似ているサービス名称の違いとは?~居宅介護と居宅介護支援、訪問介護、訪問入浴について~

自宅で生活する障害者、高齢者等が受けられる介護サービスには、どのようなものがあるのでしょうか。
主に「居宅介護」「居宅介護支援」「訪問介護」「訪問入浴介護」等がありますが、これらサービスは名称が似ていて違いがよく分からないという声が少なくありません。

この記事では、以下の観点から居宅介護、居宅介護支援、訪問介護・訪問入浴介護の違いを解説します。

  • 居宅介護、居宅介護支援、訪問介護・訪問入浴介護のサービス内容の違い
  • 居宅介護、居宅介護支援、訪問介護・訪問入浴介護の対象者
  • 居宅介護、居宅介護支援、訪問介護・訪問入浴介護に従事する職種と仕事上のポイント

居宅介護とは

居宅介護とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、障害者が自宅での生活を充実させるために受ける介護サービスです。

居宅介護の対象者

居宅介護の対象は、18歳以上の身体障害・精神障害・知的障害者で、障害支援区分1以上と認定された方及び18歳未満のこれに相当する障害児です。
但し、障害支援区分が2以上の方でも一定の条件(参考1)を満たす場合には対象となります。一定の条件について気になる方は、厚生労働省の障害福祉サービスについてをご覧ください。

居宅介護のサービス内容

利用者は、身体介護、家事援助、その他の生活全般の援助を受けることができます。具体的には次のような内容です(参考2)。

種類 内容
身体介護 食事姿勢の確保、おかずを刻む、食事の介助
浴槽の清掃、湯張り、衣類の着脱、洗身・洗髪の介助
おむつ交換、尿瓶の使用、排尿・排便の介助
寝間着から普段着への衣類着脱 等
家事援助 食事の調理、配膳、後片付け
利用者の衣服の洗濯、乾燥、アイロンがけ、収納
利用者の居室内清掃、台所掃除、ゴミ出し
通院等介助 医療機関の受診や行政窓口を訪問するにあたり、外出する際の移動等の介助、窓口での手続き補助等
その他 生活等に関する相談や助言、その他生活全般にわたる援助

居宅介護における職種

居宅介護に従事する介護職は、次の有資格者です。

  • 介護福祉士
  • 介護福祉士実務者研修修了者
  • (居宅)介護職員初任者研修修了者 等
原則として、無資格者は業務に携わることができません。

居宅介護での仕事上のポイント

対象となる障害者は、知的・身体・精神の障害のいずれか、または重複して障害を抱えているため、介護職は障害に関する理解を深め、特徴に合わせた対応をすることが重要です。

また、利用者のお宅を訪問する仕事内容であることから、利用者とその家族のプライバシーを尊重するとともに、信頼関係を構築することが大切だといえます。

居宅介護支援とは

居宅介護支援とは、介護保険法に基づくサービスの一つで、介護支援専門員(ケアマネジャー)が利用者の心身の状況や置かれている環境に応じて介護サービスを利用できるよう、ケアプランを立ててくれるサービスです。

居宅介護支援の対象者

自宅で生活する高齢者等で、要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。
要支援1・2の人は地域包括支援センターの介護支援専門員が作成を担当します。

居宅介護支援のサービス内容

居宅介護支援では、次のような流れでサービスが提供されます。

種類 内容
要介護認定と担当者の選定 介護認定によって要介護1〜5の認定を受けた高齢者には、担当の介護支援専門員が選定される。
自宅訪問 担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)が高齢者の自宅等を訪問し、利用者とその家族と話し合いながら、必要な介護サービスについて検討する。
ケアプランの作成 利用者・家族の意向を踏まえ、必要なサービスの種類・計画表をまとめた書式(ケアプラン)を作成して、利用者・家族に渡す。
連絡調整 プランに基づいて適切なサービスが提供されるように、事業者や関係機関との連絡・調整を行う。
モニタリング見直し ケアプランは「一度作成して終わり」ではなく、利用者の心身の変化、生活状況の変化に合わせて、ケアプラン内容を随時見直す。

居宅介護支援における職種

居宅介護支援において重要な役割を担うのは、介護支援専門員(ケアマネジャー)です。
利用者の意向を踏まえたケアプランを作成するとともに、利用者と事業者との橋渡し役も果たします。
要介護高齢者にとっては、生活上のお困りごとを何でも相談できる、心強い専門職であるといえます。

居宅介護支援での仕事上のポイント

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者・家族のお話を伺いながら、的確にニーズをキャッチしなければなりません。そのためには、相手の立場になって話を聴き、寄り添う姿勢をもって支援に当たることが求められます。

また、ケアプラン作成後のモニタリング・見直しの作業では、高齢者宅を訪問してヒアリングを行い、適切な介護サービスの提供を受けているかチェックします。

専門知識を持つことは当然ですが、利用者の話を親身に聴き、素人でも分かりやすいように説明するといったコミュニケーション能力が必要な職種だといえます。

訪問介護とは

訪問介護とは、介護保険法に基づく介護サービスの一つです。
自宅で生活する高齢者等に対して、介護福祉士やホームヘルパーが自宅に赴き、身体介護や生活援助等を行います。

訪問介護の対象者

要介護1〜5の認定を受けた人が対象となります。
要支援1・2の人は「介護予防訪問介護」を利用することができますが、介護予防が目的のサービスであるため、支援内容は生活援助が中心となります。

