介護福祉士とは? 資格の取り方・仕事内容について分かりやすく解説

介護福祉士

  • 介護福祉士の役割・仕事内容とは?
  • 資格の取得方法とメリットとは?

介護職でのキャリアアップを考えている方、現場のリーダーとなってバリバリ働きたいという方で、介護福祉士の資格取得を検討している方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、介護福祉士の資格や仕事内容、資格取得までの道のりについてご紹介します。

介護福祉士とは?

介護福祉士とは、介護に関する高度な知識や技術を有する専門職として、利用者の身体上のお世話や精神面のケアを行うだけでなく、現場介護スタッフに対する教育や指導といった、リーダー的な役割も担う介護のスペシャリストです。

介護系の職種で唯一の国家資格

介護福祉士とは、介護に関連する資格の中で唯一の国家資格です。

つまり、介護福祉士を所有していると転職や就職時にはとても有利です。施設や事業所側としては、介護福祉士がいることで得られる加算もあるため、できるだけ確保しておきたい人材といえるでしょう。

介護福祉士の仕事内容

介護福祉士の主な仕事は「身体介助」「生活援助」「相談支援」などがあげられます。さらに、現場リーダーなどの立場であれば「スタッフへの教育・指導・マネジメント」も含まれるでしょう。

利用者やその家族に対して行うケアは、すべて介護計画(ケアプラン)に基づいて行います。日々の実施状況を見ながら、ケアプランが適正に実施できているのかチェックし、フィードバックしたり他職種と連携を図りながら進めていくのも介護福祉士の仕事の一部です。

身体介助

利用者の食事や移動、排泄、衣類の着脱、入浴、身だしなみなど、介護が必要な部分を支援します。要介護状態によって必要な支援は人それぞれですから、その人に適した方法で支援していきます。

生活援助

調理や洗濯、掃除、買い物など、いわゆる家事に関する部分です。施設や事業所の種類によっては、生活援助の範囲が変わります。例えば、大規模の入所施設であれば、調理は栄養士、洗濯は業者、必要な買い物は家族に任せることも珍しくありません。

相談支援

利用者やその家族の相談に乗り、アドバイスをすることもあります。介護が必要な人やその家族の不安な気持ちに寄り添い、解決に向けて歩み出せるような支援が求められます。

スタッフの教育、指導、マネジメント

介護スタッフの教育や指導を行い、良い関係性のもと仕事ができる環境をつくります。介護の質を高め、サービスがより良いものとなるよう目指します。

介護福祉士と一般的な介護職員の違い

介護福祉士になっても、業務内容としては一般的な介護職員との違いは大きくありません。ただし、介護福祉士国家資格を取得しているということは、介護に関する専門的な知識を有することを表すことにもなるので、リーダーに抜擢されたり、資格手当が支給されたりと、待遇面での差が出る場合があります。

1日のスケジュール

勤務先のサービスや時間帯によってスケジュールは異なりますが、特別養護老人ホームの例を参考に見ていきましょう。

8:30~
出勤・間接業務
朝食の片付け、お部屋の掃除、夜勤スタッフからの申し送りなど
9:30~
直接介助
排泄介助、入浴介助など
11:30~
直接介助
食事介助、排泄介助、入浴介助など
13:30~
休憩
1時間の休憩中に昼食を済ませます
14:30~
間接介助
おやつの準備、レクリエーション実施、散歩などの支援など
17:00~
間接業務
夜勤者への引継ぎ、介護記録の記載
17:30
退勤
お疲れ様でした!

介護福祉士になるには

介護福祉士になるには、介護福祉士国家試験を受けて合格しなければなりません。国家試験は誰もが受けられるわけではなく、決められた受験要件を満たす必要があります。

介護福祉士になるまでのルートはいくつかありますが、どの道を選んだとしても国家試験を受けることとなります。少し前までは介護福祉士養成校を卒業した場合、国家試験を受けなくても介護福祉士として認定されていましたが、2016年の法改正によって受験が必須となりました。

受験資格を得るまでのルートとしては、「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」「経済連携協定(EPA)ルート」の4つに分類されます。

実務経験ルート

実務経験ルートは以下の2パターンのいずれかに該当する場合を指します。

  1. 介護施設等での実務経験が3年以上+介護福祉士実務者研修を修了
  2. 介護施設等での実務経験が3年以上+介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の両方を修了

「実務経験3年」の定義について

実務経験3年とは、従事期間が3年(1,095日)以上且つ従事日数が540日以上の場合のことを指します。

「従事期間」とは、実務経験の対象となる施設(事業)及び職種での在職期間のことで、この期間には産休、育休、病休等の休職期間も含まれます。

「従事日数」とは、雇用契約に基づき、実際に介護等の業務に従事した日数のことで、勤務時間が1時間でも8時間でも同じ1日としてカウントします。ただし、年次有給休暇、特別休暇、出張、研修等により、実際に介護業務に従事しなかった日数は含めることが出来ません。

