ADHD(注意欠陥多動性障害)とは?特性や治療方法、配慮の仕方について解説

「発達障害」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠陥多動性障害)LD(学習障害)チック症などがあり、それぞれ特性の現れ方に違いがあります。今回は、ADHDの特性や発生頻度、治療方法などについて詳しく解説していきます。

ADHD(注意欠陥多動性障害)とは

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:注意欠陥多動性障害)とは、生まれもった脳の働き方の違いにより行動面や情緒面に特徴を持ち、日常生活が学業などに支障をきたす状態を指します。ADHDの人は注意欠如や多動症といった特性を持つため、さまざまなことにエネルギッシュに取り組むことが多いです。

一方で、周囲から「変わった人」「自分勝手」といった誤解を持たれることも少なくありません。そのため、本人や家族、周囲の人が特性に応じた日常生活や学校・職場での過ごし方を工夫し、持っている力を活かしたり困難を軽減させたりすることが大切です。

参考:政府広報オンライン『発達障害ってなんだろう?』
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト『発達障害』
参考:国立精神・神経医療研究センター NCNP病院『ADHD(注意欠如・多動症)』

ADHDの特性

ADHDの主な特性は、「集中できない(注意欠如)」「じっとしていられない(多動性)」「考えるよりも先に動く(衝動性)」の3つです。通常7歳前に特性が現れ、その状態が継続します。日常生活では、それぞれ以下のような症状が現れます。

注意欠如

活動に集中できない、気が散りやすい、ミスが多い、忘れ物や紛失が多い、整理整頓が苦手、作業の段取りが苦手、話しかけられていても聞いていないように見える

多動性・衝動性

じっとしていられない、待つことが苦手、席を離れる、座っていても手足をもじもじする、おとなしく遊ぶことが難しい、しゃべりすぎる、他人の邪魔をする

なお、発達障害の特性の現れ方は人によって違いがあり、いくつかの発達障害を併せ持つこともあります。

参考:政府広報オンライン『発達障害ってなんだろう?』
参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター『注意欠如多動性障害(ADHD)』
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト『発達障害』

ADHDの発生頻度と原因

ADHDの発生頻度は報告によって差がありますが、学齢期の小児の3~7%程度と考えられています。また、男児は女児より3~5倍多いことも知られています。

ADHDは前頭葉や線条体と呼ばれる部位のドーパミンという物質の機能障害が関係していると想定されていますが、詳しい原因はよく分かっていません。遺伝的要因や周産期の問題、環境要因などが複雑に関連して症状が現れると考えられています。なお、誤解されることも多いですが、ADHDは親のしつけや教育の問題、本人の努力不足ではありません。

参考:国立精神・神経医療研究センター NCNP病院『ADHD(注意欠如・多動症)』
参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット『ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療』

ADHDの治療方法

ADHDは生まれつきの脳機能の違いによるものであるため、根本的な治療は困難とされています。大切なのは、本人や周囲の人が特性を理解し適正な行動をとれるようにコントロールすることです。
そのためには「環境への介入」「行動への介入」「薬物療法」などを組み合わせた治療が効果的だと言われています。

環境への介入

教室の机の位置や掲示物を工夫したり、勉強や作業を短時間に区切ったりと、本人を取り巻く環境を暮らしやすいものにする。

行動への介入

好ましい行動に報酬を与え、減らしたい行動に対しては過剰な叱責をやめて報酬を与えないことで、好ましい行動を増やそうとする試みを行う。

薬物治療

メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン、リスデキサンフェタミンという薬剤を用いて症状を軽減する。

ADHDは症状をただ押さえ込むようなスタンスの治療では良い結果にはつながりません。家庭や専門家、教師などが連携し、本人とのコミュニケーションをしっかり取ることが必要だとされています。

参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット『ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療』
参考:国立精神・神経医療研究センター NCNP病院『ADHD(注意欠如・多動症)』

配慮の仕方

ADHDへの配慮の仕方としては、障害特性を理解すること、そして叱責したり否定的な言葉を使ったりして押さえ込むのではなく、増やしたい行動や減らしたい行動を整理し、うまく褒めながらよりよい行動を導いていくことがポイントとなります。

たとえば、幼児期・学童期には、勉強するときには遊び道具を片付けテレビを消す、時間を短めに区切る、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくといったように、課題に集中しやすい環境を整えることが大切です。好きなものと関連付けて興味関心が持てるように学習活動に導入するのも良いでしょう。傷ついた体験に寄り添ったり好ましい行動へのこまめな評価をしたりと、心理面へのケアも必要です。

また、ADHDの人は暗黙の了解や曖昧な表現を理解するのが苦手な場合が多いです。そのため、善悪やルールを分かりやすい言葉ではっきり教えることも大切です。注意したり叱ったりするだけではどうすればいいか分からないので、具体的かつ簡潔に伝えます。

さらに、行動を切り替えるのが苦手であったり、意に反することにかんしゃくを起こしたりしやすいのもADHDの特性のひとつです。少しの時間待つことで混乱から抜け出せることもあるので、温かく見守ることも大切と言えます。

ひとくちにADHDと言っても、性格や年齢などによっても特性の現れ方は異なります。苦手なことや困難を感じていることも人それぞれであるため、一人一人の状態やニーズに応じた配慮をすることが求められます。

参考:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター『注意欠如多動性障害(ADHD)がある子どもの合理的配慮』
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト『発達障害』
参考:厚生労働省 精神・発達障害者しごとサポーター養成講座『発達障害の特性(代表例)』
参考:政府広報オンライン『発達障害ってなんだろう?』

まとめ

ADHDとは生まれつきの脳の働き方の違いにより、日常生活や学業・仕事などでさまざまな困りごとを抱えている状態です。周囲から誤解されることも多いですが、注意欠如や多動といった特性は本人の努力不足や親のしつけの問題ではありません。ADHDの特性を持つ人が、社会に適応する力を身に付け自分らしく生活を送るために、発達障害への理解を深め自分にできることを考えましょう。