介護業界では「介護福祉士」や「介護支援専門員(ケアマネジャー)」など、さまざまな資格や研修があります。
しかし、介護を必要としている人にも幅広いタイプがあり、障害の区分や仕事内容によって、取得しておくべき資格も異なります。
そこで今回は、知的・精神障害を持っている人の移動や生活をサポートするために必要な「行動援護従業者養成研修」について紹介していきます。
- 行動援護従業者養成研修とは?
- 行動援護従業者養成研修はどんな職場に必要?
- 行動援護従業者養成研修を取得するメリットは?
行動援護従業者養成研修に興味を持つ人は、ぜひ参考にしてみてください。
記事でわかること
行動援護従業者養成研修とは
行動援護従業者養成研修とは、知的・精神障害によって常に介護を必要としている人に対する介護知識を深めるための研修です。
研修名に「行動援護」とありますが、安全に移動するための介護知識だけでなく、コミュニケーション方法や、ご家族の心理状況など、知的・精神障害について幅広く学習します。
また、行動障害をお持ちの方の中には、生活環境への著しい不適応行動を多く起こす「強度行動障害」に該当される方もいます。
そういった方に対して安全に介護を提供する目的として、「強度行動障害支援者養成研修」も存在します。
行動支援従事者として働くためには、以下2つの条件が必須です。
- 行動援護従業者養成研修修了
- 知的障害者(児)もしくは、精神障害者(児)の直接支援業務1年以上
行動援護従業者養成研修のカリキュラム
研修ごとにカリキュラムを見ていきましょう。
行動援護従事者養成研修
行動援護従事者養成研修では、行動障害に関する介護知識を重点的に学習していきます。
研修期間は3〜4日程度で、介護資格や実務経験のない人でも受講することが可能です。
科目 | 時間 | |
講義 | 強度行動障害がある者の基本的理解 | 1.5時間 |
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 | 5時間 | |
強度行動障害がある者へのチーム支援 | 3時間 | |
強度行動障害と生活の組立て | 0.5時間 | |
演習 | 基本的な情報収集と記録等の共有 | 1時間 |
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解 | 3時間 | |
行動障害の背景にある特性の理解 | 1.5時間 | |
障害特性の理解とアセスメント | 3時間 | |
環境調整による強度行動障害の支援 | 3時間 | |
記録に基づく支援の評価 | 1.5時間 | |
危機対応と虐待防止 | 1時間 |
(参照:埼玉県”行動援護従事者養成研修”)
強度行動障害支援者養成研修
強度行動障害支援者養成研修には「基礎研修」と「実践研修」が存在します。
基礎研修
基礎研修では、強度行動障害を持っている方に対する適切な支援方法を学習していきます。
受講するためには、知的障害者(児)もしくは、精神障害者(児)を対象した業務に従事(予定でも可)している必要があります。
科目 | 時間 | |
講義 | 強度行動障害がある者の基本的理解 | 1.5時間 |
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 | 5時間 | |
演習 | 基本的な情報収集と記録等の共有 | 1時間 |
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解 | 3時間 | |
行動障害の背景にある特性の理解 | 1.5時間 |
実践研修
実践研修では、グループワークなどを通じて、強度行動障害を持っている方に対する実践的な技術を習得していきます。
受講するためには、知的障害者(児)もしくは、精神障害者(児)を対象した業務に従事(予定でも可)している必要があります。
科目 | 時間 | |
講義 | 強度行動障害のある者へのチーム支援 | 3時間 |
強度行動障害と生活の組み立て | 0.5時間 | |
演習 | 障害特性の理解とアセスメント | 3時間 |
環境調整による強度行動障害の支援 | 3時間 | |
記録に基づく支援の評価 | 1.5時間 | |
危機対応と虐待防止 | 1時間 |
(参照:埼玉県 ”別紙1 強度行動障害支援者養成研修カリキュラム”)
研修修了者の就業場所について
行動援護従業者養成研修を修了した方は、下記の様な職場で就業することが可能です。
- 訪問介護事業所
- 重度訪問介護事業所
それぞれ詳しく紹介していきます。
・訪問介護事業所
行動支援事業をおこなっている訪問介護事業所も珍しくありません。
訪問介護事業所では、障害を持っている利用者の自宅に訪問して、身体介護・家事援助・通院・乗降介助などの業務をおこないます。
また、事業所によっては、障害者だけでなく高齢者の介護をおこなっている場合もあります。
・重度訪問介護事業所
重度訪問介護事業所では、重度の肢体不自由・重度の知的障害・重度の精神障害などを持っている利用者の自宅に訪問して生活の支援をおこないます。
また、業務に従事するためには、行動援護従業者養成研修だけでなく、重度訪問介護従業者養成研修の修了が必須です。
・その他
以下は、行動援護従業者養成研修の修了が必須ではありませんが、持っているとメリットのある職場です。
- 障害者支援施設
- 障害者グループホーム(共同生活援助)
- 障害者デイサービス(生活介護)
- 放課後等デイサービス)
- 就労移行支援事業所
高齢者への介護だけでなく、さまざまな職種を経験していると、将来的には管理職への昇進も目指せるでしょう。
研修を修了するメリット
それでは最後に、行動援護従業者養成研修を取得するメリットを紹介していきます。
行動援護従業者養成研修を取得しておくと、以下のようなメリットがあります。
- スキルアップ
- 需要が高まる=採用されやすい
- 経験を積みキャリアップも可能
それぞれ詳しく紹介していきます。
スキルアップ
行動援護従業者養成研修で学習した知識は、さまざまな事業所で活かすことができます。
知的・精神障害を持っている人に対する介護知識は、高齢者への適切な対応にもつながります。
実務経験がない人でも受講できるため、転職の武器が欲しい人にもオススメです。
需要が高まる=採用されやすい
障害者が居宅介護を利用する件数は、年々増加しています。
そのため、高齢者だけでなく、障害者にも対応できる従業員は多くの施設から歓迎されるでしょう。
また、行動援護従業者養成研修の目的は、安全に移動するための介護知識を身に付けることです。
介護業界に限った話ではありませんが、専門的な知識を持っている人ほど採用されやすくなります。
経験を積みキャリアアップも可能
行動援護従業者養成研修を受講して、知的・精神障害を持っている人に対する介護知識を学習することで、キャリアの選択肢も広がります。
将来的に転職を考えているなら、さまざまな経験をしておいた方がいいでしょう。
まとめ
今回は、行動援護従業者養成研修についてお伝えしました。
行動援護従業者養成研修とは、知的・精神障害によって常に介護を必要としている人に対する介護知識を深めるための研修です。
適切な支援方法はもちろん、利用者とのコミュニケーション方法や、ご家族の心理状況まで学習します。
そのため、行動援護従業者養成研修で学習した内容は、さまざまな介護施設で役に立つでしょう。
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