児童発達支援とは?対象者やサービス内容、利用までの流れを徹底解説!

児童発達支援とは、障害のある未就学児を対象とした通所型の障害福祉サービスです。障害のある子どもやその家族に対して、日常生活での困りごとや不安を軽減することを目的に支援を行います。今回は、そんな児童発達支援のサービス内容や対象者、利用方法について紹介します。

児童発達支援とは

児童発達支援とは、主に未就学児を対象とした集団・個別療育を行う障害者通所支援のひとつです。以前は障害種別に分かれていましたが、障害のある子どもが身近な地域で適切な支援を受けられるよう2012年の児童福祉法改正により施設が一元化されました。サービス内容は保育園や幼稚園のように毎日通うものから習い事のように週に何回か通うものまで、施設や子どもの状態によってさまざまです。

児童発達支援では、ひとりひとりの状態や課題に合わせて日常生活における基本的な動作のトレーニングや知識・技能の習得、集団生活への適応訓練などを行います。これらの支援により、本人や家族が抱える生活での困りごとを軽減し生活しやすくなることが期待されます。

参考:厚生労働省児童発達支援ガイドライン

児童発達支援を受けられる場所

児童発達支援を受けられる施設には、児童発達支援センターと児童発達支援事業所の2種類があります。どちらも通所型で障害のある子どもやその家族に対して支援を行うことは共通しています。

児童発達支援センター

児童発達支援センターは、各地域における児童発達支援の中核的な役割を担う施設です。障害のある子どもに対して、自立するために必要な技能・知識のトレーニングや集団生活に順応するためのコミュニケーショントレーニングのほか、地域支援として保育所や幼稚園などとの連携・支援を行います。厚生労働省によると、令和元年時点で35%の市町村に児童発達支援センターが1箇所以上設置されています。施設によっては放課後等デイサービスを併設していることもあります。

児童発達支援事業所

児童発達支援事業所は、児童発達支援センターと同様に障害のある子どもや家族に対して支援を行う施設です。児童発達支援センターよりも数が多く、身近で通いやすい施設の拡大を図るために設置されています。

参考:厚生労働省障害児通所支援の在り方に関する検討会

児童発達支援の対象者

児童発達支援の対象者は、障害があって個別療育や集団療育が必要と認められた未就学児の子どもです。

厚生労働省では次のように定義されています。

身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童(発達障害児を含む) ※手帳の有無は問わず、児童相談所、市町村保健センター、医師等により療育の必要性が認められた児童も対象
引用:厚生労働省児童福祉法の一部改正の概要について

具体的には、乳幼児健診や児童相談所などで療育の必要性が認められた場合や、保育園や幼稚園に通っている中で専門的な療育・訓練が必要と認められた場合などがあります。障害者手帳や療育手帳は必須ではなく、療育の必要性が認められ「受給者証」の発行を受ければ利用できます。なお、就学児童の場合は放課後等デイサービスを利用できます。

参考:独立行政法人福祉医療機構 WAMNET児童発達支援センター
参考:厚生労働省児童福祉法の一部改正の概要について

児童発達支援のサービス内容

児童発達支援のサービス内容は厚生労働省のガイドラインにより定められており、大きく分けて発達支援家族支援地域支援があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

発達支援

発達支援とは、障害のある子どもが将来日常生活や社会生活を円滑に営めるように、心身や認知、言語などの側面から支援を行うことです。たとえば、睡眠や食事、排泄などの基本的な生活リズムを身に付けられるように、障害の特性や身体機能に配慮しながらトレーニングを行います。空間や時間、数などの概念形成、コミュニケーション能力の向上も狙いのひとつです。個別支援計画に応じて、聴能訓練や言語聴覚訓練など専門的な機能訓練を行うこともあります。

また、障害の有無にかかわらず全ての子どもが共に成長することを目指し、可能な限り地域の保育や教育を受けられるように支援をしたり同年代の子どもとの仲間作りを促したりする「移行支援」も行います。

家族支援

家族支援は、障害のある子どもを育てる親が安心して育児を行えるようにさまざまな物理的・心理的支援を行うことです。具体的には、専門家に対して子育てでの困りごとを相談したり子どもとの関わり方のアドバイスを受けたりすることができます。必要に応じて、子どもを一時的に預かることで家族が休息をとる「レスパイト」を利用することも可能です。

