介護が必要になったときに!介護保険を利用してどんなサービスを受けることができるの?

親族に介護が必要になったときに、介護保険制度を利用するためにまずは何から始めたら良いのか分からない方は多いと思います。

「そもそも介護保険制度の仕組みは?」
「介護保険制度を利用するために何をすればいいの?」
「介護保険制度を利用して、実際にどんなサービスを受けることができるの?」

といった疑問について、この記事で詳しく解説していきます。

介護保険とは

介護保険とは、2000年に施行された介護保険法に基づく社会保険制度で、介護が必要な被保険者(高齢者等)とその家族を社会全体で支える仕組みです。

40歳以上の人が被保険者となり、保険者である市区町村に対して毎月保険料を支払います。介護が必要な状態になれば、判定された要介護区分(後述)に応じて、いくつかのサービスを組み合わせて利用することができるようになります。

介護保険の仕組みについて、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
介護保険とは?保険の仕組みからサービス利用までの流れ、介護保険料や自己負担分について簡単にご紹介!

介護保険制度を利用するためには

いざ介護が必要になったときに介護保険制度サービスを利用するためには、まず要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定とは

要介護認定とは、介護保険制度の利用を希望している方に対してどのくらいサービスを提供する必要があるのかということを判断するもので、客観的で公平な判定を行うため、コンピュータによる一次判定と、保健・医療・福祉の学識経験者が行う二次判定の二段階で後述する要介護区分を決定します。

要介護認定を受けて実際に介護保険サービスを利用するまでの流れは次の通りです。(参考1)。

STEP.1
要介護認定を市町村に申請
介護が必要な方もしくはそのご家族が介護保険証を持ってお住まいの市町村窓口へ申請します。
STEP.2
市町村による訪問調査(1次判定)
介護サービスがどの程度必要なのかを判定するために申請者宅で訪問調査が行われます。
STEP.3
介護認定審査会による要介護区分の判定(2次判定)
1次判定での調査結果と主治医の意見書を添えて、市町村が介護認定審査会へ書類を送ります。ここで、保健・医療・福祉の学識経験者が最終的な判定結果を出します。
STEP.4
結果の通知
最終的な判定結果が申請者に送られます。この結果(要介護区分)によって受けることができる介護保険サービスの種類・量が異なります。
STEP.5
介護支援専門員(ケアマネジャー)によるケアプラン作成
担当となる介護支援専門員(ケアマネジャー) に、利用を希望する介護保険サービスの種類や量を相談し、ケアプランを作成します。
STEP.6
介護事業所と契約
介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成したケアプランをもとに、実際に利用する介護事業所を選択し契約します。
STEP.7
介護サービスの利用
契約した介護事業所の利用を開始。サービスを受けてかかる費用は、介護保険が適用され原則1割(所得に応じて2~3割)が利用者負担となります。

要介護区分

要介護認定の結果で、対象者は要介護区分という8段階に分類されます。区分別に要介護の程度を見ていきましょう。

区分 要介護の程度
非該当 基本的な日常生活動作(食事・排泄・入浴)、手段的日常生活動作(買い物・金銭管理・服薬管理・電話の利用)ともに一人で行うことが可能。
要支援1 基本的な日常生活動作は一人で行うことが可能ですが、手段的日常生活動作のどれか1つで、見守りや一部介助が必要な状態。
要支援2 要支援1に加え、下肢筋力の低下によって歩行・立ち上がりに不安がある状態であり、今後の日常生活において介護が必要になる恐れのある状態。
要介護1 要支援状態よりも手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、買い物、金銭管理、服薬管理のどれか1つで、部分的な介助が必要となる状態です。また、下肢筋力の低下により、歩行・立ち上がりに一部介助が必要。
要介護2 日常生活動作において部分的な介護が必要となり、かつ、手段的日常生活動作では毎日介助が必要になる状態。また、認知症の症状が見られ、日常生活にトラブルが起こる恐れがある状態も含む。
要介護3 認知機能が低下し、寝返り、トイレ、歯磨き、衣類の着脱が一人では難しく、全面的な介助が必要な状態。また、自立歩行が困難で、杖や歩行器、車いすを利用している状態を含む。
要介護4 要介護3以上に、生活上のあらゆる場面での介助が必要です。両足での立位が困難で、移動には車いすが必要となり、常時の介助がなくては日常生活を送ることが難しい状態。また、認知機能の低下が著しく、やっと会話が行える状態。
要介護5 重度の認知症や麻痺があることによって、日常生活動作の全てにおいて常時の介助がなくては生活することが困難な状態。外出の頻度は著しく減り、ほぼ寝たきりの状態で、意思の伝達が困難。

要支援よりも要介護、要介護の中でも数字が大きくなればなるほど介護がより必要であると判断されるということになります。

介護保険制度を利用して受けることができるサービス

要介護認定で出された要介護区分によって、担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)と相談の上利用する介護保険サービスを決定することになりますが、実際にどのようなサービスがあるのかを詳しく見ていきましょう。

