チック症について知ろう!症状や原因、治療方法を解説

みなさんはチック症という言葉を聞いたことがありますか?チック症とはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)などを含む発達障害のひとつ。本人の意思に反して声が出たり身体が動いたりしてしまうのが主な症状です。今回は、チック症の特性や原因、治療方法などについて学んでいきましょう。

チック症とは

チック症とは、目的のない同じような運動を素早く不規則に繰り返してしまう障害です。身体が動いてしまう「運動チック」と声が出てしまう「音声チック」があり、いずれも本人の意思とは関係なく行ってしまいます。

チック症は就学前の5~6歳に単純運動チックで発症することが多いですが、1年以内に消失することがほとんどです。慢性化した場合は10~12歳頃に症状が最も激しくなります。多くの人は成人までに消失すると言われていますが、大人になってから症状が続くこともあります。運動チックと音声チックの両方が1年以上強く続き、日常生活に支障を来たす場合は「トゥレット症」と呼ばれます。

なお、チック症状は心理状態によって影響を受けることがありますが、本人の努力や親の育て方に問題があって起こるものではありません。

参考:国立精神・神経医療研究センター NCNP病院「チック」
参考:MSDマニュアル家庭版「小児と生年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」
参考:厚生労働省 知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス「発達障害」

チック症の症状

チック症の症状には運動チックと音声チックがあり、それぞれ単純、複雑に分けられます。

運動チック 単純 まばたき、首を振る、顔をしかめる、肩をすくめる
複雑 ジャンプする、倒れこむ、叩く、自分の身体の一部を触る
音声チック 単純 声を出す、鼻を鳴らす、咳ばらいをする
複雑 その場ではふさわしくないことを言う

チックの症状が出る前には、その動作をしたいという強い衝動が生じ、意図せずに動作が起こります。数秒から数分であれば意識的に抑えられる場合もありますが、容易なことではありません。衝動は最終的に抑えられなくなります。そして症状が出現すると一時的にすっきりすることがあります。

症状の頻度や種類は時間とともに変化し、1時間に数回起きたかと思えば数カ月間ほとんど現れないこともあります。また、特に精神的ストレスが強い場合には症状が出やすく、勉強・仕事に集中しているときや不慣れな場所にいるときは減少することがあります。

チックが見られる小児においては、ADHD(注意欠陥・多動性障害)や強迫症/強迫性障害を合併することも多いです。睡眠障害やLD(学習障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、などと併存することもあります。成人の場合はうつ病や双極性障害、物質乱用などが見られることもあります。

参考:国立精神・神経医療研究センター NCNP病院「チック」
参考:MSDマニュアル家庭版「小児と生年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」
参考:NPO法人日本トゥレット協会「トゥレット症候群とは」

チック症の発生頻度と原因

チック症の重症度はさまざまですが、5人に1人の小児にチックが見られると言われています。女児に比べて男児は3倍多く見られます。ただ多くの症状は軽いもので、ほとんどの場合病気とはみなされません。チック症の中で最も重度なトゥレット症は、小児100人のうち1人未満です。そして小児で見られるチックは成人までにほとんど消失しますが、約1%の小児では成人期まで続きます。

チック症の原因は分かっていませんが、遺伝要因と環境要因が両方関係していると考えられています。大脳基底核という運動の調整に関わる部位を含めた脳内回路の異常、ド-パミン系やセロトニン系などの神経伝達物質の異常も関係しているとも言われています。またレンサ球菌感染症が関係していると考えている研究者もいますが、現段階でははっきりしていません。

参考:MSDマニュアル家庭版「小児と生年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」
参考:NPO法人日本トゥレット協会「トゥレット症候群とは」

チック症の配慮の仕方

チックの症状は本人の努力や親の教育によるものではなく、わざと声を出したり身体を動かしたりしているわけではありません。「やめなさい」と指摘するとかえってチックを気にさせたり自信を失わせたりする可能性があるため、普通に接しましょう。

心理状態によって影響を受けることがあるので、本人や周囲の人が障害の特徴を理解し安心できる環境を作ることも大切です。症状が出やすい場面を観察して対応の参考にすると良いでしょう。ただし特別扱いされていると感じると自信を失う可能性があるため、支援の程度にも気を配ることが必要です。

参考:NPO法人日本トゥレット協会「トゥレット症候群とは」
参考:厚生労働省 平成30年度障害者総合福祉推進事業「吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気付く「チェックリスト」活用マニュアル」

まとめ

チック症とは、本人の意思に反して目的もなく声を出したり身体を動かしたりしてしまう障害です。遺伝要因と環境要因が関係していると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。本人の意識により症状を抑えることは難しいため、親や教師など周囲の人が障害の特徴を理解することが大切です。不安やストレスにより症状が強くなりやすいと言われているため、本人が安心できる環境を作りましょう。