認知症の方との接し方~認知症を理解し対応について学ぶ~

認知症の方との接し方~認知症を理解し対応について学ぶ~

家族と話す中で、最近もの忘れが多くなったな、もしかして認知症?と感じたことはありませんか?

認知症の家族を介護する中で、どうしてもイライラしてしまったり、問題行動を起こしてしまう家族に対して怒ってしまって罪悪感を感じているということはありませんか?

今回の記事では、認知症の初期症状について、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い、認知症の方に対する接し方について、詳しく分かりやすく解説します。

認知症について

認知症の方への対応や接し方を見ていく前に、まずは認知症の種類についてご紹介します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の原因として最も多い症例で、長い年月をかけて脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮が起こります。
軽度のもの忘れから徐々に進行することが多く、昔のことはよく覚えているのに、最近のことは忘れてしまうという特徴があります。

  • 話しを理解することが難しくなる
  • 物の名前が分からなくなる
  • 視力はあるのに見えた情報を形として把握することが難しくなる
  • 手足の動きに問題はないものの
  • 今まで出来ていた動作を行うことが出来なくなる

などの症状が出ることもあります。

血管性認知症

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害により、脳細胞に十分な血液や酸素が送られずに、脳細胞が死んでしまい認知症を引き起こします。

高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因とされていて、脳血管障害を起こした場所により症状は異なるものの、障害が発生する度に段階的に進行するのが特徴です。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内にたまったレビー小体という特殊なタンパク質により脳の神経細胞が破壊され起こる認知症です。

  • 現実には存在しないものがありあいと見える
  • 手足が震えたり筋肉が堅くなり歩きにくくなる
  • 歩幅が小刻みになり転びやすくなる
  • 睡眠中に夢を見て叫んだりする

などの症状が出ることもあります。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉で神経細胞が減少して脳が萎縮する病気です。

  • 感情の抑制が効かなくなる
  • 社会のルールを守れなくなる
  • 同じ行動パターンを繰り返すようになる
  • 周囲の刺激に反応してしまう
  • 言葉の障害が目立つようになる

などの症状が出ることもあります。

認知症の症状や種類についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
いまさら聞けない!認知症の症状や種類、介護サービス等を解説

加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い

年を重ねると、「あれ」や「これ」といったように物の名前が思い出せなかったり、「昨日の昼ご飯は・・・」と思い出すのに時間がかかったりすることがあります。

これが、ただの加齢によるものなのか、認知症によるものなのかを判断するのは難しいですが、政府広報オンラインによると、次のように定義されていますので参考にしてみましょう。

加齢によるもの忘れ 認知症によるもの忘れ
体験の一部を忘れる 体験全体を忘れる
ヒントを与えられると思い出せる ヒントを与えられても思い出せない
時間や場所などの見当がつく 時間や場所の見当がつかない
日常生活に支障はない 日常生活に支障がある
もの忘れを自覚している もの忘れを自覚していない

出典:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本

認知症の初期症状について

加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの代表例を紹介しましたが、日常の生活シーンに合わせて更に詳しくご紹介します。

もの忘れがある

  • 電話していた相手の名前を忘れてしまう
  • 同じことを何度も言う、問う、する
  • 片付けることを忘れてしまい、いつも何かを探している
  • 財布や通帳などの貴重品の在処を忘れ「盗まれた」と言う

判断力・理解力が落ちる

  • 新しいことが覚えられない
  • 話の辻褄が合わない
  • テレビ番組や映画のストーリーの内容が理解できなくなった
  • 料理や片付け、計算などのミスが増えた

時間や場所が分からなくなる

  • 約束の時間や場所を間違えるようになった
  • 慣れている道でも迷うことが増えた

人柄や性格が変わる

  • 以前と比較して怒りっぽくなった
  • 自分の失敗を他人に責任転嫁するようになった
  • 「様子がおかしい」と周囲から言われるようになった
  • ちょっと注意するとすぐに怒る

不安になる

  • 一人になると怖がったり寂しがったりするようになった
  • 外出時に持ち物を何度も確認するようになった
  • 「自分はおかしくなってしまった」と言うようになった

やる気がなくなる

  • 身だしなみを気にしなくなった
  • 趣味や好きだったことにも興味を示さなくなった
  • 何をするにも面倒くさがるようになった

認知症の初期症状についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
認知症の初期症状とは?早期発見するために知っておきたい知識

