特養の6割超が赤字という衝撃 コロナ禍や物価高騰が影響大

介護のニュースについて紐解いていくべく記事の執筆を担当させていただくことになりましたブログの運営と主任介護支援専門員の二足の草鞋で活動をしており、居宅ケアマネとして奮闘中の

【公式】ケアマネ介護福祉士と申します。

連載3回目はコチラの記事について考えていきましょう⇩⇩

特別養護老人ホームの経営者らで組織する全国老人福祉施設協議会は3日、会員施設の経営状況を明らかにする調査の結果(速報値)を新たに公表した。【Joint編集部】

それによると、昨年度は62%の特養が赤字。前年度(43%)より19ポイント上がって過去最悪となった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が残るなか、急激な物価高騰に伴うコストの増大が追い打ちをかけた形だ。

全国老施協の大山知子会長は3日の集会で、「想像以上に厳しい数字だ。この状況では全くやっていけない。事業継続は困難と言わざるを得ない。まさに介護崩壊の危機にある」と強調。来年度に控える次の改定で介護報酬の大幅な引き上げが必要、との認識を改めて示した。

この調査は全国のおよそ1600の特養が対象。昨年度の決算などを全国老施協が取りまとめた。コロナ禍や物価高騰などを踏まえた補助金を加味しても、全体の半数を超える51%の施設が赤字に陥っていた。

昨年度の特養の収支差率はマイナス2.8%。プラス0.8%だった前年度から3.0ポイント低下し、こちらも過去最悪となっていた。また、併設デイサービスの収支差率はマイナス5.0%と更に低くなっている。

大山会長は集会で、「介護報酬の大幅なプラス改定を勝ち取るために一致団結して行動していく。この国の介護・福祉を守るために、我々の声を集約して国に届けていく」と表明。これから年末にかけて、団体の総力をあげて各方面への働きかけを強めていく意向を示した。

(引用:joint介護ニュース)

特別養護老人ホームの6割越えが赤字?

ちょっと驚愕の数字ですね…。
特別養護老人ホームの半数以上が赤字という計算になります。

しかも前年度(2年前の2021年)では4割だったのがさらに増えている…。

なぜこんな事態になっているのかを2年前からさかのぼってみましょう。

2年前の2021年は新型コロナウイルス感染症で収益が減った

2年前は新型コロナウイルス感染症によってめちゃめちゃ収益が減ったっていうのは間違いありません。

デイサービスは利用控えが全国各地で相次ぎ、【公式】ケアマネ介護福祉士が働いていた地域だと、3~5割の利用者さんが利用を取りやめました。

特に軽度者をターゲットにしているリハビリ型、娯楽型のデイサービスはめちゃめちゃ減りました。

もともと元気な人をターゲットにしていたデイサービスは、命の危険を冒してまで行かなくてもいいよねっていう判断で利用者さんが次々休みとなりましたね。

一方で、どうしても家に入れないような方々をターゲットにした認知症対応型通所介護等はあまり利用人数が減りませんでした…。
でも、利用者さんがいつも通り来ていたが故の弊害も…。

施設内クラスターが起きるのも認知症対応型通所介護が多かった印象でしたね…。

軽度者をメインにしているデイサービスはマスク着用等のスタンダードプリコーションがある程度徹底できましたが、認知症対応型通所介護では不可能…。

次々と検査をすれば感染が見つかり、閉鎖となったところも多かったです。

特別養護老人ホームに関しても、そんな通所系サービスの悲惨な現状やニュースで施設内クラスターを引き起こした施設がやり玉に挙げられているのをみて戦々恐々だったことでしょう…。

実際に新型コロナウイルス感染症が流行し始めた初期に施設内クラスターを引き起こした施設は職員が次々離職して月給50万円とか100万円で職員を募集し始めたくらいですからね…。

施設内クラスターだけは引き起こしてはいけない…。

そんな施設がとった行動は?

ずばり、施設内鎖国…。
具体的には新規の受け入れ停止、空きベッドを使ってのショートステイ中止。

余りに休息拡大する感染状況だったため、この対応が良かったのか悪かったのかはわかりませんが結構この手段をとる所が多かったです。

その手段を取らなかった施設も…

新規受け入れを続けた特別養護老人ホームも、中止した特別養護老人ホームも結果は同じになってしまいました。

面会を禁止にしようが新規受け入れを中止しようがショートステイを中止しようが結局施設内での感染が出てきて、多くの施設は新型コロナウイルス感染症の対応に追われる結果となりました。

