「私たちにとって当たり前の美容は、高齢者にとってはいち早く諦めてしまうもの」ー福祉ネイリスト・堀口カストゥリさんインタビュー〈後編〉

ekaigowithオリジナルインタビュー第一弾として、福祉ネイリストとしてご活躍される堀口カストゥリさん(X URL:https://twitter.com/nail_pen)にお話を伺いました! 前編では、トゥリさんがなぜネイルペンを作ったきっかけや、ネイルペンのすごいところをご紹介しました。 【前編はこちら】 後編では、「介護美容」や「ネイルペン」について詳しくお話を伺っています。〉 トゥリさんが考える「介護美容」とは そもそも「介護美容」について、トゥリさんはどのようにお考えですか? 皆さん、「お化粧によって、生きる喜びだったり、活力や笑顔を引き出すための活動」という風に、結構難しく考えがちだと感じます。 でも、単純に櫛で髪をとかすことも介護美容ですし、化粧水でスキンケアをすることも介護美容、ハンドクリームを塗るのも介護美容なので、誰でも簡単にできるものなんですよ。 私たちの当たり前を介護現場に取り入れていく、といった感覚です。介護士のみなさんももちろんできます。介護美容で1番大切なのは、介護士さんたちも楽しんでできることだと思います。 美容ってみなさん興味があるし、一緒に楽しんでいただける。だから、日々の業務のちょっとした楽しみにも介護美容っていうのは良かったりします。 介護美容にはどのような効果がありますか? 相乗効果があって、利用者さんが丸くなるというか、温和になるんですよね。 実際、暴言を吐いていたご利用者の方には、「そんな綺麗な(ネイルをした)指をしてるのに、そんな暴言似合わないわよ」という風に言ったら、「あ、確かに」と納得されて。 「介護がしやすくなった」という介護士さんの声を聞きました。現場で、何か拒否があった方に1つ介護美容を施してあげることによって、「あ、何かやってみようかな」って次の意欲に繋がります。 例えばデイサービスに行きたくないという方に、「じゃあ今日この服着るのどうですか?」というように促したら、「じゃあ行こう」と気持ちを切り替えてくれるとか。介護美容は次の行動をするための1つのきっかけになるんですよね。 その中でもネイルなんですね。 化粧療法でもメイクやマッサージ等色々ありますが、私自身、1番効果が高いと考えているのはネイルなんです。理由は、唯一自分の目で見れる美容だからです。爪って大体1日何回ぐらい見るか知ってますか? インタビュアー:「100回、300回くらいでしょうか?」 3万回です! インタビュアー:「え!? そんなに見ているんですね!」 ある研究結果なのですが、事務作業をしている女性でネイルをしている人としていない人でストレス指数を測ったら、ネイルをしている時の方がストレス指数が下がった、という研究結果があるくらい私達って無意識に指先を見て、影響を受けているんです。 そのくらい、毎日目にする回数の多い爪をきれいにするネイルの効果は高いと思っています! 職業として「介護美容」に関わるには、どのような方法がありますか? 体調不良や職場が合わなかったなど、なんらかの理由で介護現場を離れてしまった、という介護士の方が介護美容を始めるとしたら、「レクの時間に美容レクリエーションをしに行きますよ」という形で始めても良いと思います。 私もレクの代行という形でやってるのですが、美容のサービスだけをレクとして代行するという職業も今後もっと確立されていくと思います。 腰を痛めて介護ができなくなってしまった、といった方も、レクの時間だけだったら出来る、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。 受け入れる介護士さん側も介護施設での勤務経験者にレクの時間を代行してくれるなら、見てもらっている間に他の事務作業ができるので、安心して任せていただけると思うんですよ。 やむを得ず施設勤務を辞めてしまっても、介護に関わりたいという気持ちを持ち続けている方、すごく多いんですよ。その方が携わるスポットとして良いのではないかと思います。 今現在介護の仕事をしている方も自分の施設に美容レクリエーションを導入するという形で取り入れてもいいですし、 介護美容を始めるには様々な形があると思います。 ひとつのカテゴリーや職種として確立されればいいですよね。 そのうち転職サイトが、求人の職種の項目に介護美容に関わる職種がひとつできたら面白いですよね。 あと思うのは、今介護施設を探すサイトってあるじゃないですか。ああいったところにも選択肢で「美容取り入れてる」とか「ネイルします」という項目があったらいいなと。 今後それがあったら、ご家族も美容が楽しめる施設を探せますし、施設の特徴や差別化になると思います。 介護美容って、まだまだ新しい概念なんですね。 多分、10年前位にやっと出てきたような感覚です。それが今となっては聞いたことあるとか、興味を示している介護士さんがとても多くて。 私も介護美容のセミナーを開催することもあるんですけど、来てくださる方は、介護士・看護師さんが多いんですよ。美容ってやっぱりいいよねって皆さん分かってはいるけど、何をしていいか分からないという声が多くて。 皆さんセカンドキャリアや副業で介護美容を考えているのかなと。女性は特に美容の力を分かっているから、 自分も携われたらいいなと思っている方はとても多いんじゃないかな。 だから、その職業を確立させるためにも、何かできないか模索しています。 トゥリさんは介護美容やネイルペンの認知拡大のために、情報発信を活発にしていらっしゃいます。そのような発信活動において気を付けていることはありますか? とにかく分かりやすい言葉で、「手軽で、本当に簡単なんだよ」ということを伝えるようにしています。 また、なるべく「こんなエピソードがあった」というのを書き留めておこうと意識しています。とにかく私が発信していけば、誰かの目にはいつか止まってくれるはず。 現場で利用者の方の拒否に困った際に、「あ、そういえば美容を試してみたら変わるかもな」って思い出していただけるよう、記憶に残るような写真やエピソードを載せていきたいです。 「こんなペンどこかで見た」「このポロシャツの色、なんか見たことある」と思い出してもらえたらと思います。 介護美容・ネイルペンの力とは 他にもネイルペンの効果を感じる場面はありますか? 実際に利用者の皆さんに塗っていただくときは、手指のトレーニングになっていると感じます。利き手に塗ってもらうときは、必然的に普段使わない手の筋肉を動かすトレーニングになるんです。 また、脳のトレーニングにもなります。例えば、「右手の薬指に赤色を塗ってください」と伝えたとして、 「じゃあ、右手だから、こっちの手で、えっと、この指で、何色だっけ、あー、赤を塗る…」と考えることで脳トレに繋がります。 高齢者向けでなくても、一般の方でも楽しめそうですよね! 化粧ポーチに入るようなサイズなので、ランチや飲み会に行く時にバーっと塗って、夜、身体を洗うついでに簡単に落とせるので、とても楽なんです。  お母さんとお子さんが一緒に楽しむこともできます。有害な物質は一切使っていないので、誤って口にしてしまっても安心です。安全なものを使ってるというのも介護士さんにとってはとても大事なんです。 … Continue reading 「私たちにとって当たり前の美容は、高齢者にとってはいち早く諦めてしまうもの」ー福祉ネイリスト・堀口カストゥリさんインタビュー〈後編〉