認知症は根本的な治療が難しい病気ですが、早期に発見できれば進行を食い止めることも可能です。認知症の診断を受けることで、本人や家族の負担軽減にもつながります。では、認知症を早く発見するためにはどんな症状に気を付ければ良いのでしょうか?この記事では、認知症の初期症状や加齢による物忘れとの違いについて紹介していきます。
記事でわかること
そもそも認知症とは?
認知症とは、さまざまな原因により脳の神経細胞が死んだり働きが悪くなったりして、社会生活や対人関係に支障が出ている状態を指します。特定の病名ではなく、医学的にはまだ直接的な原因が明らかになっていません。そのため、根本的な治療は難しく症状を軽くしたり進行を遅らせたりする対症療法が中心に行われます。
最近では、日常生活に支障をきたすほどではない軽度の症状を「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」と診断し、早期発見・早期対応につなげる動きも出てきました。
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「認知症」
認知症の種類
認知症にはいくつか種類があり、種類によって原因や症状が異なります。65歳以上の高齢者に多いのは以下の4種類です。
認知症の種類 | 割合 | 原因 | 症状 |
アルツハイマー型認知症 | 67.6% | アミロイドβというタンパク質がたまり神経細胞が壊れる。 | 昔のことはよく覚えているが最近のことを忘れてしまう。進行すると時間や場所の間隔がなくなる。 |
脳血管性認知症 | 19.5% | 脳出血や脳梗塞など。 | 歩行障害や言語障害、意欲低下など。障害が起こった脳の部位によって症状が異なる。 |
レビー小体型認知症 | 4.3% | 脳内にレビー小体というタンパク質がたまり神経細胞が壊れる。 | 幻視や手足の震え、自律神経症状など。歩幅が小さくなり転びやすくなる。 |
前頭側頭葉型認知症 | 1.0% | 脳の前頭葉や側頭葉が委縮する。 | 感情の抑制がきかない、ルールを守れない、言葉が出てこないなど。 |
また、65歳未満で発症する認知症は「若年性認知症」と呼ばれます。症状は高齢者の認知症と同じですが、働き盛りの世代であるため仕事や子育て、親の介護など生活への影響が大きくなるケースも多いです。
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「認知症」
参考:政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」
認知症の患者数
日本では、高齢化の進行に伴い認知症の患者数も増加しています。内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者における2012年の認知症患者数は462万人(高齢者の約7人に1人)であったのに対し、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)になると推計されています。
出展元:内閣府「平成29年版高齢社会白書(概要版) 高齢者の健康・福祉」
また、認知症だけでなく日常生活に支障をきたすほどではないMCI(軽度認知障害)も存在しています。MCIの人がすべて認知症になるわけではありませんが、10~15%が認知症に移行するとされているため早期の対処が重要です。
参考:厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス「認知症」
認知症の症状
認知症の症状は「中核症状」と「周辺症状(行動・心理症状)」の2つに大別されます。中核症状は神経細胞の破壊による認知機能の低下を指し、中核症状に本人の性格や環境が加わって起こる二次的な症状を「周辺症状(行動・心理症状)」と言います。
出典元:政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」
中核症状
中核症状は脳の神経細胞が破壊されることにより起こるもので、自分の周りに起こっている現実を正しく認識できなくなるという特徴があります。具体的には以下のような症状が見られます。
- 記憶障害(新しいことを覚えられない)
- 見当識障害(時間や場所が分からなくなる)
- 理解・判断力の障害(些細な変化でも混乱する、指示を理解できない)
- 遂行機能の障害(仕事や家事がうまく進まない)
- 失語、失算(言葉が出なくなる、計算ができなくなる)
- 感情表現の変化(思いがけない感情を示す)
周辺症状
脳機能低下を直接反映する中核症状に対し、周辺症状は周囲の環境や本人の性格などの要因が絡み合って起こるものです。人によって症状は異なりますが、具体例としては以下のものがあります。
- 睡眠障害(不眠、昼夜逆転、過眠など)
- 不安・抑うつ
- 理妄想(事実と異なることを主張する)
- 幻覚
- 徘徊
- 暴言・暴力
- 拒否・拒絶(介護を拒否することがある)
- 異食(食べ物以外を口にする)
認知症の初期症状
認知症の初期症状を知っておくと、家族や身近な人、自分自身が認知症になった際の早期発見につながります。ここでは、公益社団法人認知症の人と家族の会が作成した「早期発見の目安」を紹介します。
※以下、公益社団法人認知症の人と家族の会「家族がつくった 認知症 早期発見の目安」より引用
日常の暮らしの中で、認知症ではないかと思われる言動を、「家族の会」の会員の経験からまとめたものです。医学的な診断基準ではありませんが、暮らしの中での目安として参考にしてください。
いくつか思い当たることがあれば、一応専門家に相談してみることがよいでしょう。
もの忘れがひどい |
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判断・理解力が衰える |
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時間・場所がわからない |
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人柄が変わる |
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不安感が強い |
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意欲がなくなる |
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加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い
認知症はもの忘れから始まることが多いため、「歳のせいだろう」と考えてしまうことも少なくありません。しかし、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れには違いがあります。
政府広報オンラインでは、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違いについて以下のように紹介されています。
加齢によるもの忘れ | 認知症によるもの忘れ | |
体験したこと | 朝ごはんのメニューを忘れる(一部を忘れる) | 朝ご飯を食べたことを忘れている(全てを忘れる) |
もの忘れの自覚 | ある | ない |
探し物に対して | (自分で)努力して見つけようとする | 誰かが盗ったなどと、他人のせいにすることがある |
日常生活への支障 | ない | ある |
症状の進行 | 極めて徐々にしか進行しない | 進行する |
引用元:政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン」
経験の一部を忘れるのは加齢によるものですが、経験したこと自体を忘れている場合は認知症のサインかもしれません。もの忘れが日常生活に支障をきたしている場合や忘れっぽくなったことを本人が自覚できていない場合も認知症の可能性があります。
ただし上記はあくまで一例であり、実際に違いを区別するのは簡単ではありません。これがすべてではないので、断定せず「認知症のサインかもしれない」と理解しておきましょう。
自身や家族が認知症かもと思ったら
自分自身や家族が認知症かもしれないと思ったら、1人で悩まず早めに専門家に相談しましょう。認知症は早めの対処により症状の進行を遅らせることができ、本人だけでなく家族の負担軽減にもつながります。
主な相談先
- かかりつけの医師
- 医療機関の「もの忘れ外来」
下記のウェブサイトから検索できます。
公益社団法人 認知症の人と家族の会「全国もの忘れ外来一覧」 - 地域包括支援センター
下記のウェブサイトから検索できます。
e-65.net(イー・ローゴネット)「認知症・地域支援マップ」
まとめ
認知症は早期発見・早期対処により、進行を遅らせたり重篤化を防いだりすることが可能です。しかし、加齢によるもの忘れとの区別が難しいため、「歳のせいだろう」「性格によるもの」と考え対応が遅れてしまうケースも少なくありません。認知症は誰しもなる可能性があるため、初期症状を知って家族や自分自身の異変に気付けるようにしておきましょう。
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