年金の支給開始年齢が引き上げられたことにより、60歳以降も働くことが一般的になりました。
しかし、再雇用制度や再就職をしたとしても、賃金の低下は避けられないでしょう。
そんなときに利用したいのが、雇用保険からの給付金です。
雇用保険には、60歳になった途端に給料が激減してしまった人向けの給付制度があります。
- 高年齢雇用継続基本給付金
- 高年齢再就職給付金
- 高年齢求職者給付金
上記3つの給付金について、それぞれの対象者・金額・期間などを詳しく紹介していきます。
記事でわかること
高年齢雇用継続基本給付金
60歳で定年退職して、再雇用として働く場合は、給与が下がることが一般的です。
このような急激な給与の低下を補填するために作られた制度が「高年齢雇用継続基本給付金」です。
いくつかの条件があるものの最大で賃金の15%を支給してくれるため、金額も少なくありません。
再雇用を検討している人は、必ず制度の仕組みを理解しておきましょう。
高年齢雇用継続基本給付金の対象者
高年齢雇用継続基本給付金を受給するためには、以下4つの項目をクリアしておく必要があります。
- 雇用保険の基本手当(失業手当)を受給していない方
- 60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者
- 雇用保険の被保険者期間が5年以上
- 60歳到達時の賃金と比較して、60歳到達以降の賃金が75%未満となった方
上記4つの項目をすべて満たしていなければ、受給することはできません。
高年齢雇用継続基本給付金の受給金額・期間
高年齢雇用継続基本給付金の受給期間は、60歳になった月から65歳になる月までが対象です。
受給金額は、60歳以前と以降の給与の差によって決定します。
賃金低下率が61%〜75%の場合は、「60歳以降の給与×一定の割合(0〜15%)」が受給金額になります。
賃金低下率が60%以下の場合は、60歳以降の給与の15%が一律で支給されます。
具体的な例を見てみましょう。
60歳到達以降の給与:28万円(賃金低下率70%→支給率4.67%)
上乗せ賃金額:280,000×0.0467=13,076円
また、60歳到達時点の給与とは、60歳に到達する前6ヶ月間の平均給与のことを指します。
支給金額には上限と下限が設定されており、上限は「36万5114円」で、下限は「2,059円」です。
高年齢雇用継続基本給付金の受給方法
「高年齢雇用継続基本給付金」を受給するためには「高年齢求職者給付金」と同様に、ハローワークへの申請が必要です。
しかし、高年齢雇用継続基本給付金の申請や手続きは企業側がおこなうため、労働者は支給申請用紙に記入して会社に提出するだけでOKです。
高年齢雇用継続基本給付金の注意点
高年齢雇用継続基本給付金は、最大で給与の15%が支給される非常に魅力的な制度ですが、注意しておくポイントがあります。
それは「年金の支給が止まってしまう」ことと「年金の一部が支給停止」されてしまうことです。
高年齢雇用継続基本給付金を受給しているということは、60歳以降も不自由なく働けているため、年金の支給が止まっても大きな問題ではないでしょう。
しかし、これまで払ってきた年金の一部(0.18%〜6%)が差し引かれるのは、誰だって嫌ですよね。
高年齢雇用継続基本給付金の受給が原因で、予定していた年金よりが少なくなってしまうこともあるため、事前に調べておきましょう。
高年齢再就職給付金
定年退職して失業保険を受給している期間に、再就職が決まることも珍しくありません。
このような場合に、給与の大幅な低下をカバーしてくれるのが「高年齢再就職給付金」です。
基本的な仕組みは先ほど紹介した「高年齢雇用継続基本給付金」と同じですが、対象者など異なる点もあります。
定年退職後は違う会社への転職を検討している人は、確認しておきましょう。
高年齢再就職給付金の対象者
高年齢再就職給付金を受給するためには、以下4つの項目をクリアしておく必要があります。
- 雇用保険の基本手当(失業手当)を受給した後に再就職をした方
- 基本手当(失業保険)の支給残日数が100日以上残っている方
