働く人の中長期的なキャリア形成を支援することで、雇用の安定と再就職を促すことを目的とした「教育訓練給付制度」という制度をご存知でしょうか?
教育訓練給付制度は、「キャリアアップのために資格を取得したい」「資格を取得して別業種に転職したい」などの理由から、介護や福祉関連の資格取得を目指しているなら積極的に利用していきたい内容になっています。
そこで今回は、教育訓練給付制度の内容や対象者、具体的な給付金額について解説していきます。
記事でわかること
教育訓練給付制度とは
そもそも「教育訓練給付制度」とは、厚生労働省が指定している講座を受講した場合に、支払った学費の一部が支給される制度のことです。
介護・福祉関連の資格も充実しており「介護福祉士」「介護福祉士実務者研修」「介護支援専門員(ケアマネージャー)」なども対象講座に指定されています。
また、対象講座は毎年アップデートされているため「カラーコーディネート」「ITパスポート」「日本語講師養成」など、人気のある資格も多数あります。
各分野ごとに、一定の条件を満たしている必要はありますが、資格を取得するなら必ず利用しておきたい制度です。
教育訓練の分類
給付の対象となっている教育訓練は、以下の3つに分類されています。
- 一般教育訓練
- 専門実践教育訓練
- 特定一般教育訓練
各分野ごとに、対象となる講座の中から介護と福祉の現場で使える資格を抜粋して紹介していきます。
一般教育訓練
一般教育訓練では、「安定した雇用と再就職の促進」を主な目的として、以下のような講座が対象です。
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
- 調理師
- 保育士 など
専門実践教育訓練
専門実践教育訓練では、「中長期的なキャリア形成」を主な目的として、以下のような講座が対象です。
- 看護師
- 准看護師
- 助産師
- 保健師
- 介護福祉士実務者研修
- 社会福祉士
- 柔道整復師
- 精神保健福祉士
- 言語聴覚士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 視能訓練士 など
特定一般教育訓練
特定一般教育訓練では、「速やかな再就職と早期のキャリア形成」を主な目的として以下のような講座が対象です。
- 介護職員初任者研修
- 介護支援専門員実務者研修
- 喀痰吸引等研修
- 福祉用具専門相談員 など
教育訓練給付制度の利用条件
それでは次に、教育訓練給付制度の利用条件について紹介していきます。
教育訓練給付制度の対象者は「雇用保険に加入している人」もしくは「雇用保険に加入していた経歴がある人」です。
そのため、公務員や自営業の人は対象外となります。
また、以下2つの条件のどちらかに該当している必要もあります。
- 教育訓練の受講開始日時点で雇用保険の加入年数が3年以上
- 雇用保険の被保険者でない場合は、離職日の翌日から受講開始日が1年以内
1つ目の条件にある「受講開始日」は資格ごとにタイミングが異なる場合があります。
通学制であれば「開講日」、通信制であれば「教材の発送日」が、受講開始日になることが一般的です。
不安な人は、ハローワークと講座を開催している会社に確認しておきましょう。
「教育訓練給付制度」には、回数の上限がないため、何度でも利用可能ですが、2回目以降の利用の場合は、前回の「支給開始決定日」から3年以上の期間が経過している必要があります。
給付金額について
ここからは、教育訓練給付制度の給付金額について紹介していきます。
給付金額は講座の分類によって条件が異なるので、各分野ごとに詳しく紹介していきます。
一般教育訓練の給付金額
一般教育訓練の給付金額は「教育訓練機関に支払った金額の20%相当」です。
ただし、上限は10万円で、支給金額が4千円以下の場合は、支払われません。
また、同時に複数の一般教育訓練に申請することはできません。
専門実践教育訓練の給付金額
専門実践教育訓練の給付金額は「教育訓練機関に支払った金額の50%相当」です。
ただし、上限は年間40万円で、支給金額が4千円以下の場合は、支払われません。
訓練期間は最長で3年なので、最大支給額は120万円となります。
また、受講終了後に定められた資格を取得すると、20%相当の追加給付金が支給されます。
そのため、合計すると教育訓練機関に支払った金額の、70%相当が給付されることになりますが、上限は年間56万円までです。
この場合も4千円以下は支給されず、訓練期間は最長で3年なので、最大支給額は168万円になります。
2回目以降の専門実践教育訓練を受講するためには、最初の訓練の受講開始日から10年が経過している必要があります。
特定一般教育訓練の給付金額
特定一般教育訓練の給付金額は「教育訓練機関に支払った金額の40%相当」です。
ただし、上限は年間20万円で、支給金額が4千円以下の場合は、支払われません。
また、同時に複数の特定一般教育訓練に申請することはできません。
教育訓練講座について
厚生労働省がしている教育訓練講座は、こちらの「教育訓練講座検索システム」で検索できます。
それぞれの分野や資格名で検索できるだけでなく、地域や実施方法、キーワードから探すことも可能です。
教育訓練給付制度を利用する流れ
教育訓練給付制度を実際に利用する流れは、以下の通りです。
- 講座に申し込む
- 講座を最後まで受講する
- 学校から必要書類を受け取る
- ハローワークで申請
- 給付金の支給る
それでは詳しく見ていきましょう。
また、講座を申し込むときは、講座を開催している会社に対して、教育訓練給付制度を利用することを伝えておく必要があります。
同じ講座内容でも「一般コース」と「教育訓練給付制度の対象コース」がわかれている場合もあるため注意しておきましょう。
給付金が支給されるのは、講座を受講したあとなので、入学金や受講料はすべて自分で支払うことになります。
- 教育訓練修了証明書
- 教育訓練給付金支給申請書
- 領収書(クレジット契約証明書・クレジット伝票でも可)
上記は、講座を開催している会社が発行してくれる書類です。
「講座修了日から1ヶ月以内」が申請できる期間です。
1日でも遅れてしまうと給付金は支給されないため、注意が必要です。
また、給付金は申請完了から、約3週間以内に支払われます。
教育訓練給付制度の注意点
資格取得を支援してくれる「教育訓練給付制度」ですが、不正利用が発覚した場合は、罰則が設けられています。
給付金を不正に受け取った場合の罰則は「給付金の返還と支給された金額の2倍を納付」です。
つまり、教育訓練機関に支払った金額を、3倍にしてハローワークに支払うことになります。
また、最悪の場合は「詐欺罪」として刑罰に処される可能性もあります。
講座を途中でやめてしまったのに給付金を申請したり、勤務先から補助金を受け取っていたなど、不正受給は絶対にやめておきましょう。
まとめ
今回は教育訓練給付制度の内容や対象者、具体的な給付金額についてお伝えしました。
資格を武器にして転職やキャリアアップを考えているなら、ぜひとも利用したい制度でしょう。
当サイト「ekaigo with」では、介護・福祉関連の資格についても詳しく解説しています。
どんな資格を取得すればいいのかわからない人は、ぜひ参考にしてみてください。
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