外国人介護人材の受入れに興味がある、という方でも概要はまだ分かっていないという方は少なくないのではないでしょうか。今回は、以下の各在留資格について詳しくご説明します。
- 在留資格「介護」
- 在留資格「特定活動」(EPA(経済連携協定))
- 在留資格「技能実習」
- 在留資格「特定技能」
それでは見ていきましょう。
記事でわかること
在留資格「介護」
在留資格「介護」は、専門的・技術的分野への外国人労働者の受入れとして平成29年9月1日に施行され、外国人留学生もしくは在留資格「技能実習」や「特定技能」の外国人が介護福祉士国家資格を取得した場合に認められる在留資格のことす。在留資格「介護」を得ることが出来れば、在留期間の制限はありません。(在留資格は要更新)それでは、この資格を得るためのルートを確認していきましょう。
在留資格「留学」ルート
まずは外国人留学生(在留資格「留学」)として入国し、介護福祉士養成校で2年以上修学し、その後介護福祉士国家試験に合格した場合、在留資格を「介護」とすることが出来るようになります。
ただし、日本介護福祉士養成施設協会が定める「外国人留学生受入れに関するガイドライン」では、介護福祉士養成校の入学者選抜に関して留意すべき点として日本語能力が次のいずれかに該当することが挙げられています。
- 日本語能力試験でレベルN2以上に合格した者
- 法務大臣により告示されている日本語教育機関で6月以上の日本語教育を受けた者であって、入学選抜を行うそれぞれの学校において日本語試験を実施し、日本語能力試験のレベルN2相当以上であることを確認した者
- 日本学生支援機構が実施する日本留学試験の日本語科目で450点中200点以上を取得した者
つまり、少し日本語が理解出来る程度ではなく、幅広い場面で日本語をある程度理解できる外国人でないと、介護福祉士養成校に入学することは難しいということになります。
在留資格「技能実習」ルート
後に説明する、在留資格「技能実習」で技能習得を行った後、介護福祉士国家試験に合格した場合に在留資格を「介護」とすることが出来るようになります。(技能実習者が介護福祉士国家資格を受験しない場合、受験して不合格だった場合に日本に滞在出来る期間は最長で5年間です)
在留資格「特定技能」ルート
後に説明する、在留資格「特定技能」として介護施設等での経験が3年以上経過した後、介護福祉士国家試験に合格した場合に在留資格を「介護」とすることが出来るようになります。(在留資格「特定技能」の外国人が介護福祉士国家資格を受験しない場合、受験して不合格だった場合に日本に滞在出来る期間は最長で通算5年間です。)
その他
介護事業者は、在留資格「介護」の外国人を、雇用してすぐに配置基準に含めることが可能です。
在留資格「特定活動」(EPA(経済連携協定))
まず、EPA(経済連携協定)とは、幅広い経済関係の強化を目指して、貿易の自由化に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定(引用:外務省「我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組」)のことで、介護の分野では、インドネシア、フィリピン、ベトナムより、介護福祉士候補者(※1)として、看護・介護分野の労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から、公的な枠組みで特例的に行うものとされています。(引用:厚生労働省「経済連携協定に基づく受入れの枠組み」)
公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)を受入れ調整機関として、在留資格「特定活動」で来日し、介護福祉士国家資格に合格した後は、在留期間に制限なく介護士として日本で働く事が可能です。(在留資格は要更新)介護福祉士の取得までには就労ルートと就学ルートが存在するため、それぞれの条件について見ていきましょう。
【就労ルート】介護施設等で就労・研修を行う
介護福祉士候補者(※1)として訪日前日本語研修を修了した後、日本語能力試験で一定のレベルに到達(※2)した後に入国し、訪日後日本語等研修を修了した後で介護施設等で就労・研修を実施。4年目に介護福祉士国家試験を受験します。合格した場合は引き続き就労することが可能ですが、不合格の場合は帰国するか、一定の条件を満たす場合に限り協定上の枠組みを超えて、滞在を1年延長し就労を続けながら国家試験を再受験することが可能です。
【就学ルート】介護福祉士養成校に通う
介護福祉士候補者(※1)として入国し、介護福祉士養成施設に2年以上通った後、介護福祉士国家試験に合格し資格登録を行うことで就労が可能となります。ただし就学ルートはフィリピン及びベトナムからの受け入れに限り対象となっているため注意が必要です。
インドネシア |
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フィリピン |
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ベトナム |
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介護福祉士候補者が国家資格に合格するための支援
2019年10月1日時点で介護福祉士候補者として日本に受け入れた人数5,063名の内、介護福祉士国家資格合格者は985名(19.5%)でした。(引用:厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」)就労しながら異国の地で国家資格合格に向けて励んでいる外国人を支援するために、以下の様な支援がなされています。
