今回の記事では、厚生労働省が発表した資料から、高齢化社会と介護業界の今後について見ていきます。
解説に用いる厚生労働省の参考資料は以下の3つです。
記事でわかること
高齢化社会の現状と超高齢化社会
『少子高齢化社会』と言われて久しい日本ですが、2020年時点での高齢者人口(割合)は、65歳以上の高齢者が3,619万人(28.9%)、75歳以上の高齢者が1,872万人(14.9%)であり、人口の43.8%が高齢者という状態で、2000年の介護保険法が施行されてからは、65歳以上の人口は1.6倍と増加しました。今後はこの割合がどんどん増えていきます。
65歳以上の高齢者人口は、2025年には3,677万人(30.0%)、2055年には3,704万人(38.0%)、75歳以上の高齢者人口2025年には2,180万人(17.8%)、2055年には2,446万人(25.1%)となる見込です。つまり近い将来である2025年には高齢者が人口の47.8%が、2055年には63.1%もが高齢者になるという、『超高齢化社会』になっていると予想されています。
これに伴い、認知症高齢者の増加や、一人暮らしの高齢者、老夫婦のみの世帯も増加していく見込です。
もともと高齢者人口の多い地方では今後も緩やかに割合が増加しますが、都市部では急速に割合が増加するため、各地域行政はその地域特性に応じた対応が急務です。
介護保険料の推移
高齢者が増えるということは、介護が必要な人口も増加しているということになります。2000年の介護保険法施行時は要介護(要支援)認定者が218万人でしたが、2020年には669万人と3.1倍増加しています。
介護が必要になった場合、介護保険サービスを利用したときの費用は自己負担が1~3割で、残りの7~9割は介護保険が給付されるため安心ではありますが、その介護保険の財源の内、5割は介護保険料です。
高齢化が進む中で、被保険者が支払う保険料はどのように推移してきたのでしょうか。第1号被保険者である65歳以上のデータ{全国平均(月額・加重平均)}を例として見てみましょう。
表:第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料の推移
年 | 介護保険料{全国平均(月額・加重平均) | 増加率 |
2,000年施行時~2002年 | 2,911円 | |
2003~2005年 | 3,293円 | (13.1%) |
2006~2008年 | 4,090円 | (24.2%) |
2009~2011年 | 4,160円 | (1.7%) |
2012~2014年 | 4,972円 | (19.5%) |
2015~2017年 | 5,514円 | (10.9%) |
2018~2020年 | 5,869円 | (6.4%) |
2021~2023年 | 5,869円 | (2.5%) |
介護報酬が改定される3年ごとに保険料が増加しており、施行当時と比較すると現在の保険料は106.5%も増加している事が分かります。
第2号被保険者である40~65歳の医療保険加入者についても、標準報酬月額によって金額は異なりますが、それに乗ずる保険料率が増加している為、保険料は増加しています。
2040年展望
平成30年10月に厚生労働省に『2040年を展望した社会保障・働き方改革本部』が設置されました。
現役世代(担い手)が急減し、「総就業者数の増加」とともに「より少ない人手でも回る医療・福祉の現場を実現」することを目指し取組みを行う予定とされています。具体的な取組み内容は以下の3つに分類されてます。
多様な就労・社会参加
70歳までの就業機会の確保や就職氷河期世代の就職支援など
健康寿命の延伸
2040年までに健康寿命を男女ともに3年以上延ばして75歳以上にするため、健康無関心層へのアプローチ強化、地域・保険者間の格差解消など
医療・福祉サービス改革
2040年時点で、単位時間当たりのサービス提供を5%(医師は7%)改善するため、ロボット・AI・ICT等の実用化推進、データヘルス化や組織マネジメント改革など
これらに加え、引き続き取り組む政策課題として『給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保』が挙げられています。
介護業界の今後
高齢者が増加し、現役世代が減少することに伴い、介護業界の一番の課題は人材の確保です。2021年現在でも既に介護職不足は叫ばれています。この課題をクリアするために、総合的な介護人材確保対策として、厚生労働省が挙げている主な取組みを見てみましょう。
介護職員の処遇改善
リーダー級、経験・技能のある介護職員に処遇改善を実施
多様な人材の確保・育成
- 介護福祉士修学資金貸付、再就職準備金貸付による支援
- 中高年齢者等の介護未経験者に対し研修の実施から職場マッチングまでを一体的に支援 など
離職防止定着促進・生産性向上
- 介護ロボット・ICTの活用推進
- キャリアアップのための研修受講負担軽減や代替職員の確保支援 など
介護職の魅力向上
- 学生やその保護者、進路指導担当者等への介護職の理解促進
- 介護を知るための体験型イベントの開催 など
外国人材の受入れ環境整備
- 介護福祉士を目指す留学生等の支援(介護福祉士修学資金貸付や日常生活面での相談支援)
挙げられた取組みから見て、既存の介護職員については処遇改善や資格取得および研修受講の負担を軽減することによる離職防止対策を、新たな人材を確保する点については修学および復職に係る費用の貸付(返済が免除になるケースあり)や外国人の受入れ、職場環境の改善として、現場のICT化を推進していく、ということが分かりました。
まとめ
いかがでしたか?今回の記事では、今後も高齢化社会は進んでいくこと、それに伴って介護保険料は増加傾向にあること、介護人材を増やすために予定されている政府の取り組み内容などを見ていきました。
介護業界で働いていない方にとっても、今後知っておきたい身近な内容だったのではないでしょうか。今後も厚生労働省などが発表しているデータを基に、様々な情報をご提供いたしますので、引き続きekaigowithで記事をチェックしてくださいね。
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