特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは?入所条件や費用、施設の特徴について分かりやすく解説!

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは?入所条件や費用、施設の特徴について分かりやすく解説!

介護が必要な高齢者が入居する施設を探す際、有料老人ホームやグループホーム、特別養護老人ホームなど様々なサービスがあり、違いがよく分からない、どこに入ればいいのか分からない、という状態になっていませんか?

今回は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に注目して、入所条件や費用、施設の特徴などについて分かりやすく解説します。

特別養護老人ホームで働きたいと考えている方はこちらの記事をご覧ください。
特別養護老人ホームとは? 仕事内容・あると役立つ資格について分かりやすく解説

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)とは?

特別養護老人ホームとは、要介護3~5の高齢者が利用する施設で、24時間介護サービスを受けることができる施設です。

食事や入浴、排泄の介助だけではなく、健康管理やリハビリ、レクリエーションを提供しており、看取りを行うこともしばしばあります。

特別養護老人ホームの特徴とは

特別養護老人ホームの特徴として、地方公共団体や社会福祉法人が運営していることと、要介護度が高い人を受け入れていることが挙げられます。

それぞれ具体的に見ていきましょう。

地方公共団体や社会福祉法人が運営している

特別養護老人ホームは、地方公共団体や社会福祉法人などの非営利団体が運営しており、民間企業は運営することができません。

要介護度が高い人を受け入れている

特別養護老人ホームに入所することができるのは、要介護3~5の要介護度が高い人です。要支援1~2、要介護1~2の方は入所することができません。

介護老人保健施設(老健)との違い

介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指す高齢者が入所する施設で、心身機能の維持回復を目的としたリハビリテーションと身の回りのお世話を行います。要介護1~5の人が入所することができます。

特別養護老人ホームは在宅復帰を目指す高齢者ではなく、要介護度が3~5の人が入所する施設です。終末期を過ごされる方も多いため、リハビリテーションは身体機能の回復のためではなく維持を目的として提供されます。

特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム)との違い

特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム)は、身体介護や身の回りの世話、食事提供のサービスを提供する民間企業が運営する施設です。

特別養護老人ホームは民間企業が運営することができないだけでなく、要介護度が3~5の人しか入所することができません。

特別養護老人ホームの種類とは?

特別養護老人ホームには、広域型、地域密着型、地域サポート型の3種類があります。ここでは、各特別養護老人ホームの特徴について解説します。

広域型特別養護老人ホームとは

広域型特別養護老人ホームは、入所定員が30名以上の一般的な特養で、居住地に関わらず要介護3以上であればどこに住んでいても利用できます。都市部の方が地方の施設に申し込むことも可能で、場所を選ばなければ比較的早く入居しやすい特徴があります。

地域密着型特別養護老人ホームとは

地域密着型特別養護老人ホームは、定員が29人以下で、原則として施設所在地の市区町村に居住する高齢者のみが利用できる特別養護老人ホームです。地域密着型特別養護老人ホームには、サテライト型と単独型の2種類があります。

サテライト型は、広域型特別養護老人ホームなどの本体施設と連携を取りながら、別の場所で運営される施設です。一方、単独型は、広域型特別養護老人ホームよりも人員や設備基準に関する規制が緩和されている施設です。

地域サポート型特別養護老人ホームとは

地域サポート型特別養護老人ホームは、在宅介護を必要とする高齢者向けの施設で、24時間体制でのサポートを提供しています。

サービス内容としては、生活援助員による日中の巡回訪問、看護師による緊急対応、夜間の看護師による相談等を実施します。利用対象者は、要介護認定を受けて生活に不自由を感じている人や、介護認定は受けていないものの見守りが必要な65歳以上の方です。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の設備とは?

特別養護老人ホームは、入所者のベッドがある居室、診療を受けるための医務室、リハビリテーションを行う機能訓練室、要介護状態でも安全に入浴することができる浴室を備えている施設です。

各部屋や設備の広さなどは以下の表をご覧ください。

部屋や設備 広さ等
居室 原則定員1人、入所者1人あたりの床面積10.65㎡以上
医務室 医療法に規定する診療所とする
食堂及び機能訓練室 床面積入所定員×3㎡以上
廊下幅 原則1.8㎡以上
浴室 要介護者が入浴するのに適したものとする

参考:厚生労働省「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

居室は原則定員1人とされていますが、実際には4人部屋などの多床室か、共用スペースに隣接する形で個室や準個室を設置しているユニット型個室かであることが一般的です。

特養の居室タイプについて

特別養護老人ホームでは、ユニット型個室、ユニット型個室的多床室、従来型多床室、従来型個室の4タイプの居室を提供しています。

ユニット型個室は、ユニットケアという介護手法を採用し、自宅のような生活空間を提供する居室タイプです。ユニットケアでは、居室の前にリビングスペースがあり、入居者やスタッフとの交流の場が設けられている特徴があります。

ユニット型個室的多床室は、ユニット型個室と同じような配置ですが、簡易壁で仕切られたプライベート空間を提供するものです。

一方、従来型多床室は、集団ケアを提供する効率的なスタイルで、2〜4人が1室で生活します。また、従来型個室は、個人のプライバシーを保護し、個別のケアを提供するのに最適な環境です。

各個室タイプで特徴が異なるため、利用者の特性に応じて、最適な居室タイプを選ぶとよいでしょう。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の入所条件とは?

