社会福祉士とは? 仕事内容や活躍の場、資格取得の方法や試験の合格率などについて分かりやすく解説

社会福祉士

介護や福祉の仕事に興味を持っている方の中には、相談業務に就きたいと考えている方もいるでしょう。また、現在介護職で働いていて、キャリアアップを考えている方も社会福祉士の取得を目指そうと考えているかもしれません。

ここでは、社会福祉士がどのような資格なのか、仕事内容や活躍の場所を紹介するとともに、社会福祉士の取得方法・国家試験の合格率等をご紹介します。

社会福祉士とは?

社会福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められる国家資格で、主に福祉施設・機関等で活躍するソーシャルワーカーです。
社会福祉士資格を持たなくとも相談援助業務を行うことはできますが、社会福祉士国家試験に合格し、厚生労働省に登録した場合に限り社会福祉士を名乗ることができるようになります。(参考1)
社会福祉士を取得することで、福祉の専門知識や技術を有することを証明することができるため、相談援助職に携わるなら是非とも取っておきたい資格です。

社会福祉士の仕事内容とは

社会福祉士は、日常生活が何らかの理由によって難しくなった人に対し、困っていることを解決できるよう福祉に関するアドバイスを行ったり、支援することが主な仕事です。その対象者は幅広く、高齢者や障害者だけでなく児童や生活保護受給者、ひとり親家庭なども含まれます。

福祉を必要とする人に対し、具体的には次のような内容をヒアリングします。

  • 現在、何に困っているのか
  • 将来に対してどのような不安を抱えているのか
  • どのような助けが必要なのか
  • 置かれている環境をどう変えたいのか
  • 将来、どのようなことを目標として生きていきたいか

上記のようなヒアリングを行っても、相談に訪れた対象者によってニーズは様々です。対象者を大きく分けて困りごとの例を見てみましょう。

対象者 困りごとの例
高齢者 認知症が進み、資産管理ができなくなる恐れがある。
障害者 ハンディキャップを持ちながら働きたい。
児童・保護者 学童を利用したいのだが、児童に発達障害があり心配がある。
患者 退院後、自宅の屋内外に段差が多く、転倒が心配。

これらのニーズに合わせて、その人に合った福祉・サービスの受給に繋げることが重要です。そして、利用に関する適切なアドバイスを行い、対象者のニーズを満たした福祉が提供されているか確認したり、定期的にフォローを行います。このような業務をソーシャルワークといいます。

ただし、これは一般的な社会福祉士の仕事内容で、所属する施設・機関によって異なる場合もあります。

社会福祉士が活躍するフィールドは大変広く、地域の医療機関や保健医療サービスを提供する施設などと連携し、利用者の支援をすることもあります。また、近年では学校におけるいじめ問題の解消や、高齢化・核家族化などで複雑になっている地域での関わりの調整や、関係づくりに貢献する役割としてが期待されています。

MEMO
児童相談所では「児童福祉司」、高齢者福祉施設では「生活相談員や支援相談員」、障害者福祉関連施設では「生活指導員」、病院では「医療ソーシャルワーカー(MSW)」などの名称で呼ばれることもあります。

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社会福祉士の職場・就職先

社会福祉士が活躍できる職場は、介護・福祉施設、児童福祉施設、行政、医療機関、学校、矯正施設など多岐にわたります。

社会福祉士の役割は、生活上の「生きにくさ」を感じる人たちの相談に応じ、必要なサービスに繋げるハブ的な存在となることですが、それぞれの分野における代表的な勤務先と、主な仕事内容を見ていきましょう。

介護施設

施設・機関 主な仕事内容
介護老人福祉施設など 施設の相談員として、入所(希望)者・その家族の相談に応じる。施設サービス計画の立案し、利用者の生活の質を高めるための様々な業務を行う。
地域包括支援センター 地域で暮らしている高齢者・家族などの相談に応じ、高齢者の権利を擁護する業務(虐待防止・早期発見、成年後見制度の利用促進等)を行う。

障害福祉施設

施設・機関 主な仕事内容
障害者支援施設 利用者の自立支援、生活支援などの援助を行う。利用者が地域で円滑に生活できるようサポートする役割を担う。
就労支援事業所 就労を希望する障害者にパソコン、印刷、農園芸などの技術を習得するための訓練・指導を行う。また、職業実習先の開拓、求職活動の支援、就職後の相談等を行う。

(参考2)

児童福祉施設

施設・機関 主な仕事内容
児童相談所 問題を抱えた児童・家族の相談支援、家庭訪問、家庭環境の調査を行う。また、児童の担任や教育委員会などとの情報共有、連絡調整の役割を担う。
母子生活支援施設 何らかの事情(DV被害、貧困等)で一時的に入所した母子の相談に応じ、自立した生活ができるよう支援を行う。

行政、地域福祉

施設・機関 主な仕事内容
社会福祉協議会 生活福祉資金貸付制度、日常生活自立支援事業の利用を希望する人たちの相談に応じ、住民が地域で安心して生活できるよう支援を行う。
福祉事務所 福祉的なサポートを必要とする人たちの相談に応じ、法律に基づく行政サービス(生活保護、児童手当の支給等)が提供できるよう事務手続きを行う。

病院、学校

施設・機関 主な仕事内容
病院 入院患者・家族の相談(医療費の支援・免除、入院中の生活等)に応じ、必要な支援を行う。また、患者が退院後も安心して生活ができるよう様々な機関との連絡調整を行う。
学校 いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待など生徒指導上の課題に対応するため、社会福祉等の専門的な知識・技術を用いて、児童生徒の置かれた様々な環境に働き掛けて支援を行う(引用1)