施設内感染が続いている間は行政指導もあり、新たな利用者さんが入れない…。

結果的に次々利用者さんが入院や亡くなったりで減っていくのに新規の方は入れない状況が続く…。

気付けば疲弊した職員が次々やめていて、感染症が落ち着いたけど職員が足りなくて新規の受け入れが困難な状況になっている…。

そんな施設がいくつもあった2年前でしたね…。

段々回復してきた利用状況…

そんな2年前でしたが、去年は利用状況もある程度回復してきましたね。

また、利用を控えたのが原因で介護度が大幅に悪化してしまったというデータも、区分変更申請者の数が4倍~12倍になった地域がわかったため、介護サービスは新型コロナウイルス感染症を怖がるよりも使った方が健康にいい影響をもたらすっていうのが認知され利用者さんが徐々に戻ってきました。

ただ、利用者さん全体は戻ってきましたがデイサービスの収益には大きな差が見られましたね。

戻ったデイサービスは戻ったけど…

【公式】ケアマネ介護福祉士的にこの新型コロナウイルス感染症が落ち着き始め、デイサービスに戻ることになったタイミングで各デイサービスで大きな明暗を分けたなと思います。

しばらく行かなくなって、またデイサービスを再開しようかってなったときに多くの利用者さんが『しばらく休んでいたから行きづらくなった』そういうんです。

でも、特化型のデイサービスに通っていた人たちはその魅力に惹かれ、また同じところに行く…。

特化型を歌っているけど、内容が伴っていない所や評判が悪いところは利用者さんも辞めてしまう…。

特別養護老人ホームに付属しているっていうだけの昔ながら地元にあるデイサービスっていう金看板だけで勝負をしている所は利用者さんが離れたままほとんど帰ってこないかんじでした…。

結果的に、デイサービスの格差が露骨に表れた形になりましたね…。

特別養護老人ホームだって利用者さんは戻ってきたでしょ?

職員が離れちゃって受け入れできない施設はあるにしても多くの特別養護老人ホームがある程度通常営業になって、いつも通りの収益を出し始めてますが、それでも赤字のところが半数以上…。

その理由は簡単。
収入は元通りになっても、支出が大幅に変わったから…。

補助金でガポガポでしょ?

新型コロナウイルス感染症で小規模の飲食店が補助金バブルだと盛り上がってネットやメディアに取り上げられていました。

もちろん介護業界も補助金は出ました。
でも、全然ガッポガポじゃなかったんですよね…。

代表的なのが一時給付金の100万円。
感染防止にならどんな使い方してもいいよっていう給付金。

感染拡大防止のために送迎者を増やすデイサービス。
そのドライバーを雇うための人件費。

特別養護老人ホームでは感染拡大防止のためにパソコンを複数台用意したり…。
玄関で非接触の体温計を用意する所も多かった印象です。

ただ、100万円は一回だけで、期限も結構短かった。

申請も大変だったし複数回へ分けてっていうのが難しかったので、結局大きなものを買っておしまいのところが多かったですね。

支給された時期も「すぐ新型コロナウイルス感染症は収まるでしょう?」みたいな雰囲気だったのも大きかったでしょう。

そのほかにも事業規模に合わせた無利子の貸付金なんかも多かったです。

こっちは今年から返済が始まって、返せない企業やハナから倒産する計画で借りたところとかもあったみたいですけど…。

結局補助金はあったものの、全然効力がなかったのが現状…。

介護の収入って言ったら加算でしょ?

介護業界は介護保険報酬で収入を成り立たせている。

補助を出すっていう事で期待されたのが「災害加算」ですね。

去年の末から導入された加算ですが、こちらは焼け石に水です。

もちろんありがたい加算ではあったのでしょうが…。

なぜ、災害加算は焼け石に水か?

コチラの支給要件はざっくり言うと去年同月より5パーセント以上収入が落ちたら3パーセント上乗せして請求していいよ?
っていう加算…。

つまり、去年の同じ月に100万円稼いでいたのに、今年は95万円しか稼げなかった…。

じゃあ、95万円の3パーセント上乗せして、95万2850円請求していいよ?
っていう計算式…。
これ、一番損がない計算式でこれです。

去年100万円なのに今年10万円しか稼げなかったら10万300円にしかなりませんからね…。
そんな災害加算は本当に焼け石に水…。

一度でも去年の数字より上回ればまた収益が減っても使えるというものじゃなく、違う災害に見舞われないと使えない…。

その割に補填される算定額が低すぎるので、小規模の事業者さんは申請すらしないっていう所も出てきています。

収入が落ちてるなら支出を抑えれば…

収益が落ちている事業所さんが多い中で、去年からジリジリランニングコストがあがっているのが現状ですね。

新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきている今日でも、職員がマスクをしない老人ホームはほとんど見かけないですよね?

