パートやアルバイトとして働く中で気になるのが社会保険の加入条件です。なんとなく「たくさん働いたら加入しなければならない」と考えている方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、社会保険の加入条件だけでなく、社保の仕組みや加入のメリット・デメリットについても分かりやすくご紹介します。
記事でわかること
社会保険とは
まず初めに、社会保険についてご説明します。社会保険とは、健康保険、労災保険、雇用保険、介護保険、厚生年金などの総称で、その主な対象者は会社に勤める方です。
一つずつ詳しく見ていきましょう。
健康保険
健康保険とは、企業に勤める方(被保険者)とその企業(事業主)が保険料を負担し合い、被保険者及びその扶養者が病気やケガをしたときに必要な医療を受けるための保険制度です。
健康保険の加入対象者となる条件は以下の通りです。
- フルタイムの従業員(正社員等)
- 週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員(雇用形態を問わず)
- 従業員数が101人以上(※1)の企業に勤める、以下の条件を全て満たす従業員(パート・アルバイト等)
- 週の所定労働時間が20時間以上(※2)
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(※3)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(※4)
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健康保険について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
健康保険とは?保険の仕組みから保険給付の種類を簡単にご紹介!
労災保険
労災保険とは、業務中または通勤中に生じた病気やケガ、それを原因として死亡した場合に保険給付を受けることができる保険制度です。
雇用形態を問わず全ての労働者が対象であり、労災保険料は全額事業主が支払うため、労働者の保険料負担はありません。
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雇用保険
雇用保険とは、失業したり働くことが難しくなった場合や教育訓練を受ける場合に保険給付を受けることができる保険制度です。
31日以上の雇用が見込まれ、週の所定労働時間が20時間以上の労働者が加入対象者となります。1ヶ月以内の短期雇用でなく、週3日なら1日7時間以上、週4日なら1日5時間以上働く方は加入条件を満たすということです。
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介護保険
介護保険とは、介護が必要な状態となった場合に介護保険サービスを利用することができる保険制度です。
40歳以上の健康保険加入者が加入対象者です。
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厚生年金
厚生年金とは、公的年金制度の2階部分にあたるもので65歳になると老齢基礎年金(国民年金)に上乗せして老齢厚生年金を受給することができる年金制度です。
厚生年金の加入対象者は、健康保険と同じく以下の通りです。
- フルタイムの従業員(正社員等)
- 週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員(雇用形態を問わず)
- 従業員数が101人以上(※1)の企業に勤める、以下の条件を全て満たす従業員(パート・アルバイト等)
- 週の所定労働時間が20時間以上(※2)
- 所定内賃金が月額8.8万円以上(※3)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない(※4)
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厚生年金について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
国民年金と厚生年金は何が違うの?今更聞けない年金の仕組みについて解説!
健康保険、労災保険、雇用保険、介護保険、厚生年金の概要と加入条件についてそれぞれ理解できましたか?特に、パートやアルバイトの方が健康保険と厚生年金に加入する条件が複雑ですね。
次に社会保険に加入するメリットとデメリットをご紹介します。これらを頭に入れた上でもう一度加入条件を確認して、勤務時間の面でも賃金面でも、ご自身がどのくらい働けば良いのかを検討する材料にしてみてくださいね。
社会保険に加入するメリット
まずは社会保険に加入するメリットを見ていきましょう。
雇用保険加入者となることで、受給可能な手当がある
雇用保険の加入者になると、失業したとき、働くことが出来なくなってしまった場合の手当だけでなく、(再)就職やキャリアアップに向けて資格取得などを行った場合にも手当を受け取ることができます。
参考に一部の手当をご紹介します。