矯正施設

施設・機関 主な仕事内容
刑務所など 福祉専門官として、同施設等を出所した者のなかで福祉的なサポートを必要とする人たち(高齢者、障害者等)が、地域生活に定着できるような支援を行う。

社会福祉士になるには

社会福祉士になるためには、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが年に1回実施する「社会福祉士国家試験」に合格しなければなりません。では、資格取得までの道のりを見てみましょう。

社会福祉士の受験資格

社会福祉士国家試験を受験するためには、まず次のいずれかの方法で「受験資格」を得る必要があります(参考3)。

福祉系大学等ルート

福祉系大学等ルートは、福祉系4年制大学、または2〜3年制の短期大学に通い、必要な科目を履修する方法です。具体的には以下のいずれかとなります。

  • 福祉系大学で指定の科目を履修する
  • 福祉系短期大学等で指定の科目を履修した後、相談援助の実務経験(1~2年)を積む

短期養成施設ルート

短期養成施設ルートとは、福祉系4年制大学に通学し基礎科目のみを取得した人が、半年以上の短期養成施設で科目を履修する方法です。具体的には以下のいずれかとなります。

  • 福祉系大学で基礎科目のみを取得して卒業後、短期養成施設に6ヶ月以上在籍し指定科目を履修する
  • 福祉系短期大学で基礎科目のみを取得し、相談援助の実務経験(1~2年)を積んだ後、短期養成施設に6ヶ月以上在籍し指定科目を履修する
  • 社会福祉主事養成機関での履修を終え、相談援助の実務経験(2年)を積んだ後、短期養成施設に6ヶ月以上在籍し指定科目を履修する

一般養成施設ルート

一般養成施設ルートとは、一般の4年制大学(福祉系以外)または、一般の短期大学を卒業後に、一般養成施設等に通う方法です。具体的には以下のいずれかとなります。

  • 一般の4年制大学(福祉系以外)卒業後、1年以上一般養成施設に通う
  • 一般の2~3年制短期大学(福祉系以外)を卒業後、相談援助の実務経験(1~2年)を経て、1年間以上一般養成施設に通う
  • 相談援助の実務経験(4年)を経て、1年間以上一般養成施設に通う

詳細を確認される場合は、社会福祉振興・試験センターのホームページで確認してみましょう。

社会福祉士国家試験受験までの流れと資格取得まで

社会福祉士国家試験を受験するために必要な受験資格を理解したところで、実際に資格を取得するための流れを確認していきましょう。

STEP.1
受験資格を満たす
受験に必要な要件を先に紹介したいずれかのルートで満たす必要があります。
STEP.2
受験申し込み
申込み受付期間は、例年9月上旬から10月上旬となっています。
STEP.3
受験
試験実施日は、申込みの翌年2月の上旬です。
STEP.4
合格発表
合格発表の時期は3月中旬です。社会福祉振興・試験センターのHP上で確認できます。
STEP.5
社会福祉士資格取得
試験合格後は、 登録申請を行います。

国家試験の難易度、合格状況について

社会福祉士国家試験は、1問1点で150問が出題される筆記試験です。合格するためには、次の2つの条件をクリアしなければなりません(参考4)。

  1. 問題の総得点の60%を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点があること
  2. 18科目群すべてにおいて得点があること

社会福祉士の国家試験は、出題範囲が広く、多くの知識を求められる試験であるため、福祉専門職の試験の中でも最難関と言われることも多いです。

令和4年2月に実施された「第34回社会福祉士国家試験」では、合格率は31.1%でした。それ以前の回での合格率は、第33回が29.3%、第32回が29.3%、第31回が29.9%、第30回が30.2%と、近年は30%前後を推移しています。
(参照:厚生労働省「第34回社会福祉士国家試験合格発表」

簡単には取得できない資格といえますが、各科目の出題基準を確認して、計画的に学習を続ければ、十分に合格を狙える資格です。一般的な勉強法として、徹底的な過去問題の反復学習がお勧めです。

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社会福祉士のやりがい

社会福祉士の仕事は、相談者として関わる人それぞれが様々な課題を持ち、その課題もすぐに解決できるものばかりではないため、支援していく過程で信頼関係が構築できないと、良い結果も期待できません。時には、苦情を受けることもあります。

しかし、困りごとを抱えて不安な状態にある人が、自分と関わることで気持ちが楽になったり、暮らしが良くなったりしたと実感できる場面はたくさんあるでしょう。こうした時こそ、社会福祉士として仕事をしていて良かったと大きなやりがいを感じるのではないでしょうか。

まとめ

少子高齢化の日本の福祉や介護、医療を支えるために、「連携」が進んでいます。地域包括ケアの観点からも、連携は欠かせません。社会福祉士は、人と人、地域、機関をつなぐスペシャリストです。福祉や介護、医療の分野において無くてはならない存在であることは言うまでもありません。今後、ますますその需要が増し、活躍するフィールドが広くなっていくことでしょう。興味がある人は、社会福祉士の取得を目指してみて下さい。

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参考文献

  1. 公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「資格登録(社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士)」
  2. 東京都福祉保健局 ふくむすび「障害者福祉との関わり方 ~第3回~障害者支援の仕事内容」
  3. 公益財団法人社会福祉振興・試験センター「受験資格(資格取得ルート図)」
  4. 公益財団法人社会福祉振興・試験センター「出題基準・合格基準」

引用文献