特別養護老人ホームとは? 仕事内容・あると役立つ資格について分かりやすく解説

  • 特別養護老人ホームとは?
  • 仕事内容、あると役立つ資格について

介護施設には様々な種類がありますが、その中でも数が多いのが特別養護老人ホームですね。歴史の長い施設もあり、地域住民の老後の安心をもたらしているところも多いです。

ここでは、特別養護老人ホームとはどのような施設なのか解説し、仕事内容ややりがいなど、これから介護職として働きたい方の職場選びの参考になる情報をご紹介していきます。

特別養護老人ホームとは?

介護施設には様々な種類がありますが、実は似ているようでも特徴や役割は種類ごとに異なります。時代の流れとともに、こうした特徴がより明確化され、はっきりとした違いを踏まえて利用者は自分に合った施設を選ぶことができるようになりました。

特別養護老人ホームは、公的な介護保険制度のもとに運営されている施設です。何らかの事情により自宅での生活が困難な要介護高齢者が入所し、必要な介護や支援を受けながら生活をすることができます。

また、デイサービス等が併設された事業所では、自宅で生活する要介護高齢者が通って介護を受けることも可能です。近年では、住み慣れた地域で長く生活し続けられるよう、介護のあらゆる相談拠点としての役割も期待されています。

公的な介護保険施設のため、他の介護施設に比べると所得が少ない方でも利用しやすい料金設定となっています。また利用者が希望すれば人生の最期まで受け入れ可能な施設も多いことから、地域の高齢者の終の棲家としての一面もあると言えるでしょう。

特別養護老人ホームの入所利用対象者は、原則65歳以上で要介護3以上の認定を受けている方です。特定疾病のある要介護3以上であれば、40歳~65歳未満の方も対象となります。また、特例として、条件を満たせば要介護1~2の方の入居も可能です。

特別養護老人ホームの施設タイプについて

特別養護老人ホームは、規模や役割の違いから、いくつかの種類に分けられています。ここではそれぞれの特徴についてご紹介していきます。

地域密着型

古くからある特養とは違い、定員29名以下と小規模であることが特徴です。平成18年度から整備されるようになり、その施設に住所のある人しか利用できません。入所者の居住地を限定することは、その人の暮らしてきた地域や家族、友人などとのつながりを保つという意味もあります。

地域密着型の特養は、さらにサテライト型と単独型の2種類に分けることもできます。

    • サテライト型

同法人が近隣に定員30名以上の本体施設を運営している場合に該当します。人員基準などが通常のものよりもやや緩和されています。

    • 単独型

本体施設を持たず人員基準等の緩和はありませんが、そのぶんアットホームで様々な事業所を併設しているところも多いです。

広域型

多くの方がイメージする特養は、広域型ではないでしょうか。昔からその地域にあるような、歴史の長い特養に多いです。定員は30名以上と大規模なところも多く、入所者の居住地制限はありません。

待機者の数は市町によってバラつきがあり、比較的都市部では待機者が多い傾向にありますが、地方ではあまり待機者がおらず申し込んでから入所までの期間が短いケースもあります。

地域サポート型

各都道府県から認定を受け、24時間体制で生活援助員が配置されているタイプです。自宅で生活を送る高齢者のサポートのため、生活援助員が高齢者の自宅を訪問したり、夜間でも看護師に相談できたりする点が特徴で、介護の悩みが発生した時はその都度相談も可能。

サポート対象の地域が決まっていることが多く、利用者は事前に契約が必要です。特養の中では、まだまだ数少ないタイプのため、これからの発展が期待されています。

居室タイプについて

居室のタイプは、大きく従来型とユニット型の2つがあります。

    • 従来型

個室もありますが、4人部屋などの多床室が中心です。リビングや浴室などは入所者全員で共同の場所を利用することとなり、大勢の利用者を大勢のスタッフが協力しながらケアにあたります。

    • ユニット型

個室、あるいは準個室のみとなっており、10名程度を1ユニットとします。ユニットごとにリビングスペースがあり、利用者のプライバシーが守られやすい点が特徴。少人数の利用者を少人数のスタッフがケアするため、関係性が構築しやすくアットホームな環境に近くなります。

特別養護老人ホームの主なサービス・仕事内容

特別養護老人ホームで働く介護職の主な仕事内容を見てみましょう。

身体的な介護

移動や食事、入浴、排泄、更衣といった、日常生活で行う動作に支援が必要な方の介助をします。例えば、車イスを押す、機会浴槽などを使用したり洗身をしたりして清潔を保つ、トイレ誘導をして排泄を促したりオムツ交換をする、などがあります。

