも向いている職種ですので、転職を検討されている方は、ぜひe介護転職で介護事務の求人を探してみてはいかがでしょうか。