外国人介護福祉士候補者受入施設学習支援事業
受入れ施設が行う日本語学習や介護分野の専門学習、学習環境整備のための経費についての補助 | 候補者1人あたり年間23.5万円以内(定額) |
受入れ施設の研修担当者の活動に対する経費についての補助 | 1受入れ施設あたり8万円以内(定額) |
医療ケアの学習に係る経費についての補助 | 候補者1人あたり年間9.5万円以内(定額) |
外国人介護福祉士候補者学習支援事業
- 継続的な学習を支援する為、日本語や介護分野の専門知識・技術等を学ぶ集合研修
- 入国2年目以降の通信添削指導
- 介護福祉士国家試験に不合格となり帰国した者に対する模擬試験の実施等の再チャレンジ支援
その他
介護福祉士候補者の日本語能力試験のレベルがN2以上の場合は、雇用関係になってからすぐに配置基準に含めることが可能で、その他の場合は雇用関係になってから6ヶ月経過後に含めることが可能です。
在留資格「技能実習」
技能実習制度は、日本で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度のことです。(引用:出入国在留管理庁・厚生労働省 令和4年2月「技能実習制度 運用容量」)
受入れ方法には、日本の企業等が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の職員を受け入れる『企業単独型』と、事業協同組合や商工会等の非営利の管理団体が技能実習生を受入れ、傘下の企業等で技能実習を実施する『団体監理型』の2種類が存在しており、最長5年間、日本に滞在して技能実習を行うことが可能です。
技能実習生の要件
企業単独型の場合 | 団体監理型の場合 |
18歳以上 | |
制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとしている | |
同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと | |
申請者の外国にある事業所又は申請者の密接な関係を有する外国機関の事業所の常勤職員であり、且つ当該事業所から転勤又は出向する者 | 従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事経験がある、又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること |
本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること |
技能実習の流れ
※入国時の日本語能力試験のレベルはN3程度が望ましく、N4程度が要件
★技能実習評価試験(初級)受験:実技試験及び学科試験
※日本語能力試験のレベルはN3程度が要件(N3に満たない場合でも、雇用事業所で引き続き3年目まで在留することが可能)
★在留期間の更新
★技能実習評価試験(専門級)受験:実技試験
★在留期間の更新
★技能実習評価試験(上級)受験:実技試験
日本語 | 教育内容 | 時間数 | 介護導入講習 | 教育内容 | 時間数 |
総合日本語 | 100 | 介護の基本Ⅰ・Ⅱ | 6 | ||
聴解 | 20 | コミュニケーション技術 | 6 | ||
読解 | 13 | 移動の介護 | 6 | ||
文字 | 27 | 食事の介護 | 6 | ||
発音 | 7 | 排泄の介護 | 6 | ||
会話 | 27 | 衣服の着脱の介護 | 6 | ||
作文 | 6 | 入浴・身体の清潔の介護 | 6 | ||
介護の日本語 | 40 | 計 | 42 | ||
計 | 240 |
上記に加えて、「法的保護等に必要な情報」8時間と、「生活一般」に関する講習を含めて320時間程度の講習を行う。ただし、入国前講習として各科目について所定の時間数の1/2以上の時間数の講義を行った場合は、入国後講習に置いて、1/2を上限として各科目の時間数を短縮する事が出来ます。
その他
技能実習生の日本語能力試験のレベルがN2以上の場合は、雇用関係になってからすぐに配置基準に含めることが可能で、その他の場合は雇用関係になってから6ヶ月経過後に含めることが可能です。また、技能実習生の介護福祉士国家試験の受験は任意ですが、国家資格を取得すると、在留資格を「介護」に変更することが可能です。
(参考:厚生労働省 社会・援護局「技能実習「介護」における固有要件について」)
在留資格「特定技能」
在留資格「特定技能」は、深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行っても、なお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有する外国人材を受け入れる制度として、平成31年4月1日に施行されました。(引用:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて 制度の概要」)
在留資格「特定技能」は、相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人を表す「特定技能1号」と、熟練した技能を要する業務に従事する外国人を表す「特定技能2号」に分かれていますが、介護分野で受入れが可能なのは、「特定技能1号」のみとなっています。(引用:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「特定技能外国人の受入れに関する介護事業者向けガイドブック」)
受入れ要件
在留資格「特定技能1号」で受け入れる外国人の水準は以下の通りとなっています。
