人はみな年を取り、やがて最期の時を迎えます。
誰しも「自分らしい最期を迎えたい」という希望を持っているでしょう。最近では「終活」という言葉があるように、自分らしい最期を迎えるための準備を進める人もいるようです。
「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」「できるだけ家族に負担をかけたくない」など、自分らしい最期を迎えるためには、ターミナルケア(終末期医療)について理解が必要です。
この記事では、ターミナルケアの対象者、ターミナルケアの内容、ターミナルケアを実施する施設、ターミナルケアの意義、緩和ケアとの違いをご紹介します。
記事でわかること
ターミナルケアとは
ターミナルケアとは終末期に提供される医療のことで、病気などが原因で余命がわずかになった方に対して行う医療・看護、介護的ケアを指します。
残された時間を少しでも心穏やかに過ごせるように、無理な延命治療は行わず、痛みや不安、ストレスを緩和するとともに、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=自分らしい生活の質、人生の質)を保つことが目的です。
公益社団法人全日本病院協会の「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~」では、終末期を次のように定義しています。
- 医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
- 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
- 患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること
ターミナルケアの対象者
ターミナルケアの対象者は、治療の効果・完治が期待できず、余命数ヶ月と判断される患者です。主に次のような疾患を抱えている例です。
- 末期がん
- 認知症
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー症などの難病
- 老衰 など
ただし、患者やその家族が延命や、治療のための医療行為の継続を希望した場合は、ターミナルケアは実施されません。あくまでも、患者・家族が希望した場合のみ、ターミナルケアが提供されます。
ターミナルケアの内容
ターミナルケアの内容は、次の3つに大別できます。
身体面に対するケア
主に、疾患に伴う身体的な痛みや辛さを緩和する投薬です。痛みの管理(ペインマネジメント)を優先しながら日常を過ごすためのケアを受けます。
その他、身体を清潔に保つ清拭(せいしき)や、身だしなみを整える整容(せいよう)、床ずれの防止、食事ができなくなった場合の経管栄養などがあります。
精神面に対するケア
患者の死に対する不安や恐怖、ストレスなどを取り除き、心穏やかに過ごしてもらうためのケアです。
医療従事者は、患者のポジティブ・ネガティブのいずれの感情にも寄り添い、話を聴き、少しでも死の不安や恐怖が緩和されるように支援します。
また、患者が家族や友人と共に過ごしたり、趣味を楽しめるように環境を整えたりすることも、精神面のケアの中に含まれます。
社会面に対するケア
ターミナルケアが長く続けば、医療費負担の問題や、関係機関とのやり取り・手続きなどが、本人・家族にとっては大きな負担となります。
特に、費用の問題で不安や心配を軽減するため、高額療養費制度や、その他の福祉制度を活用できるよう情報提供、制度利用のための支援を行います。
医療ソーシャルワーカーや、介護支援専門員(ケアマネジャー)などのスタッフも連携して、家族の話や悩みを聞いたうえで、支援制度の紹介、情報提供などを行います。
ターミナルケアを実施する施設
ターミナルケアを行う場所は主に医療機関、介護施設、自宅の3つです。
それぞれの特徴を説明するとともに、メリット・デメリットを紹介します。
医療機関
日本緩和医療学会の「もっと知ってください 緩和ケア.net」によれば、がん診療連携拠点病院等は全国436施設、緩和ケア病棟がある施設は全国399施設あります。
このような専門科のある医療機関では、外来・入院ともにターミナルケアを受けることができます。前述のとおり、手術や薬で治療するというよりは、心身の痛み・辛さを緩和することを優先してケアが提供されます。
メリット
病院やホスピスで過ごす場合には、患者が急変したとしても、医師・看護師等の医療従事者が常駐しているので安心です。また、家族にかかる身体的負担も少ないというのがメリットです。
デメリット
ターミナルケアの内容や、治療期間の長期化によっては、費用負担が大きくなってしまうデメリットがあります。また、患者の容態が急変した場合、家族がすぐに駆け付けられるとは限らない点も注意が必要でしょう。
介護施設
最近では、特別養護老人ホームや介護老人保健施設で最期を迎えるケースも増えてきました。なかには、有料老人ホームなどの民間の福祉施設でも、看取りの体制を整えてターミナルケアを提供しているところがあります。
メリット
介護施設でターミナルケアを受ける場合、介護職・看護師が24時間体制でケアが提供されるため、患者や家族としては安心です。
デメリット
前述の病院と同様に、経済的負担が大きくなりやすく、急変時にすぐに駆け付けられない恐れがある点がデメリットだといえます。
自宅
自宅でもターミナルケアを受けることは可能です。
その場合には、あらかじめ介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談し、訪問診療で医師の定期的な往診を受けたり、訪問看護や訪問介護、訪問入浴等の介護保険サービスを活用するなどのケアの体制を整えましょう。
メリット
自宅でのターミナルケアは、患者・家族にとって次のメリットがあります。
- 住み慣れた自宅で、残りの時間を過ごすことができる
- 最期を迎えるまでの時間を家族と一緒に過ごすことができる
デメリット
家族が介護・医療的管理の役割を担うため次のようなデメリットがあります。
- 患者中心の生活を送るため、時間的制約・身体的負担がある
- 患者の状態によっては、身体介護だけではなく痰の吸引などの医療的ケアを行うため、事前練習が必要
- 患者がいつ急変するか分からないため、心身の緊張が続く
このように、自宅でのターミナルケアでは、家族の身体的・精神的な負担だけではなく、時間的・経済的負担がかかってしまうデメリットがあります。
少しでも負担を軽減できるように、介護保険サービスを効果的に利用して下さい。
介護保険サービスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
介護が必要になったときに!介護保険を利用してどんなサービスを受けることができるの?
ターミナルケアと緩和ケアの違い
ターミナルケアと同じような意味で使われることがある「緩和ケア」というケア方法も存在しますが、厳密にいえば次のような違いがあります。
ターミナルケア | 緩和ケア | |
主な対象 | ガン患者以外も含む | ガンを患う方 |
ケアの時期 | 疾患の治癒が望めない時期~終末期 | ガンと診断されたとき |
目的 | 延命治療をせず、人間らしい死を迎えること | 苦痛を和らげること |
緩和ケアの主な対象者はがん患者とその家族であり、一方のターミナルケアはもっと広い範囲を対象とします。
ターミナルケアは、病気の治癒が望めないと判断された時期から、人生の最期を迎えるまでの間、その人らしく過ごしていくことを目的としています。
緩和ケアについて詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
緩和ケアについて考える~ターミナルケアとの違いとは?詳しく解説!
まとめ
ターミナルケアでは、患者の身体や心の様々な苦痛を取り除き、QOLの向上に努め、安らかな最期を迎えられるようなケアを提供します。
いつ、何が起きてもおかしくない不確実な世の中です。自分自身が、またはご家族の万が一の時に備え、ターミナルケアについて理解しておくことが大切です。
そして、終末期を迎えたときのために、医療の選択について事前に意思表示しておく「リビングウィル」も、重要だといえます。
自分らしい最期を迎えるために、または大切な人に自分らしい最期を迎えてもらうために、ターミナルケアについて理解を深めましょう。
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