手当の種類 | 概要 |
基本手当 | 失業し就職活動を行う人が、年齢や被保険者期間により、離職前の賃金の50~80%の手当を一定期間受け取ることができる |
教育訓練給付金 | 厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した場合に受講費用の一部を受け取ることができる |
介護休業給付 | 家族の介護のために休業する場合に、賃金の67%を受け取ることができる |
育児休業給付金 | 1歳未満の子を養育するために休業する場合に、賃金の67%(ただし休業開始から181日目以降は50%)を受け取ることができる |
上記はあくまでも一例で、それぞれに詳細な支給条件が設定されていますので実際に受給する際は改めて詳細を確認するようにしてください。
厚生年金加入者となることで、老後に受給する年金額が増える可能性も
厚生年金加入者となり、受給資格期間を満たすことが出来れば、老齢基礎年金(国民年金)だけでなく老齢厚生年金を受給することもできるため、65歳を迎え年金を受給するようになったときに、年金額が増える可能性があります。
将来受給する年金額を少しでも増やしたいという方は厚生年金に加入することのできる環境でパートやアルバイトをすると良いかもしれません。
社会保険に加入するデメリット
次に、社会保険に加入するデメリットを見ていきましょう。
保険料が天引きされるため手取りが減る
労災保険の保険料は全額が事業主負担となるため対象ではありませんが、健康保険、雇用保険、厚生年金の加入者となる場合、保険料の支払いが必要となります。
保障が充実する分、保険料は給与から天引きされるため、手取りとして受け取る額が減ることになります。
配偶者や親などに適用されている所得控除(扶養控除)が減額もしくはなくなるかもしれない
社会保険(特に健康保険と厚生年金)に加入して一定以上の年収を稼ぐことで、配偶者や親などが適用されている場合に受けることができる一定金額の所得控除(扶養控除)等が減額もしくは受けられなくなってしまいます。そのため、社会保険に加入するためにたくさん働くことが家計にとってプラスに働くのかということをしっかり検討した方が良いでしょう。
扶養内パートの年収の壁に関する記事についてはこちらの記事をチェック!
【2023年】扶養内パートは月いくらまで働ける?103万・106万・130万・150万の壁と注意点について徹底解説!
社会保険に加入しない方法は?
社会保険に加入するメリットとデメリットをご覧いただいて、自身は社会保険に入らないようにしたいな、と考えた方もいるでしょう。
では、社会保険に加入しないようにする方法について、代表的な例をご紹介します。
月収を8.8万円(年収106万円)未満にする
従業員数が101人以上の企業で働いているパート・アルバイトの方は、月収を8.8万円、年収にして106万円未満にするように気を付けましょう。
ただし、時給や日給が高く、週の所定労働時間が20時間以下の場合と、従業員数が101人未満の企業に勤めるパート・アルバイトの方(※)は加入対象外です。
(※)2024年10月から、従業員数が51人以上の企業に勤める方も加入対象となりますので、注意が必要です。
週の所定労働時間を20時間未満にする
従業員数が101人以上の企業で働いているパート・アルバイトの方の社会保険の加入条件の1つに、「週の所定労働時間が20時間以上」であることが挙げられてます。そのため、雇用契約を結ぶ際に、1週間の労働時間が20時間を超えないように相談することが重要です。
ただし、雇用契約の際に気を付けていても、実労働時間が2ヶ月連続で週20時間以上となり、今後もその状態が続くと思われる場合は、3ヶ月目から加入者となりますので注意が必要です。
(※)2024年10月から、従業員数が51人以上の企業に勤める方も加入対象となりますので、注意が必要です。
パートやアルバイトを掛け持ちする
社会保険の加入条件は、1つの勤務先で加入条件に該当する場合に限られるため、勤務先を2つ以上に分散させることで条件に当てはまる可能性を下げることができます。
社会保険には加入したくないという方は、掛け持ちを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?今回は、社会保険の加入条件だけでなく、社保の仕組みや加入のメリット・デメリットについてご紹介しました。
パートやアルバイトとして働いている方は、今一度勤務状況を確認して、今後の働き方について考えてみる機会としてみてはいかがでしょうか。
参考
- 厚生労働省”社会保険適用拡大ガイドブック”
監修者プロフィール
取締役 二階堂 寛
大学を卒業後、証券会社を経て株式会社ベストパーソンに入社。営業職として介護保険請求代行などの介護福祉事業者を支援する業務に従事する傍ら、2002年に社会保険労務士、2017年にキャリアコンサルタントの資格を取得。現在は同社アウトソーシング事業部における責任者として介護福祉事業者が「本領を発揮できる」よう事業拡大に取り組む。
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