再雇用制度とは?再就職との違いや定年までに準備しておくことを解説

年金の支給開始年齢が引き上がることをきっかけに、本人が希望する場合は、会社は65歳まで労働者を雇用することが義務となっています。

定年後も同じ職場で働く「再雇用」と、新しい仕事に挑戦する「再就職」、どちらを利用すべきなのか迷っている人も少なくないでしょう。

そこで今回は、再雇用制度の仕組みやメリット・デメリット、再雇用を成功させるポイントについて紹介していきます。

再就職との違いも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

再雇用制度とは

そもそも「再雇用制度」とは、定年退職をした後に、再び同じ会社で労働契約を結んで働く制度のことです。

年金の受給開始年齢が引き伸ばされたことで、「年金」も「賃金」も貰えない人が生活できなくなることが予測され、2013年に法改正がおこなわれました。

定年を廃止することも義務付けられていますが、実際には「本人が希望すれば65歳まで雇用してもらえる」という状態になっています。

また、どちらも努力義務なので、会社に対する強い強制力は、残念ながらありません。

企業に再雇用の拒否権はある?

「本当に定年後も同じ会社で働けるの?」と不安に思っている人もいるでしょう。

しかし、労働者が定年退職後の再雇用を希望している場合は、原則として会社は応じなければいけません。

あくまでも原則なので、

  • 会社側の指導や注意を無視する
  • ケガや病気により働くことができない
  • 会社の提示している条件に同意しない

上記のような場合は、拒否されることもあります。

しかし、問題なく働ける「健康状態」と「意欲」があれば、基本的に会社側に拒否権はないので、あまり心配しなくてもいいでしょう。

再雇用までの流れ

それでは次に、定年退職から再雇用までの流れを紹介していきます。

具体的な再雇用の流れは、以下の通りです。

  1. 定年の通知・再雇用の意思確認
  2. 雇用条件の提示・面談
  3. 再雇用の決定・手続き

それぞれ詳しく紹介していきます。

定年の通知・再雇用の意思確認

まずはじめに、会社側から定年退職を控えている人に対して、再雇用制度の仕組みを説明するために、面談の実施や書類の配布がおこなわれます。

再雇用制度の仕組みを理解した上で、定年退職後の希望を会社に伝えましょう。

再雇用を希望すれば、以下のステップに続きますが、希望しない場合は、通常の定年退職の手続きになります。

雇用条件の提示・面談

本人が再雇用を希望すると、会社側から今後の雇用条件が提示されます。

業務内容や労働時間、給与など、これまでと同じ待遇になることは期待できませんが、交渉の余地はあります。

勤務地が変更されている場合もあるので、雇用条件は必ず細部まで確認してから同意しましょう。

再雇用の決定・手続き

労働者が労働条件に同意すると、再雇用が決定します。

再雇用の場合でも、1度退職することになるので、退職金の支給など、退職の手続きをおこないます。

また、社会保険や労災保険、雇用保険などの区分が「再雇用労働者」に変更されるので、内容が少し変更されます。

労働者側が特別な手続きをする必要はないので、基本的には会社からの案内に従っていれば問題ありません。

再雇用のメリット

ここからは、再雇用メリットを紹介していきます。

定年退職後に再雇用を選択する主なメリットは、以下の3つです。

  • 生活スタイルを維持できる
  • 新しい仕事を探す必要がない
  • 厚生年金の受給額が増える
それぞれ詳しく紹介していきます。

生活スタイルを維持できる

1つ目の再雇用のメリットは、生活スタイルを維持できることです。

再雇用で働く場合は、勤務地や勤務時間は変更されないことがほとんどでしょう。

また、業務内容や人間関係がリセットされないので、生活スタイルを大幅に変更する必要がありません。

新しい仕事を探す必要がない