基本的には要介護3~5と認定されている高齢者です。

他の施設と比較しても介護度が高い方を受け入れていることから、入所者の看取りを行っている特別養護老人ホームも多くあります。

特養を選ぶメリット・デメリットとは

特別養護老人ホームを利用する際には、メリットとデメリットについて理解しておかなければいけません。ここでは、特別養護老人ホームのメリットとデメリットや、利用をおすすめする人の特徴について解説します。

メリットについて

特別養護老人ホームは、民間の介護施設と比較して費用負担が少なく、24時間体制で介護サービスを受けられるメリットがあります。また、最期の看取りまで対応してくれる安心感も大きなメリットのひとつです。

特別養護老人ホームは、入居一時金が不要で所得に応じた費用の減免制度が利用できるため、利用者の負担を軽減できます。さらに、施設サービスの利用料金の半額相当が医療費控除の対象となる点でも経済的な負担を軽減できるでしょう。

要介護3以上の方で利用料の負担を軽減したい方には、特別養護老人ホームをおすすめします。

デメリットについて

特別養護老人ホームのデメリットとして、入居待ちが長く、すぐに利用しにくいことが挙げられます。また、要介護認定3以上でなければ入居できず、ユニット型の場合は費用が高くなる点にも注意が必要です。

また、重度の認知症の場合には入居できないこともあるため、事前に施設へ確認することをおすすめします。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入所する場合の費用はいくら?

特別養護老人ホームに入所する場合、介護保険サービス費用の自己負担分の他、居住費と食費、日常生活費の負担が必要です。

介護保険サービス費用の自己負担分は基本的には1割ですが、入所者の所得が一定以上の場合には2割もしくは3割となります。

施設サービス費は施設形態や職員の配置などによって異なるものの、1日あたりの利用者負担額(1割の場合)はおおよそ以下の通りとなっています。


出典:厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」

厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システムのサービスにかかる利用料によると、個室を利用するか多床室を利用するかによって額は異なるものの、自己負担分の目安は以下の通りとされていました。



出典:厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」

多床室の場合は約10万円、個室の場合でも約14万円です。

自己負担上限額を超える分の居住費と食費が支給される

介護保険制度では、認定を受ける必要があるものの、所得や資産が一定以下の方は自己負担上限額を超えた分の居住費と食費が介護保険から支給される仕組みがあります。

まずは、以下の表を見ていきましょう。


出典:厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」

入所者の所得や預貯金額によって、認定区分が第1段階~第4段階に分類されます。この認定区分をもとに、居住費と食費の負担上限日額を確認しましょう。


出典:厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」

介護保険の自己負担上限額

居住費と食費の他、介護保険における自己負担上限額も設定されています。


出典:厚生労働省の介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」

特養で受けられるサービスとは?

厚生労働省の資料「介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」では、特別養護老人ホームのサービス内容について「入浴、排泄、食事等の介護その他日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行う」と記載されています。

また、特別養護老人ホームでは、日常生活のサポートを提供するだけでなく、看取りサービスも提供しています。看取りサービスとは、最期を迎える入居者に対し、医師や看護職員と連携し、適切なケアを提供するものです。これらのサービスによって、利用者とその家族に質の高い生活と安心を提供します。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入所するまでの流れとは?

特別養護老人ホームに入所する場合、どのような流れとなるのか気になる方も多いのではないでしょうか。ステップごとに見ていきましょう。

STEP.1
要介護認定を受ける
特別養護老人ホームを利用することができるのは、要介護3~5と認定されている高齢者です。そのため、介護保険を利用したことがないという場合には、まずは要介護認定を受けましょう。認定調査には時間がかかるため、希望する方は早めに市町村窓口へ申し出てください。
STEP.2
入所を申し込む
入所を検討されている方は、担当の介護支援専門員に相談してください。入所に関する連絡調整を行ってくれます。
STEP.3
施設との面談
実際に入所する特別養護老人ホームと利用希望者及びそのご家族が面談する機会です。心身の状況やこれまで過ごされていた場所での様子についてヒアリングを受けることが一般的です。ホームについて気になることがあればここで質問しておきましょう。
STEP.4
契約・入所
ベッドの空き状況によっては入所待ちが発生する可能性もありますが、面談の結果入所が可能となった場合には契約を交わして入所します。

まとめ

今回は、特別養護老人ホームの入所条件や費用、施設の特徴についてご紹介しました。

常に介護が必要な高齢者を見守る施設として今後もますます需要が拡大するであろう特別養護老人ホーム。今回は利用する前に知っておきたい情報をご紹介しましたが、特別養護老人ホームで働いてみたいと感じた方は、e介護転職でお仕事を探してみてはいかがでしょうか。

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参考

この記事を書いた人


野田晃司
作業療法士として病院勤務を経験後、複数の福祉施設を運営する会社経営に携わる。2ヶ所の通所介護施設を立ち上げ後、施設管理者を8年経験。現在も介護施設で働きながらライターとして活動中。