なかにはディスポーザブルエプロンやフェイスシールドを今でも使っている所は多いと思います。

新型コロナウイルス感染症が流行る前には絶対に要らなかったであろう使い捨ての物品が増え、消毒液等の減りもかなり増えましたよね。

消毒液の値段も落ち着いたとはいえ、以前に比べて高くなりましたし一番品薄になったときは政府からの優先的に買える商品ですらめちゃめちゃ高かったですからね。

それに加えて光熱費が高騰…
皆さんの家庭にも大打撃ですが、もちろん施設も大打撃です。

お風呂を沸かすためのガス代、銭湯が続々廃業するくらいですからもちろん施設も影響は大きいです。
また、一番やはり電気代…。

特に施設は電気料金の支払い方法が違いますのでとんでもない金額です。

これからは電気代を節約するためにどうするかっていうのかは【公式】ケアマネ介護福祉士が予測する未来と対策をお伝えしましょう。

施設の電気代は支払い方法が違う…

施設は普通の家庭と違ってある程度の大きさのところだとデマンド料金と言って、料金の算定方法が違います。

基本料金がほとんどで、その基本料金をどう下げるかがキーポイントになります。

デマンド料金とは、30分単位で使った電気量をもとに基本料金が決まるシステム。

つまり、電気を使う時間帯を平均化すれば自ずと施設の電気料金は安くなります。

電力の平均化って?

【公式】ケアマネ介護福祉士が以前勤めていた施設や、その他大きな施設さんではよくこのタイプの時計がぶら下がっていました。


(引用:日本テクノ株式会社HP)

時計の周りに光っているLED…。

なんでLEDがついているかっていうと、30分間で使った電力を表す時計…。

これ以上使うと基本料金が上がっちゃうから使わないでね?
っていうのを教えてくれる装置です。

基本料金を決める電力の測定は30分単位。

電気料金が上がらないように、使った電力量をLEDで教えてくれます。

じゃあ実際どんな使い方するかっていうと、○○時25分の時点でもう少し使うと電気料金が上がるから5分間暖房を消して31分になったらまた暖房を入れる。

そんなことの繰り返し…。

だんだん使ってくると、施設によっては必ず電気を使いすぎる30分が出てくる…。

毎日同じ時間…。

その時間を標準化できれば基本料金がガクっと下がる…。

原因を考えるとその時一斉に食洗器が動いてるとか、乾燥機が動いてるとか、浴室の暖房を入れているとか原因がわかってきます。

じゃあどうやったら電気の基本料金が上がらないようにできるかをユニット内や施設全体で考える…。

今はごく一部の施設しかやっていない取り組みですが、ある程度の大きさがある施設では標準的に導入され、電力の標準化をしてコストを下げる取り組みが施設全体で行われ、その対応や施策を介護職員も求められるでしょう。

食材費の高騰も大きい…

【公式】ケアマネ介護福祉士がこのブログを書いているときにヤフーニュースでの吉野屋の牛丼が値上がりするニュースが出ていました。

もう、【公式】ケアマネ介護福祉士一家は吉野家すら買えませんけど…。

一昔前なら卵が1パック100円で買えたのに今は228円…。
うどんも1玉12円だったのにいまは25円…。
もやしも12円が25円…。
そばは1玉13円が、38円…。

全ての食材が値上がりしたといっても過言ではありません…。

この食材値上がりが影響してすでに悲しい形で動き出している特別養護老人ホームも多い印象です…。

自社炊飯を辞める所が出てきた…

最近はめちゃめちゃ少なくなってきて、本当に大規模な特別養護老人ホームや、病院の付属とかの施設以外では見なくなってきていますが、施設で食事を作っている所が外注に切り替えるような動きが増えてきました。

自社で食事を作る場合、調理スタッフを自社で雇って、材料も自分たちで調達する…。

メリットはイチから施設内で作るのでおいしい。

施設でとれた野菜やどこからか頂いた食材をその日の料理に組み込んでくれたりと融通が利く。

利用者さんに合わせて即時食事形態や使う食材なんかを調整してくれたり…。

自社の職員なので連携も取りやすいのが大きなメリットです。

ただ、自社炊飯を辞めて外注に出す動きが増えてきましたね。

外注といっても、施設の厨房施設を使って調理してもらうので外から見るとそれほど変わりませんが、残念ながら費用と引き換えに
デメリットが生じます。

変わらず施設で作っているのに質が落ちた?

今までイチから手作りだったものが外注になると、本部のセントラルキッチンからカット済みの野菜やお肉、お魚といった食材が送られてきて、それを施設の調理場で調理する形になります。

そんなに変わらないでしょ?