実務経験ルートで必要な研修について

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介護福祉士資格取得までの流れ

STEP.1
受験資格取得
実務経験ルートのいずれかに当てはまること(受験資格があること)を確認
STEP.2
受験申込み
申込期間は8月上旬から9月上旬です。
STEP.3
筆記試験
翌年1月下旬に実施されます。実技試験は免除されます。
STEP.4
合格発表
合格発表は3月下旬です。

養成施設ルート

養成施設ルートは高等学校を卒業後、以下の4パターンのいずれかに該当する場合を指します。

  1. 介護福祉士養成施設で2年以上修学・卒業
  2. 福祉系大学等を卒業し、介護福祉士養成施設で1年以上修学・卒業
  3. 社会福祉士養成施設等を卒業し、介護福祉士養成施設で1年以上修学・卒業
  4. 保育士養成施設等を卒業し、介護福祉士養成施設で1年以上修学・卒業

介護福祉士資格取得までの流れ

STEP.1
受験資格取得
養成施設ルートのいずれかに当てはまること(受験資格があること)を確認
STEP.2
受験申込み
申込期間は8月上旬から9月上旬です。
STEP.3
筆記試験
翌年1月下旬に実施されます。実技試験は免除されます。
平成28年度までに卒業した方:    免除
平成29年度~令和8年度に卒業した方: ※
令和9年度以降に卒業する方:     受験必須
STEP.4
合格発表
合格発表は3月下旬です。
※平成29年度~令和8年度に卒業した方について

卒業後5年間の期限付きで介護福祉士資格が認められます。その間に筆記試験を受験し合格するか、継続勤務で実務5年の経験を得ることで、正式に介護福祉士として認められます。

介護福祉士養成施設とは

公益社団法人日本介護福祉士養成施設協会にて確認することが可能です。

福祉系高校ルート

福祉系高校ルートは、以下の3パターンのいずれかに該当する場合を指します。

  1. 平成21年度以降に福祉系高校に入学
  2. 特例高校等を卒業後、実務経験が9ヶ月以上
  3. 平成20年度以前に入学

介護福祉士資格取得までの流れ

STEP.1
受験資格取得
福祉系高校ルートのいずれかに当てはまること(受験資格があること)を確認
STEP.2
受験申込み
申込期間は8月上旬から9月上旬です。
2もしくは3に該当する方は、いずれかのコースを選択します。
  1. 介護技術講習を受講または介護課程・介護課程Ⅲを修了する
  2. 1の講習または課程を修了しない
STEP.3
筆記試験
翌年1月下旬に実施されます。
STEP.4
実技試験
2もしくは3に該当する方で、コース2を選択した方のみ(それ以外の方は免除)
STEP.5
合格発表
合格発表は3月下旬です。

経済連携協定(EPA)ルート

経済連携協定(EPA)ルートは、EPA介護福祉士候補者として在留する外国人が、実務経験が3年以上であることを指します。

こちらの記事の中で「EPA介護福祉士候補者」を紹介しています!
【事業者向け】外国人介護人材の受入れについて~在留資格ごとの概要を学ぼう~

介護福祉士資格取得までの流れ

STEP.1
受験資格取得
経済連携協定(EPA)ルートに当てはまること(受験資格があること)を確認
STEP.2
受験申込み
申込期間は8月上旬から9月上旬です。
いずれかのコースを選択します。
  1. 介護技術講習、介護課程・介護課程Ⅲ、介護福祉士実務者研修のいずれかを修了する
  2. 1の講習または課程を修了しない
STEP.3
筆記試験
翌年1月下旬に実施されます。
STEP.4
実技試験
コース1を選択した方は免除
STEP.5
合格発表
合格発表は3月下旬です。

介護系資格なし・介護職未経験から介護福祉士になるまで

介護福祉士国家試験は、年に1回1月に受験することが可能です。介護系資格がなく、介護職も未経験である、という方は、介護福祉士養成校への入学を検討するか、未経験でも働ける職場を見つけて実務経験を積みましょう。中には働きながら実務経験ルートの要件である「介護福祉士実務者研修」を受講できる職場もある(費用負担をしてくれる職場も!)ので、チェックしてみてくださいね!

介護福祉士国家試験の概要

次回の介護福祉士国家試験の日程や、試験の内容、合格率はどのくらいなのか、一緒に確認していきましょう。

試験日

介護福祉士国家試験は、年に1度年始に実施されます。
2023年に行われる第35回試験の日程は、下記の通りです。

受験申込期間 2022年8月10日(水)〜2022年9月9日(金)
筆記試験 2023年1月29日(日)
実技試験 2023年3月5日(日)
合格発表 2023年3月24日(金)14時

2023年に実施される試験の申し込みはすでに期間が終了しているため受験することはできませんが、2024年の介護福祉士国家試験の申し込み時期は、2023年の8月上旬〜9月上旬とされています。受験を検討されている方は、こまめに情報をチェックするようにしておきましょう。

