就労定着支援とは?サービス内容や対象者、就労移行支援との違いを解説

2018年より障害福祉サービスの一環として「就労定着支援」が始まりました。この支援では、一般就労に移行した障害のある方が長く働き続けられるよう生活面でのサポートを行います。今回はそんな就労定着支援について、サービス内容や対象者、他の支援との違いを解説します。

就労定着支援とは

就労定着支援とは、2018年に始まった障害福祉サービスのひとつです。就労移行支援などを通して一般就労に移行した障害者に対し、就労に伴う生活面の課題に対応するためのサポートを行います。では、就労定着支援では具体的にどんな人がどんな支援を受けられるのでしょうか?

対象者

就労定着支援の対象者は、障害移行支援や就労継続支援、生活介護、自立訓練といった障害福祉サービスを通して一般就労に移行した障害のある方です。利用期間は就労開始6ヵ月後から最大3年間で、その後は障害者就業・生活支援センターなど地域の支援機関へ移行します。就労定着支援事業所は就労移行支援事業所と併設されていることが多く、そのまま同じ事業所に支援を依頼するのが一般的です。

支援内容

就労定着支援では、障害のある方が長く働き続けられるよう日常生活や社会生活上の課題に対応するための支援を行います。

障害のある方は、一般就労後に生活面でさまざまな課題に直面することも少なくありません。たとえば、環境の変化で体調が崩れ遅刻や欠席が増えたり、居眠りをしてしまったり、身だしなみが崩れてしまうことがあります。せっかく給料を貰ってもお金の管理ができず生活に支障が出てしまったり、何かあったときの対処法が分からず1人で抱え込んでしまったりするケースもあります。こうした困りごとへのサポートを行い、長く働き続けられるようにするのが就労定着支援です。

具体的には、各事業所の担当者が職場や自宅などへ訪問したり障害者本人が来所したりして、月1回以上の相談を行います。体調や生活リズム、家計の管理など、就労に伴い発生している生活面の課題を把握し、就業先企業の担当者や障害福祉サービス事業者、医療機関などと連絡を取りながら必要な支援を提供します。

就労定着支援
引用:独立行政法人福祉医療機構 WAM NET「就労定着支援事業所」

参考:厚生労働省障害福祉サービスの内容

利用料金

就労定着支援の利用料金は就労移行支援など他の障害福祉サービスと同様に、1割が自己負担となります。ただし世帯の所得に応じて負担上限月額が決められており、それを超えることはありません。

自分がどの区分に該当するか知りたい方は、お住まいの自治体窓口に確認してみましょう。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(※2)未満)

※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く(※3)

9,300円
一般2 上記以外 37,200円

引用:厚生労働省障害者の利用者負担

  1. 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象
  2. 収入が概ね600万円以下の世帯が対象
  3. 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となる

参考:厚生労働省障害者の利用負担

支援を受けられる場所

就業定着支援は、就労定着支援事業所として指定を受けた事業所で受けられます。現状では、一定以上の就職者を出している就労移行支援事業所や就労継続支援事業所、生活介護事業所、自立訓練事業所に併設していることが多いです。就労移行支援等から一般就労に移行していることが前提であるため、利用した事業所にそのまま就労定着支援を依頼するのが一般的です。

ただし、就業定着支援は2018年に創設された比較的新しいサービスであることから、すべての事業所が指定を受けているわけではありません。これから支援体制を整えていく事業所も多いため、今後支援の拠点が拡大していくと予想されます。

具体的にどの事業所で就労定着支援を受けられるかについては、その事業所や自治体窓口に問い合わせて確認しましょう。

参考:独立行政法人福祉医療機構 WAMNET就労定着支援事業所

他の就労支援サービスとの違い

障害者の就労を支援するサービスには、就労移行支援や就労継続支援A型・B型などもあります。ここでは、それらのサービスと就労定着支援の違いについて解説します。

就労移行支援

就労移行支援とは、障害や難病があって一般就労が見込まれる方に対して就職するためのサポートを行う福祉サービスです。生産活動や職場体験などの機会を提供することにより、適性に合った仕事を見つけたり働くために必要な知識・能力を身に付けるための訓練を行ったりします。要するに、就労するまでのサポートをするのが就労移行支援、就労した後のサポートをするのが就労定着支援ということです。

就労移行支援について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。
就労移行支援とは?利用できる人や支援内容、利用料について解説

就労継続支援A型

就労継続支援A型は、障害や難病により一般就労が困難な方に対して一定の支援がある職場での仕事を提供するサービスです。就労継続支援事業所と雇用契約を結び、給料を貰いながら仕事に取り組みます。仕事内容は一般企業とそれほど変わりませんが、障害や難病を持つ方が対象であるため就労時間は1日4~8時間と比較的短く、それに伴い給料も一般企業と比べると低いことが多いです。働くために必要な知識・能力を磨き、就労移行支援や一般就労に移行する方もいます。

就労継続支援A型について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。
就労継続支援A型事業所の利用を検討する方向け!~対象者や作業内容、もらえる賃金について詳しく解説~ 就労継続支援A型事業所の利用を検討する方向け!~対象者や作業内容、もらえる賃金について詳しく解説~

就労継続支援B型

就労継続支援B型は、障害や難病があって一般企業への就職や雇用契約に基づく就労が難しい方に対して、働く場所を提供するための福祉サービスです。A型は事業所と雇用契約を結んで働くのに対し、B型は雇用契約を結びません。それに伴いB型は給料ではなく、自分が行った作業量に対する「工賃」という形で報酬が支払われます。工賃は最低賃金を下回ることが多いですが、週1日、1日など個々の体力や体調に合わせて働けるのはB型の大きなメリットです。就労継続支援B型を通じて知識や能力が高まった方は、A型や一般就労への移行を目指します。

就労継続支援B型について詳しく知りたい方はこちらも参考にしてください。
就労継続支援B型事業所の利用を検討する方向け!~対象者や作業内容、もらえる給料について詳しく解説~

就労定着支援を利用するには

就労定着支援の利用を希望する場合は、市町村の障害福祉窓口に申請を行います。手続きの具体的な流れは居住している自治体によって異なります。就労移行支援等を利用していることが前提となっているため、まずは事業所でスタッフに聞いてみると良いでしょう。

まとめ

障害者の一般就労が増加している中、定着率向上を目的として新たにスタートしたのが、一般就労後の生活面をサポートする就労定着支援です。「いざ働いてみたけど仕事がうまくいかない」「働くことによって生活の困りごとが増えた」という方は、自分や家族だけで抱え込まずぜひ就労定着支援の利用を検討しましょう。