2つ目の再雇用のメリットは、新しい仕事を探す必要がないことです。

やはり、60歳以上で新しい職場に雇用してもらうのは、簡単ではありません。

ハローワークや人材紹介サービスを利用して、仕事を探す手間がなくなるのは、再就職との大きな違いです。

また、再就職を選んで新しい仕事を探す場合は、今よりも良い条件で雇用してもらえることは、ほぼ不可能です。

厚生年金の受給額が増える

3つ目の再雇用のメリットは、厚生年金の受給額が増えることです。

厚生年金の加入期間が最大で5年伸びるので、支給される金額も増額されます。

また、雇用されている間は会社が用意している健康保険にも加入できるので、医療費の負担が少ないメリットもあります。

再雇用のデメリット

それでは次に、再雇用のデメリットを紹介していきます。

定年退職後に再雇用を選択する主なデメリットは、以下の2つです。

  • 業務内容が変わる可能性もある
  • 賃金のトラブルに発展しやすい

それぞれ詳しく紹介していきます。

業務内容が変わる可能性もある

1つ目の再雇用のデメリットは、業務内容が変わる可能性があることです。

ほとんどの場合は業務内容が変更されることはありませんが、再雇用の場合でも役職や配属先が変更される可能性はゼロではありません。

特に、重要な仕事を若い人に覚えてもらうために、役職が高い人ほど業務内容が変更される傾向にあります。

これまで会社の基盤として重要な仕事をこなしてきた人には、業務に対する「やりがい」に物足りなさを感じることもあるでしょう。

賃金のトラブルに発展しやすい

2つ目の再雇用のデメリットは、賃金のトラブルに発展しやすいことです。

再雇用の場合は、定年前よりも給与が下がることがほとんどでしょう。

「同じ仕事なのに給料だけ下がった」「スキルや経験に待遇が見合ってない」など、トラブルに発展することも珍しくありません。

再雇用を成功させるポイント

それでは最後に、再雇用を成功させるポイントを紹介していきます。

60歳以降もストレスなく働くためには、以下3つのポイントを押さえておきましょう。

  • 定年後に働く目的を明確にしておく
  • 最低限の生活費を細かく計算しておく
  • 65歳以降の予定を立てておく

それぞれ詳しく紹介していきます。

定年後に働く目的を明確にしておく

1つ目の再雇用を成功させるポイントは、定年退職後に働く目的を明確にしておくことです。

残念ですが、再雇用ですべての要望が叶うことはないでしょう。
こんなはずじゃなかったのに、と後悔しないように「妥協できること」と「妥協できないこと」を整理しておく必要があります。

お金や仕事のやりがい、後継人の育成など、働く目的を絞っておくといいでしょう。

最低限の生活費を細かく計算しておく

2つ目の再雇用を成功させるポイントは、最低限の生活費を細かく計算しておくことです。
再雇用に限った話ではありませんが、60歳以降の雇用では、ほぼ確実に収入が減ってしまいます。

そのため、年金が支給されるまで、安定した生活を送るために必要な貯金額を、細かく計算しておきましょう。最低限の生活水準をキープすることで、漠然とした不安を解消することができます。

65歳以降の予定を立てておく

3つ目の再雇用を成功させるポイントは、65歳以降の予定を立てておくことです。

「人生100年時代」では、これまでの経験や知識が役に立つとは限りません。

また、年金の支給開始年齢が、さらに引き伸ばされる可能性も十分にあるでしょう。

60歳以降も求められる人材になれるように、ケアマネージャーや介護福祉士など、元気があるうちに資格を取得しておくことをオススメします。

まとめ

今回は、再雇用制度の仕組みやメリット・デメリット、再雇用を成功させるポイントについてお伝えしました。

定年後に「再雇用」と「再就職」で迷っている人は、給与とやりがいのバランスを考えてみましょう。

定年退職は、新しいキャリアのスタートになります。1度時間をかけて、自分のキャリアプランを、改めて設計してみてはいかがでしょうか?