健康管理

日頃の利用者の様子をチェックし看護師や医師との連携を図ります。定期的な血圧や体温、脈などの測定や、床ずれ等の有無の確認、食事量の確認、排泄の有無などを確認し、普段と違うことがあれば報告し指示をもらいます。

ベットシーツの交換

利用者の衛生面を守るのも大事な仕事です。ベッドシーツを交換し気持ちの良い環境を整えます。

掃除や洗濯

外部委託するケースも多いですが、居室・リビング等の掃除や洗濯を行うこともあります。洗濯そのものは外部に委託し、タンスへ収納したり汚れた衣類を洗濯に出したりするのは介護職が行う、というケースも多いです。

レクリエーション

毎日を楽しく過ごしたり、機能低下を防いだりするために、レクリエーションの企画・実施も行います。毎日簡単に行えるようなものから、季節の行事などの大がかりなものまで様々です。

リハビリの補助

できるだけ寝たきりを防止するために、身体機能の維持や回復を目指したケアも仕事の一部です。体操や、利用者にできる運動などを生活の中に取り入れてサポートします。

見守り

直接的な介護は必要でないものの、何らかのリスクに備えて見守るというサポートも多いです。例えば、認知症により無断で外出し迷子になるリスクの高い人が今どこにいるのか把握しておく、むせやすい人が食事をする時にスピードや一口量が適正かどうか見るなどが挙げられます。

介護記録の作成

日々の状態や介護の実施内容などを記録します。

1日の大まかなスケジュール

特養の介護職は早出・日勤・遅出・夜勤のシフト勤務となるため、出勤時間帯によって仕事内容は変わります。ここでは、特養入居者のおおまかなスケジュールの例をご紹介します。

  • 6:00~:起床・更衣・整容
  • 8:00~:朝食・口腔ケア
  • 9:30~:体操など
  • 12:00~:昼食
  • 13:00~:レクリエーション
  • 14:00~:入浴
  • 15:00~:おやつ
  • 18:00~:夕食・口腔ケア
  • 19:00~:更衣・就寝

働く上であると役立つ資格

特別養護老人ホームへの就職や転職活動時には、以下のような資格があれば役立つこともあります。(※ここでは介護資格に限定します。)

介護職員初任者研修

未経験者や無資格者のファースト資格として位置付けられています。介護に関する最も基本的な知識や技術を学べます。介護職に限らず習得可能な資格で、難易度もさほど高くありません。
【資格について詳しく知りたい方はこちら】

介護福祉士実務者研修

介護職員初任者研修の上位資格として位置付けられています。未経験・無資格から介護福祉士への受験を考えている場合は外せない資格です。
【資格について詳しく知りたい方はこちら】

介護福祉士

介護の国家資格です。介護に関する十分な知識や技術があることを示すことができます。現場のリーダー的な役割を任されることも多いです。
【資格について詳しく知りたい方はこちら】

ケアマネジャー

指定の国家資格と5年以上の実務経験を経て、試験に合格する必要があり、その難易度も高めです。利用者に提供するケアのもととなる、介護計画(ケアプラン)を作成することができます。
【資格について詳しく知りたい方はこちら】

特養の介護職は、上記のような資格を持っているに越したことはありませんが、資格がなくても就職することは可能です。ただし、現在は、無資格職員に対し「認知症介護基礎研修」の受講が事業者に義務付けられているため、いずれは資格取得を目指すこととなります。

介護職の資格取得を積極的に応援する施設も多いため、キャリアアップを目指したい方はそういう点も考慮して職場選びをしていきましょう。

特別養護老人ホームで働くメリット、やりがい

特別養護老人ホームに入所する方々は、要介護度が比較的高く、介護職として大変な面も多いですが、しっかりとした介護技術を身に付けることができます。特養で働いた経験があれば、どの介護現場でも即戦力として働けると言われるほどです。

看取り対応の施設では、時にはハラハラしたりお別れを経験したりすることもありますが、人生の最期という貴重な時間を支えるという、普通の人では得がたい経験から学ぶことは多いです。

最期が穏やかに迎えられた、介護度の高い人に関わっていくうちに出来ることを取り戻した、ありがとうと言ってもらえたなど、やりがいを感じる場面はたくさんあります。

まとめ

大人数を相手にするから大変だ、職員の数が多いから人間関係が複雑そう、と思われることも多い特養。しかし、近年の主流である、小規模でユニットケアを展開している施設では、そのような心配も少なくなるのではないでしょうか。

また、従来型特養であれば、よりたくさんの利用者と関われるというメリットもあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った職場を見つけましょう。