近年、介護報酬改定による「ADL維持加算」の導入に伴い、「BI(バーセルインデックス)」が注目を集めています。BI(バーセルインデックス)とは、要介護者や病気を持つ人の日常生活動作(ADL)を簡易的に評価するもの。今回は、BI(バーセルインデックス)の意味やメリット・デメリット、評価項目について紹介していきます。
記事でわかること
BI(バーセルインデックス)とは?
BI(バーセルインデックス)とは、食事や入浴、着替えなどの日常生活の能力を評価する指標です。ここではBI(バーセルインデックス)の意味や目的について詳しく説明します。
BI(バーセルインデックス)の意味
BI(バーセルインデックス)は、米国の医師Mahoneyと理学療法士Barthelによって作られた、日常生活動作(ADL)を評価する指標のひとつです。
食事や移乗、トイレなどの全10項目で構成され、検査や訓練を通してできたことを15点、10点、5点、0点の4段階で評価します。一般的には100点満点中85点以上が自立、60点で部分自立、40点で大部分介護、0点が全介助とされています。
現在BI(バーセルインデックス)は世界的に普及しており、日本でも客観性の高いADL評価方法として注目を集めています。令和3年度介護報酬改定では「ADL維持加算」の対象サービスが拡充したため、今後はさらに重要度が増していくでしょう。
BI(バーセルインデックス)の目的
BI(バーセルインデックス)は、病院や介護現場で患者・利用者の日常生活動作(ADL)を評価するために用いられています。
介護サービスやリハビリによって、日常生活に必要な動作をどれくらいできるようになったのかを知ることはとても重要です。しかし介護職員や本人、家族の主観だけで正しい判断はできません。そこで役立つのがBI(バーセルインデックス)による数値での評価です。誰でも短時間で評価でき数値やパーセンテージで表せるため、医療従事者はもちろん利用者や家族も「どの程度回復したか」を簡単に把握できます。
参考:厚生労働省『令和3年度介護報酬改定の主な事項について』
参考:厚生労働省『バーセルインデックス(BI)の評価方法について』
BI(バーセルインデックス)のメリット
ここではBI(バーセルインデックス)を用いることによるメリットを説明していきます。
採点が簡易的で記録しやすい
BI(バーセルインデックス)のメリットは、評価方法が簡易的で誰でも短時間でできることです。評価項目が10項目、評価区分も2~4段階とシンプルなので、評価のために多くの時間を割く必要がありません。点数も5点刻みなので合計点数の算出も容易です。
自立度が分かりやすい
つ目のメリットは、利用者の自立度が一目で分かることです。日常生活動作の「できる/できない」という判断は言葉だけでは難しく、人によってイメージするものが異なります。その点BI(バーセルインデックス)なら基準が決まっているため、スムーズに共通の認識を持つことができます。また、結果が100点満点で出るので医療従事者や介護職員はもちろん、利用者本人や家族も現状を把握しやすいです。
世界共通の評価法である
BI(バーセルインデックス)はアメリカで開発されたもので、初めて利用されたのは1955年。その後論文で報告されたことにより世界中に広まりました。世界共通の評価方法であるため、日本以外の国でも評価内容が通じるというメリットもあります。
BI(バーセルインデックス)のデメリット
続いて、BI(バーセルインデックス)のデメリットについても紹介します。
評価内容が大まか
BI(バーセルインデックス)は簡易的に評価できる一方で、採点の粒度が粗いためより細かい日常動作の評価まではできません。評価区分が2~4段階にしか分かれていないため、動作によっては評価に迷ったり評価者によって差が出たりする可能性もあります。自立度を分かりやすく示す指標ではありますが、場合によってはFIMやカッツインデックスなど他のADL評価方法と組み合わせることも必要です。
時系列での変化を反映しにくい
先程も説明したように、BI(バーセルインデックス)の評価区分は2~4段階にしか分かれておらず、介助量の細かい変化までは記録できません。そのため、介助が必要な状態から自立するまでの過程を正確に反映することが難しいというデメリットがあります。場合によってはいきなり点数が上がってしまう可能性もあります。
必ずしも日常生活に直結するとは限らない
BI(バーセルインデックス)はあらかじめ決められた動作について評価するものであり、実際に利用者が行っている動作と一致するとは限りません。できることがあっても項目にないものは評価から外れてしまいます。また、金銭管理や家事動作などの複雑な動作は含まれないため、100点満点であっても1人で生活できるという評価には直結しません。BI(バーセルインデックス)だけでなく、利用者の動作や介助の様子を記録し情報を共有することも必要です。
BI(バーセルインデックス)の評価項目と採点基準
最後に、BI(バーセルインデックス)の評価項目と採点基準について紹介します。以下は、厚生労働省で公開されているBI(バーセルインデックス)の評価書です。それぞれの項目について基準に従いながら0~15点を付け、得点が高いほど自立度が高いという評価になります。
ADL維持向上等体制加算に係る評価書
バーセルインデックス(Barthel Index 機能的評価)
点数 | 質問内容 | 得点 | ||
1 | 食事 | 10 | 自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える | |
5 | 部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう) | |||
0 | 全介助 | |||
2 | 車椅子からベッドへの移動 | 15 | 自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(非行自立も含む) | |
10 | 軽度の部分介助または監視を要する | |||
5 | 座ることは可能であるがほぼ全介助 | |||
0 | 全介助または不可能 | |||
3 | 整容 | 5 | 自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り) | |
0 | 部分介助または不可能 | |||
4 | トイレ動作 | 10 | 自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) | |
5 | 部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する | |||
0 | 全介助または不可能 | |||
5 | 入浴 | 5 | 自立 | |
0 | 部分介助または不可能 | |||
6 | 歩行 | 15 | 45分以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず | |
10 | 45分以上の介助歩行、歩行器の使用を含む | |||
5 | 歩行不能の場合、車椅子にて45分以上の操作可能 | |||
0 | 上記以外 | |||
7 | 階段昇降 | 10 | 自立、手すりなどの使用の有無は問わない | |
5 | 介助または監視を要する | |||
0 | 不能 | |||
8 | 着替え | 10 | 自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む | |
5 | 部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える | |||
0 | 上記以外 | |||
9 | 排便コントロール | 10 | 失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能 | |
5 | ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む | |||
0 | 上記以外 | |||
10 | 排尿コントロール | 10 | 失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 | |
5 | ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む | |||
0 | 上記以外 | |||
合計得点(100点中) |
引用元:厚生労働省『日常生活機能評価 評価の手引き』
まとめ
BI(バーセルインデックス)は食事やトイレなどの日常生活動作(ADL)を評価する方法で、「ADL維持等加算」の評価方法としても利用されています。採点が簡易的かつ自立度が分かりやすいため、医療従事者や介護職員だけでなく利用者本人や家族が現状を把握する際にも役立つでしょう。サービスの質向上や科学的介護の実現に向け、ぜひBI(バーセルインデックス)についての理解を深めておきましょう。
もっと詳しく知りたい人は厚生労働省で公開されている動画(バーセルインデックス(BI)の評価方法について)も参考にしてください。
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