技能基準 | 「介護技能評価試験」に合格した者又は同等以上の水準と認められる者 |
日本語能力基準 | 国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」の合格に加え、「介護日本語評価試験」に合格した者又は同等以上の水準と認められる者 |
尚これらの試験については、利便性の観点から国外で行われることとされています。
また、従事する業務は身体介護(入浴、食事、排泄介助等)の他、これらに付随する支援業務(レクリエーションの実施や機能訓練の補助等)とし、訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象ではないため注意が必要です。
(参考:法務大臣、国家公安委員会、外務大臣、厚生労働大臣「別紙1 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」)
在留資格について
特定技能1号の外国人が在留できる期間は、通算で上限5年までとなっていて、5年間の内に在留資格の更新が必要となります。また、配偶者及び子どもに対して在留資格は付与されないため、基本的には帯同することは認められていません。
その他
介護事業者は、在留資格「特定技能1号」の外国人を雇用してすぐに、配置基準に含めることが可能です。また、介護施設等での就労期間が3年以上となり、介護福祉士国家資格を取得した場合には、在留資格を「介護」に変更することが可能です。(介護福祉士国家試験を受験しない、受験して不合格だった場合は帰国となります。)
各試験について
各在留資格について説明をしてきましたが、日本語能力試験を始めとして、複数の試験の名称が出てきました。それぞれを説明していきます。
日本語能力試験
日本語能力試験(JLPT)とは、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共催で行っている日本語を母国語としない人たちの日本語能力を測定し認定する試験です。試験問題は「言語知識(文字・語彙・文法)」、「読解」、「聴解」の3つで構成されています。また、本記事で紹介している「レベル」については下記の通りとなります。
レベル | 認定の目安 |
N1 | 『幅広い場面で使われる日本語を理解することが出来る』
【読む】
【聞く】
|
N2 | 『日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することが出来る』
【読む】
【聞く】
|
N3 | 『日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することが出来る』
【読む】
【聞く】
|
N4 | 『基本的な日本語を理解することが出来る』
【読む】
【聞く】
|
N5 | 『基本的な日本語をある程度理解することが出来る』
【読む】
【聞く】
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(出典:日本語能力試験)
技能実習評価試験
技能実習評価試験は、一般社団法人シルバーサービス振興会が実施している、外国人技能実習制度における技能修得等の程度を測るために実施される試験で、正式名称を「介護技能実習評価試験」といいます。
初級(指示の下であれば、決められた手順等に従って、基本的な介護を実践出来る)、中級(自ら介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を一定程度実践出来る)、上級(自ら介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を実践出来る)とレベルが上がっていきますが、どの級でも試験問題は「学科試験」で「身体介護業務に関する知識」、「身体介護以外の支援に関する知識」、「使用する用品等に関する知識」、「安全業務に関する知識」、「実技試験」で「身体介護業務」、「安全衛生業務」で構成されています。
(出典:介護技能実習評価試験)
国際交流基金 日本語基礎テスト
国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかを判定することを目的としています。文字と語彙(約12問)、会話と表現(約12問)、聴解(約12問)、読解(約12問)から構成されます。
(出典:国際交流基金日本語基礎テスト)
介護日本語評価試験
介護日本語評価試験は、厚生労働省が試験の作成を行い、試験の実施及び運営等は厚生労働省が補助する介護技能評価試験等実施事業者が行う試験です。試験に使用する言語は日本語とされています。介護のことば(5問)、介護の会話・声かけ(5問)、介護の文書(5問)から構成されます。
(出典:厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室「介護日本語評価試験 試験実施要領」)
まとめ
今回は、外国人介護人材について概要をご紹介しました。ここまでご覧いただき、外国人介護人材に興味を持たれた方は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が平成30年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「外国人材の受入れ環境の整備に向けた調査研究事業」において作成した「平成31年3月発行 外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」を確認し、各機関に相談してみることをオススメします。
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