- 60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者
- 雇用保険の被保険者期間が5年以上
重要なポイントは、失業保険の「支給残日数」です。
再就職の前日までに支給残日数が100日以上残っていない場合は、受給することができません。
また、失業保険の支給残日数が多いほど、高年齢再就職給付金の支給期間は長くなります。
高年齢再就職給付金を少しでも多く受給したい人は、定年退職前から転職活動をはじめておいた方がいいでしょう。
高年齢再就職給付金の受給金額・期間
高年齢再就職給付金の受給期間は「高年齢雇用継続基本給付金」と同様に、60歳になった月から65歳になる月までが対象となっています。
また、受給金額の計算方法も同じで、賃金低下率が61%〜75%の場合は、「60歳以降の給与×一定の割合(0〜15%)」が支給され、賃金低下率が60%以下の場合は、60歳以降の給与の15%が一律で支給されます。
ただし、失業手当の支給残日数が「100日以上ある場合は1年間」で「200日以上ある場合には2年間」の支給期間に上限が設けられている点には注意しておきましょう。
高年齢雇用継続基本給付金の受給期間は最大で5年ですが、高年齢再就職給付金は最大で2年しかないため、定年後も同じ会社で働いた方が給付金は多くもらえます。
高年齢再就職給付金の受給方法
高年齢再就職給付金の手続きもハローワークでおこないます。
高年齢雇用継続基本給付金と同様に、基本的には企業側が主導で手続きをおこなってくれるため、労働者は支給申請用紙に記入して会社に提出するだけで問題ありません。
高年齢求職者給付金
高年齢求職者給付金とは、65歳以降の人が受給できる失業保険のことです。
「高年齢求職者給付金」と「失業保険」は似ている制度ではありますが、雇用保険の加入期間や受給できる金額、年金との併給など、さまざまな違いがあります。
高年齢求職者給付金の対象者
高年齢求職者給付金を受給するためには、以下3つの項目をクリアしておく必要があります。
- 離職時の年齢が65歳以上で、雇用保険の被保険者(短期雇用特例被保険者と日雇労働被保険者は除く)
- 雇用保険の加入歴が過去1年間に通算6ヶ月以上
- 仕事に就く意思と能力がある
上記3つの項目をすべて満たした上で、ハローワークに申請することで高年齢求職者給付金が支給されます。
また、高年齢求職者給付金には年齢や回数に関する上限がありません。
そのため、80歳以降でも受給することは可能で、離職するたびに高年齢求職者給付金が支給されます。
高年齢求職者給付金の受給金額・期間
高年齢求職者給付金では、雇用保険の加入歴が1年未満であれば「30日分」、1年以上であれば「50日分」の失業保険に相当する金額が支給されます。
このときの「失業保険に相当する金額」については、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
失業保険はいくらもらえる?条件や受け取り方、支給期間について解説
また、期限は離職した日から1年以内までなので、手続きはなるべく早めに済ませておきましょう。
高年齢求職者給付金を受給する方法
高年齢求職者給付金の申請は、ハローワークでおこないます。
申請するときには、以下の6つが必要になるので、必ず持参して行きましょう。
- 離職票
- 個人番号を確認できる書類
- 身分証明書
- 本人名義の預金通帳
- 証明写真(2枚)
- 印鑑書
基本的には上記6つが必要になりますが、不安な人は事前にハローワークに確認しておきましょう。
また、高年齢求職者給付金はあくまでも「給付金」なので、所得税に課税されることはありません。
まとめ
今回は、高年齢求職者給付と高年齢雇用継続給付についてお伝えしました。雇用保険には「失業保険」以外にも、さまざまな給付金が用意されています。
再雇用を選択すると、年齢や役職に関係なく給与は下がり、降格させられることも珍しくないでしょう。仕事の裁量権もなくなるのであれば、まったく違う職種に挑戦してみてはいかがでしょうか?
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