サービス 訪問介護
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、身体介助(食事・入浴・排泄)、生活援助(調理、掃除、洗濯、ゴミ出し等)を行います。
サービス 訪問入浴
要介護区分 要支援1~要介護5
サービス内容 自宅で生活する利用者のもとへサービス提供事業者(看護師と介護士)が訪問し、事業者が準備した特殊浴槽を使って利用者の入浴介護を行います。
サービス 訪問看護
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 看護師が利用者の自宅を訪問し、療養上の世話や診察の補助を行います。
サービス 訪問リハビリ
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持や回復、日常生活の自立を支援するために、リハビリテーションを行います。
サービス デイサービス
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 自宅で生活する利用者が、事業所において食事、入浴、レクリエーション等のサービスを日帰りで受けるサービスで、自宅からデイサービスまでの送迎は事業所側が行うことが一般的です。
サービス ショートステイ
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 自宅で生活する利用者が、何らかの事情で自宅での介護を受けられなくなった場合に、その期間だけ老人ホームや介護施設に短期間入所するサービスです。1日単位で利用することができ、食事・入浴・排泄の介助を受けることができます。普段は自宅で親族等が介護をしている場合に、その介護者の身心を休める目的でも利用されます。
サービス 特別養護老人ホーム
要介護区分 原則要介護3~要介護5
内容 自宅での生活が困難になった利用者で、要介護3以上の人が入所でき、食事、入浴、排泄の介護が受けられる施設です。原則として終身にわたって利用することができ、この施設で最期を迎える方も少なくありません。
サービス 介護老人保健施設
要介護区分 要介護1~要介護5
内容 要介護1以上の利用者が入所し、介護サービスを受けながら、自宅復帰のためにリハビリテーションを行います。病院に併設されていることが多く、医療体制が整っている点に特徴があります。
サービス 介護療養型医療施設
要介護区分 要介護1~要介護5
内容 長期療養と常時介護が必要な利用者が入所する施設です。医療的処置、リハビリテーション、介護を受けられますが、上記の特別養護老人ホームや介護老人保健施設に比べると、より医療環境が整っています。
サービス 有料老人ホーム
要介護区分 自立~要介護5
内容 主に民間企業が設立し運営している高齢者向けの住宅・施設で、種類が3つあります。

  • 介護付き有料老人ホーム(主に介護を必要とする利用者が入所し、食事、入浴、排泄の介助や、生活上の支援を受けて日常を送る施設)
  • 住宅型有料老人ホーム(自立〜軽度の要介護者が入所し、食事の提供や、掃除、洗濯などの生活上のサポートを受けられる施設です。必要に応じて、外部の介護サービスを利用します。)
  • 健康型有料老人ホーム(自立した生活のできる利用者が入所し、充実した余暇時間を過ごすための設備やサービス、例えばレクリエーション、趣味のイベント、サークル活動などが充実しています。ただし、介護が必要な状態になった場合は、転居や退去しなければなりません。)
サービス グループホーム
要介護区分 要支援2~要介護5
内容 認知症を患う要介護高齢者等が入所する小規模(5〜9人の少人数)の福祉施設です。利用者は基本的に個室で生活を送り、食事の時間などは共同スペースで過ごします。家庭的な雰囲気があり、適度に介護職や他の利用者と関わりを持ちながら生活を送る点に特徴があります。
サービス 小規模多機能型居宅介護
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 利用者の希望に応じて、「通い」「泊まり」「訪問」のサービスを提供します。少々分かりづらいサービスなので、例を示します。
利用例

自宅で生活するAさんは、B園の「通い」サービスを利用しています。今日は自宅に帰っても妻が不在のため、夜は「泊まり」を選択して、B園に宿泊して介護サービスを受けました。別日には、B園の職員がAさん宅を「訪問」し、介護サービスの提供を受けました。

このように、自分の希望に合わせてサービスを選択できる点が特徴です。どのサービスを利用したとしても、B園の職員が提供者であるため、顔なじみの関係のなかで介護を受けられ、利用者や家族にとっては、大変便利なサービスであるといえます。

サービス 福祉用具の貸与・販売
要介護区分 車椅子、排泄補助用具を利用出来る要介護区分:要介護2~要介護5
杖、手すり、歩行器を利用出来る要介護区分: 要支援1~要介護5
内容 杖や車椅子、排泄補助用具などの福祉用具をレンタルできる、または安価で購入できるサービスです。利用者の費用負担は、レンタル・購入にかかった費用の1割(所得によって2〜3割)となります。
サービス 住宅改修
要介護区分 要支援1~要介護5
内容 利用者の自宅での生活を便利にするため、廊下やお風呂場に手すりを取り付けたり、玄関の段差を解消するためにスロープを設置するなどの住宅改修を行うことができます。住宅改修の上限額は、自己負担分を含めて20万円までです。自分で改修を行ったり、勝手に業者と契約して改修を行わせた場合には介護保険は適用されないため注意が必要です。

まとめ

どの介護サービスがご自身や利用する親族の方に合うのか、どのくらい利用することができるのか分からない場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談してみましょう。利用者のニーズと経済負担を踏まえたうえで、適切な助言・計画立案をしてくれますよ。

介護支援専門員(ケアマネジャー)を探したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
参考 ケアマネは介護生活のパートナー|仕事内容・役割やケアマネの選び方ケアスル介護

参考文献