認知症のケアと介護の方法

家族が認知症だと分かったら、どのような対処法があるだろうと不安に感じる方も少なくないでしょう。

現時点で認知症を治す方法はありませんが、薬を服用したり適切なケアを行うことで進行を遅らせることはできるとされています。

そこで、認知症に対する薬物療法と適切なケアについて詳しく見ていきましょう。

薬物療法

もの忘れや判断力の低下などの進行を遅らせる目的と、抑うつや幻覚などの周辺症状を緩和させる目的で薬を用いた治療を行うことがあります。

治療に用いる薬には経口薬や貼付薬などがありますが、飲み忘れなどを防止するためにも介護者の監督が必要です。

適切なケア

認知症の方に適切なケアを行うことで、当事者が不安を感じることなく穏やかに過ごせる可能性が高まります。症状が緩和されることで、結果的に介護をする側の負担が減ることもあるでしょう。

そこで、認知症の方との接し方で大切なポイントをいくつかご紹介します。

接し方

  • 放っておくのではなく、見守る
  • プライド(自尊心)を傷つけない
  • 相手の視野に入り、分かりやすい言葉で簡潔に話す
  • 手を添えるなどスキンシップを頻繁に
  • 昔話を聞いたり、話しを合わせるなど相手のペースを守る
  • 孤独にさせない
  • 急な環境の変化は避ける

認知症を抱える方は、本人が「やりたい」と感じていても、「できないこと」や「できなくなったこと」があってイライラしてしまったり、困惑してしまうことがあります。自分でも「何かがおかしい」と気が付いていることもあるでしょう。

難しいことではありますが、相手を否定したり怒りつけるのではなく、その人のペースに合わせてあげることが認知症の方と接するときのコツです。

気をつける必要があるもの

以下のようなものは、取扱いを間違えると火事を起こしたりケガをしてしまったりする可能性があります。すぐに手の届くところに置かないようにするなど、保管場所には気をつけましょう。

  • マッチ
  • 包丁
  • ガス
  • ライター
  • 漂白剤
  • 潜在
  • 石鹸
  • 割れた茶碗やガラス など

介護における自己ケア

認知症の家族を介護していると、今まで出来ていたことが出来なくなっている姿を目にしたり、献身的にお世話をしても文句を言われたり、自分のことを家族だと認識されなくなるなど、悲しくなってしまったり、イライラしてしまうということはよくあります。

こういった感情が重なるとうつ状態となったり、認知症家族に対して手をあげてしまいたくなることもあるかもしれません。そうならないためにも、一人で抱え込まず、医療機関や自治体に相談し、周囲に相談できる環境をつくることがとても大切です。

医療機関に相談する

認知症かも?と感じたら、まずは医療機関に相談しましょう。

  • かかりつけ医
  • 老人性認知症疾患センター(認知症疾患医療センター)
  • もの忘れ外来
  • 精神科
  • 神経科
  • 老年科 など

もの忘れ外来や精神科などの専門科に連れていくことが難しい場合は、かかりつけ医でも構いません。まずは相談しやすい先生に相談するようにしましょう。

行政に相談する

介護保険サービスの利用を検討している場合は、まず要介護認定を受ける必要があります。お住まいの市町村窓口にて認定調査の申し込みを行いましょう。

  • 地域包括支援センター
  • 保健センター、保健所
  • 在宅介護支援センター など

自宅での介護に限界を感じている、デイサービスなどの介護保険サービスを利用していたが、施設入所を検討しているという場合でも相談できます。

まとめ

今回の記事では、認知症の初期症状について、加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れの違い、認知症の方に対する接し方について解説しました。

認知症ケアは想像以上に大変で、家族の様子に落ち込んでしまったり悲しくなってしまうこともあるでしょう。施設に入所させたいと感じても、そもそも入居待ちの状態であったり、入居させること自体に罪悪感を感じてしまうこともあるかもしれません。

しかしながら、認知症の介護を行うあなたのケアも重要不可欠です。介護保険サービスを活用し、周囲に助けてもらいながら、息抜きする時間や自分の時間を設けて無理をしないようにしてください。

認知症介護の経験がある方は、介護業界でもその知識と経験を役立てることができます。介護を理由に一旦お仕事を離れてしまった方でも、正社員として活躍する場が多くありますので、介護業界での就業を希望される方はe介護転職でお仕事を探してみてはいかがでしょうか。

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参考