地域支援

地域支援は、地域の保育園や医療機関、児童相談所などの関係機関と連携を取ることで、障害のある子どもが地域社会への参加できるように支援を行うことです。主に児童発達支援センターが行っており、地域全体の子育て支援力を高めるためのネットワークを強化する狙いが含まれています。

参考:厚生労働省児童発達支援ガイドライン

児童発達支援を提供してくれる人

児童発達支援のサービスを提供するのは、児童発達支援管理責任者保育士リハビリ関連職などです。厚生労働省では、児童発達支援センターと児童発達支援事業所についてそれぞれ以下のように人員基準を定めています。

児童発達支援センター
  • 児童発達支援管理責任者(1名以上)
  • 栄養士(1名以上)
  • 調理師(1名以上)
  • 児童指導員または保育士(子の数に応じて)
  • その他(リハビリ関連職など)
  • 委託医(1人以上)
児童発達支援事業所
  • 児童発達支援管理責任者(1名以上)
  • 児童指導員または保育士(子の数に応じて)
  • その他(リハビリ関連職など)

実際に子どもの療育などを行うのは、児童支援員や保育士です。機能訓練が必要な場合には、言語聴覚士や作業療法士などのリハビリ専門職が支援を行います。また、重症心身障害のある子どもに対しては、医療的ケアを行えるよう人員基準を超えて看護師や保育士などを配置することもあります。

参考:厚生労働省児童発達支援センターの最低基準及び指定基準(案)の概要
参考:厚生労働省児童発達支援ガイドライン

児童発達支援の利用料金

児童発達支援の利用料金は子どもの年齢や世帯所得によって異なります。ここでは、0~2歳児(年少未満)と3歳児(年少の学年)~就学前までに分けて説明します。

0~2歳児(年少未満)

児童発達支援は障害児通所給付費の対象となるため、受給者証を取得することで利用料の1割負担でサービスを受けられます(9割は公費負担)。具体的な金額は施設によって異なりますが、自己負担は1回あたり1,000円前後であることが多いです。

なお、自己負担は世帯所得に応じて上限額が決められており、ひと月に利用した回数にかかわらずそれ以上の負担は生じません。ただし施設によってはイベント代やおやつ代など別途料金がかかることもあります。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯 0円
一般1
 
市町村民税課税世帯(所得割28万円(注)未満 通所施設、ホームヘルプ利用の場合 4,600円
入所施設利用の場合 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

(注)収入が概ね890万円以下の世帯が対象となります。
引用:厚生労働省障害児の利用者負担

この他、食費や医療費の減免、自治体独自の助成金を受けられる場合もあります。詳しくはお住まいの市町村窓口にお問い合わせください。

3歳児(年少の学年)~就学前

2019年10月より、3~5歳の児童発達支援等の利⽤者負担が無償化されました。対象となる期間は「満3歳になって初めての4月から3年間」です。幼稚園や保育園などと併用する場合でも無償化の対象となります。ただし、医療費や食費等は対象外です。

詳しくは厚生労働省の「就学前の障害児の発達支援の 無償化について」をご覧ください。

児童発達支援を利用するまでの流れ

児童発達支援を利用するには、お住まいの市町村窓口に申請を行う必要があります。市町村の職員が調査し、必要性が認められれば受給者証を取得でき、利用開始となります。具体的には、以下のような流れで行います。

  1. 児童発達支援の利用相談をする(市町村窓口や障害児相談支援事業所など)
  2. 施設の見学をする
  3. 自治体に受給者証の申請をする
  4. 審査結果を待つ
  5. 受給者証を取得する
  6. 施設と利用手続きを行う
  7. 利用開始

受給者証取得の審査には、利用計画案や医師の意見書、所得を証明する書類などが必要です。審査結果はすぐに出るとは限らず、1~2ヶ月かかることもあります。

なお、手続きの詳細や必要書類は自治体によって異なるため、市町村の福祉相談窓口に問い合わせをして事前に確認しておきましょう。

まとめ

児童発達支援は、障害のある未就学児に対して身近な地域での支援を行うサービスです。未就学の時期に日常生活や社会生活に必要なスキルを習得することで、将来的な負担の軽減が期待されます。また、特性に合った療育を受けることは、家族の負担や不安を軽くすることにもつながります。子育ての困りごとや不安を抱えている方は、ぜひ児童発達支援の利用を検討してみてはいかがでしょうか?