って思うかもしれませんが、【公式】ケアマネ介護福祉士はあまり野菜が好きではありませんが、農家さんからもらうキャベツと、スーパーで買った半玉売りのキャベツ…。

一口食べただけではっきり違いが判ります。

なんなればスーパーで1玉売りのキャベツと、半分に切ってポリエチレンに包まれているキャベツですらはっきりと違いが判ります。

そのくらいその場で調理したものか、それとも一次加工が済んでいるものを使うかは味に大きな変化をもたらします。

見た目にはわからないのですが、食べている利用者さんにはすぐにバレてしまいます。

また、外注業者さんは食中毒のリスクとかがあるため、セントラルキッチンから送られてきた食材以外は使わないので、施設でとれた野菜や、利用者さん家族からの大量差し入れされた食材なんかは使いません。

また、仕入れの数もしっかりと決まっているので利用者さんにその場での柔軟な対応っていうのは自社で作るより制限がかかります。

ただ、まだ自社のキッチンで作る分、温かみや出来立ての見た目が保たれている分まともかもしれません。

なぜならもっと採算の合わない所はもう、食事を作ることを辞めてしまうから…。

小規模施設は作らなくなる…

小規模の特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスなんかは食事を作らない所も出てきましたね。

確かに自社で食事を作らなければ水道光熱費はかからない。

栄養士も配置しなくてよくなりますからね…。

お弁当で食事を済ませたり、温めるだけのゼロクック料理に切り替える所もあります。

職員の手間や経費を抑えることができますし、厨房を他の業者に貸して利益を得ることも可能になります。

今後は更にこの業態が増えるでしょう。

もちろん輸送コスト分や外注する人件費分は栄養素には影響がなくても、見た目や味にダイレクト反映されて行きます。

報酬改定でどうにかしてくれ?

そんな苦慮に立たされている特別養護老人ホームの運営で、協会が今回の報酬改定でプラス査定にならなければ運営していけない!!

だから報酬をもっと上げてくれと声を上げたというのが今回のニュースになります。

その中で、今後の報酬改定の行方次第にはなりますが、どうなるのか??

【公式】ケアマネ介護福祉士的予想をしていきましょう。

基本報酬は上がらないけど、加算は増える?

基本的に日本は少子高齢化…。

税金を払ってくれる現役世代が減っている中で基本報酬を上げることは期待薄です。

特に、特別養護老人ホームに関しては、地域ごとに在宅介護で何とかしていってくれという地域包括ケアシステムを打ち出し続けている以上、相反する事業…。

基本報酬は下がっても、上がることは無いのかなと思います。

ただ、特別養護老人ホームが赤字で、大規模展開している社会福祉法人が次々潰れてしまっては本末転倒…。

生かさず、殺さず的な部分で、介護度を下げたり、在宅復帰にかかわるような加算を増やしてくるのかな?

そんなところを予想しています。

入居施設に関しては補助金なしでも様々な民間企業が運営している中で、税制優遇されている特別養護老人ホームが赤字っていうのは経営に問題がある…。

経営のプロがかかわればあっという間に黒字化しそうな気もしますので、わざわざ優遇されている特別養護老人ホームを助けるのであれば、もっと他のところにお金を回すべきなのかなと思う部分ではあります。

特に在宅で最後まで暮らすのに必要なヘルパー、ケアマネ、訪問入浴なんかはもう少し報酬を上げなければ地域包括ケアシステム構築を掲げている割に在宅介護できる状況ではなくなりそうなくらい人材不足、参入する企業不足でとてもなりゆかない気がします。

もちろんこれは【公式】ケアマネ介護福祉士の単なる想像ですので、これからの改定内容に注目すべきなのかなと思います。

人材不足、資金不足を補うために今以上に介護職員に課される職務は増えることが予測されますが、急にその責務を課されるのか、今のうちから予測して気構えておくのかでもかかる負荷、ストレスは違うでしょう。

このブログを見ている皆様は日々変化する介護業界に耐えうる知識と覚悟を身に付けていただければ幸いです。

この記事を書いた【公式】ケアマネ介護福祉士

高校生からホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)を取得しアルバイトにて老人保健施設にて勤務。そのままアルバイト先の老人保健施設へ入職。
大規模法人にて、グループホーム、老人保健施設、通所リハビリテーションにて介護職員として従事。
経験を活かしながら介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し8年ほど従事。
その後自身の転居をきっかけに、相談員、介護職員を兼務しながら施設ケアマネとして5年間勤務。中間管理職を経て居宅ケアマネへ転身。
現在は主任介護支援専門員として日々子育てと仕事に全力で奮闘中。同時にブログも運営中。

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