試験内容

介護福祉士国家試験は、筆記試験と実技試験(※)に分かれています。

筆記試験は以下の15のジャンルから出題され、5つの選択肢から回答をマークするマークシート方式で実施されます。

  1. 人間の尊厳と自立
  2. 人間関係とコミュニケーション
  3. 社会の理解
  4. 介護の基本
  5. コミュニケーション技術
  6. 生活支援技術
  7. 介護過程
  8. こころとからだのしくみ
  9. 発達と老化の理解
  10. 認知症の理解
  11. 障害の理解
  12. 医療的ケア
  13. 総合問題
実技試験について
実技試験は以下のルートの場合を除き免除されます。
  • 福祉系高校ルート(平成20年度以前入学者及び特例高校等に平成21年度以降入学者)で介護技術講習を受講しなかった場合
  • EPA(経済連携協定)ルートで介護技術講習または介護福祉士実務者研修を修了しなかった場合

合格率

過去5回の合格率は以下の通りでした。

第34回(令和3年度) 72.3%(受験者数83,082名)
第33回(令和2年度) 71.0%(受験者数84,483名)
第32回(令和元年度) 69.9%(受験者数84,032名)
第31回(平成30年度) 73.7%(受験者数94,610名)
第30回(平成29年度) 70.8%(受験者数92,654名)

介護福祉士の合格率は、70%前後を推移していることが分かりますね。

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介護福祉士国家試験に合格するための勉強方法

介護福祉士国家試験に合格するためには、具体的にどのような対策、勉強をすれば良いのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

難易度の高い範囲を重点的に勉強する

筆記試験の出題範囲の中で難易度が高いとされているのは、

  • 人間の尊厳と自立
  • 社会の理解
  • 生活支援技術
  • 障害の理解
です。

これらのジャンルは、現場経験だけでは回答できない問題が多く、参考書やテキストを繰り返しとき、苦手意識をなくすことが重要です。馴染みのない分野については暗記するなど、根気よく対策をとることが試験突破のカギとなります。

過去問を多く解く

出題傾向を把握するためにも、過去問には時間が許す限り取り組むようにしましょう。あまり昔の過去問は介護保険制度の改正などに伴い、受験する試験には出てこなかったり誤回答である可能性もあるので、最新版から順に遡って解いていくことをお勧めします。

介護福祉士の職場・就職先について

介護福祉士が働く職場は、基本的に介護保険サービス利用者のご自宅、介護施設、医療施設の3つです。基本的には身体介護がメインですが、訪問介護の場合は身体介護と生活援助の両方を担うことが多いです。

高齢者福祉関係

    • 特別養護老人ホーム

原則要介護3以上の、自宅での生活が困難な方が入所する施設です。重度の方が多く、看取りまで支援することもしばしばあり、介護福祉士は身体介護や機能訓練などを提供します。

    • 介護老人保健施設

要介護1~5の方が入所し、自宅復帰を目指すリハビリ施設です。こちらも、介護福祉士は身体介護や機能訓練の提供がメインとなります。

    • デイサービス、デイケア

自宅で生活している要介護高齢者が通い、必要な介護や機能訓練などを提供する施設です。こちらも、身体介護がメインとなります。

    • グループホーム

認知症の方が共同生活を送る「住まい」です。必要な身体介護をしながら、掃除や調理、洗濯などの家事を入居者とともに行います。

    • 訪問介護

生活援助と身体介護のどちらも行う可能性があります。身の回りの動作に介護が必要でなくても、何らかの理由によって調理や掃除ができない方もたくさんいます。

障害者福祉関係

    • 障害者支援施設(施設入所支援)

施設に入所する常に介護を必要とする障害者に対し、身体介護(食事・入浴・排泄)や生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物・相談)を行います。日中は生活介護、自立訓練又は就労移行支援などの活動を行っています。

    • 訪問介護

障害者の自宅に訪問して、身体介護(食事・入浴・排泄)や生活援助(掃除・洗濯・調理・買い物)を行います。

介護福祉士の給料

介護福祉士の全国平均給与は、月給220,378~258,550円となっています。(2022年3月29日時点でe介護転職に掲載中の求人より算出)

介護福祉士のやりがい

介護福祉士は、利用者の体に直接触れる仕事です。その分、利用者や家族との距離も近く、日頃から良いケアをしていれば「ありがとう」という言葉を直接言ってもらえます。

また、自分が関わることで、利用者が前向きになった、出来ることが増えた、元気になった、などの様子が見られれば、大きなやりがいを感じることでしょう。

身体的・精神的につらいことも多いと言われる職種ですが、経験を積み重ねていくことで、困難とされるケースにも対応できるようになります。

まとめ

少子高齢化の進む日本において、介護福祉士は今後も変わらず社会に求められる職種で、安定性の高い仕事といえるでしょう。介護福祉士になるにはさまざまなルートがあり、中には福祉系の学校に卒業していなくてもキャリアアップが目指せるルートもあります。今からでも決して遅くありません。興味のある方は、介護の仕事を探してみましょう。

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