訪問介護のサービス内容

利用者は、身体介護と生活援助等のサービスを受けることができます。具体的には次のとおりです。

種類 内容
身体介護 食事の支度、食事の介助
自宅の浴槽を使った全身浴または部分浴の介助
おむつ交換、排尿・排便の介助
体位変換、床ずれ予防のための姿勢交換 等
生活援助 居宅の掃除、ゴミ出し
衣類の洗濯、洗濯物を干す、取り込んでたたむ
食材の買い物代行、調理、配膳、後片付け 等

但し、次のような内容は、サービスの対象とはなりません。

  • 利用者以外の者へのサービス(同居家族の食事の支度、部屋の掃除、衣類の洗濯、子どもの面倒を見る)
  • 医療行為(インスリン注射、経管栄養、点滴等の医療行為)
  • 生活に差し支えのないもの(庭の草むしり、ペットの散歩等)

訪問介護における職種

従事することができる介護職員は、次の有資格者に限られています。

  • 介護福祉士
  • 介護福祉士実務者研修修了者
  • 介護職員初任者研修修了者 等
原則として、無資格者は業務に携わることができません。

訪問介護での仕事上のポイント

利用者のお宅を訪問する仕事内容であることから、利用者とその家族のプライバシーを守るとともに、その家のルール・やり方を尊重することが重要です。

ただ単にサービスを提供するだけではなく、利用者とその家族とコミュニケーションを図りながら、ご家庭の特徴を知るとともに、信頼関係を築くことも大切です。

また、会話の糸口から利用者の心身の変化や、生活状況の変化を察知するようにします。何か変わったことがあれば、担当の介護支援専門員に報告すると良いでしょう。

訪問入浴とは

訪問入浴では、自宅の浴槽では入浴するのが難しい高齢者等のお宅を訪問し、事業者があらかじめ準備しておいた特殊浴槽を使って入浴の介護を行います。

主に寝たきりの高齢者の身体を支え、安全に浴槽に入れるのは一人では難しいため、複数名の介護職員等がチームで作業する体制(後述)を整えたうえで、サービスが提供されます。

訪問入浴の対象者

要介護1〜5の認定を受けた人で、医師から入浴を許可されている方が対象です。
要支援1〜2の人は「介護予防訪問入浴介護」を利用することができます。

訪問介護のサービス内容

訪問入浴介護の主なサービス内容は次のとおりです。

場面 内容
入浴前 体調の確認、体温や血圧の測定等のバイタルチェック、衣類を脱がせる
入浴中 全身浴、部分浴、清拭(入浴せずに布巾などで身体を拭く)
入浴後 衣類を着せる、体調の確認

所要時間は準備から片付けまでで、約1時間程度です。

訪問入浴における職種

訪問入浴介護に必要な人員は、原則として、看護師または准看護師1人と、介護職員2人以上です。(看護師+介護職員+訪問入浴オペレーターの3人で行う場合もあり)次のような役割を分担します。

職種 役割
看護師・准看護師 入浴前後の体調確認、バイタルチェック、介護職員の補助、一部の医療行為(湿布を貼る等)
介護職員 入浴中の介助
訪問入浴オペレーター(介護職員) 利用者宅に到着するまでの運転、特殊浴槽の組み立てと移動・設置、後片付け、事業所到着までの運転 等

訪問入浴での仕事上のポイント

入浴中、利用者は裸になるため、本人の羞恥心やプライバシーに配慮したサービス提供が重要です。

そのうえで、入浴を楽しみにしている利用者にとっては、身体を清潔にしたり、リラックスしたりできる機会であるため、できる限りその気持ちを尊重するようにしましょう。

その他、入浴前後に体調確認を行うだけでなく、入浴中に利用者の身体に異常がないか、さり気なくチェックを行います。
利用者の変化にいち早く気づけるような体制を取り、病気に罹患していないか、アザや切り傷等がないか等、早期発見に繋げましょう。

まとめ

ここまで、居宅介護、居宅介護支援と訪問介護・訪問入浴介護の違いを説明してきました。ポイントを整理すると次のとおりになります。

居宅介護 障害者総合支援法
対象 知的、身体、精神障害者で障害支援区分1以上と認定された人
内容 身体介護、家事援助等
職種(資格) 介護福祉士、介護福祉士実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者 等
居宅介護支援 介護保険法
対象 自宅で生活する高齢者等、要介護1以上と認定された人
内容 ケアプランの作成、事業者との連絡・調整、モニタリング、見直し
職種(資格) 介護支援専門員(ケアマネジャー)
訪問介護・入浴 介護保険法
対象 自宅で生活する高齢者等で、要介護1以上と認定された人
内容 身体介護、生活援助等
職種(資格) 看護師および准看護師、訪問入浴オペレーター(訪問入浴の場合)と介護職員

この記事で紹介したサービスは、自宅で生活する障害者・高齢者を対象としており、その人らしい暮らしが継続できるよう支援してくれるサービスです。

日本では、利用者が住み慣れた自宅・地域で生活が続けられるように、居宅サービスの充実化に力を入れています。

一人ひとりに合わせた質の高いサービスの提供をとおして、自分らしい生活が継続できるような支援と、その実現に繋がる地域づくりが求められています。

参考文献