発達障害の「吃音(きつおん)」とは?症状や配慮の仕方を学ぼう

みなさんは発達障害のひとつである「吃音(きつおん)」を知っていますか?発達障害というと一括りにされがちですが、実はASDやADHD、LD、チック症、吃音とさまざまな種類がありそれぞれ特性の現れ方に違いがあります。大切なのは正しく特性を理解し配慮することです。今回は、吃音について主な特性や発生頻度、治療方法を学んでいきましょう。

吃音とは

吃音とは発達障害のひとつで、滑らかに話すことができない状態を指します。一般的に「どもる」とも言われる話し方の障害で、音を繰り返したりひき伸ばしたり、なかなか話し出せないなどの症状があります。

吃音は、幼児期から現れる発達性吃音と青年以降(10代後半~)に現れる獲得性吃音の2種類に分けられます。吃音のうち9割は発達性吃音と言われており、2語文以上の複雑な発話を開始する幼児期に出はじめます。発達性吃音の多くの場合は自然に症状が軽くなるか消えていきますが、中には成人まで続く人もいます。

子どもの場合、軽く繰り返すくらいであれば自分の症状に気付かないことが多いです。しかし症状が進み周囲から指摘される場面が多くなると、言葉の出づらさを意識するようになります。その結果、話す前に不安を感じるようになったり恥ずかしく思ったりすることも少なくありません。成長の過程でうまく話せない経験が増えるとそのような心理は強くなります。

参考:政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」
参考:国立障害者リハビリテーションセンター 国立障害者リハビリテーションセンター研究所「吃音について」

吃音の症状

WHOでは、以下のように滑らか・リズミカルに話せない状態を吃音と定義しています。

  • 音や単語を繰り返す(例:わ、わ、わたし)
  • 単語の一部を引き延ばす(例:わーーたしは、)
  • 言葉が出ず間があいてしまう(例:・・・っわたしは、)

発達性吃音の多くは軽い繰り返しから始まります。7~8割は自然に治ると言われていますが、残りの2~3割は徐々に症状が固定化していきます。症状が続いたり強くなったりすると、話すことに嫌悪や恐怖を感じさらに言葉が出にくくなります(古典的学習)。

また、話しているときにまばたきをしたり顔をしかめたり、手や足で拍子をとるといった「随伴症状」が出ることもあります。これは言葉を出そうとして口や舌、体全体に力が入ってしまうことが原因とされています。

参考:国立障害者リハビリテーションセンター 国立障害者リハビリテーションセンター研究所「吃音について」
参考:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「各障害の定義」
参考:日本医療研究開発機構(AMED)研究 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「吃音(どもり)って何?―多くの皆様に知っていただきたいこと―」

吃音の発生頻度と原因

吃音の発症率は幼児期で8%前後、有病率(全人口における吃音のある人の確率)は0.8%前後と言われています。国や言語による発症率の差はほとんどありません。男女比は2:1~4:1で男性に多く見られます。

吃音の原因はまだ明らかになっていません。発達性吃音の場合は本人の体質や発達的要因、環境要因などがお互いに影響し合って発症すると言われています。獲得性吃音の場合は神経学的疾患や脳損傷、心的ストレスなどによって発症します。本人の精神的な弱さや親の育て方によるものではありません。

参考:国立障害者リハビリテーションセンター 国立障害者リハビリテーションセンター研究所「吃音について」
参考:国立障害者リハビリテーションセンター研究所 感覚機能系障害研究部「吃音について」

吃音の治療方法

吃音の治療方法としては、発達障害者支援センターや病院で言語聴覚士による指導を受けるのが一般的です。幼児期の場合は「滑らかに話す」能力がよりよく発達するよう、環境調節や発話モデリング、発話誘導を行います。学齢期になると滑らかに話せる時期が減ってくるため、楽に話せるテクニックを指導に取り入れます。話すことに恐怖や不安を感じる子どももいるため、「滑らかに話す」ことだけではなく、スムーズな意思伝達をすることも同時に目指します。

言語聴覚療法の分野では、話し方の習得中である幼児期から専門家のサポートを受けるのが望ましいと言われています。しかし幼児期の吃音は自然に治っていくことも多いので、1〜2年以上続いたり悪くなったりしなければしばらく様子を見ることもあります。ただし、吃音は稀に他の発達障害(ASD、ADHD)や知的障害などが併発していることもあり、その場合は早期に療法を開始した方が良いとされています。

成人の場合は、楽に話せるテクニックを学ぶとともに、二次的な行動を除く取り組みや恐怖や不安などの感情についても指導を加えていきます。具体的には流暢性形成技法や吃音緩和法、機器を使った訓練、認知行動療法などを組み合わせて取り入れていきます。

参考:日本医療研究開発機構(AMED)研究 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「吃音(どもり)って何?―多くの皆様に知っていただきたいこと―」
参考:国立障害者リハビリテーションセンター研究所 感覚機能系障害研究部「吃音の指導(治療)」

吃音の配慮の仕方

吃音はできるだけ滑らかに(楽に)話す時間を増やすと良いとされています。そのため、本人が話しやすい環境を作ることが大切です。たとえば、発達段階の子どもの場合は、話す量や速さを子どもに合わせ、簡単な言葉・短い文で話しかけます。吃音の症状が出ても、特に指摘せずゆったりした姿勢で聞いてあげることも支援につながるでしょう。

また、吃音は療養をしても治るまで時間がかかることもあります。そのため「吃音を治す」という観点だけでなく、吃音があってもよりよく生活できるようにサポートをすることも必要です。特に大人の場合は吃音によって複雑な感情を抱えていることが多いです。そのため、障害の特性を理解し見守ることで自己肯定感の向上、そして生活の質の向上につなげることが大切です。

参考:日本医療研究開発機構(AMED)研究 「発達性吃音の最新治療法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」研究班「吃音(どもり)って何?―多くの皆様に知っていただきたいこと―」

まとめ

吃音とは、同じ音を繰り返したり引き伸ばしたりと滑らかに話せない状態を指します。ぱっと見ただけでは障害があることが分かりにくいため、誤解されたりからかわれたりすることも少なくありません。吃音を持つ人が社会に適応する力を身に付け、自分らしく生活できるように、正しい知識を身に付けておきましょう。