介護のニュースについて紐解いていくべく記事の執筆を担当させていただくことになりましたブログの運営と主任介護支援専門員の二足の草鞋で活動をしており、居宅ケアマネとして奮闘中の
【公式】ケアマネ介護福祉士と申します。
連載11回目はコチラの記事について考えていきましょう⇩⇩
福祉医療機構は先月、特別養護老人ホームと介護老人保健施設の昨年度の経営状況を明らかにする調査レポートをそれぞれ公表した。【Joint編集部】
特養の赤字施設の割合は、従来型で48.1%。前年度より6.1ポイント上がっていた。ユニット型の赤字施設の割合も、34.5%へ拡大していた。この調査は福祉医療機構が貸付先を対象に実施したもの。全国の5325の特養、1562の老健の昨年度決算などを分析した結果として、2月29日までに報告された。
老健の経営状況をみると、赤字施設の割合は41.6%。前年度から7.8ポイント悪化していた。
赤字施設が増えた要因として共通してあげられているのは、ベッドの稼働率の低下と光熱費の膨張だ。光熱費の膨張には、とりわけ電気料金・ガス料金の値上がりが大きく響いている。
福祉医療機構は特養について、「定員規模の小さい施設ほど経営状況は厳しく、赤字施設の割合が高い」と指摘。老健については、「経営環境が一層厳しさを増した。程度の差はあれ、強化型や基本型といった施設類型によらず経営状況が悪化している」と説明した。
また、来年度の介護報酬改定で特養と老健の基本報酬が引き上げられることなどを念頭に、今後の経営状況も引き続き注視すべきとまとめている。
(引用:joint介護ニュース)
施設経営が赤字?
特別養護老人ホームは従来型の赤字が約半数?
今回のニュースは以前から騒がれていた特別養護老人ホームの半数が赤字という問題ですね。
特別養護老人ホームにも二種類あり、一つが昔ながらの4人部屋が中心となっている特別養護老人ホーム。
利用者さんが払う費用も安く、介護職員も、後述するユニット型特別養護老人ホームより全然少なくて済みます。
また、4人部屋で個別ケアも要求されないため、一斉に離床、一斉に食事介助、一斉にオムツ交換。
介護を流れ作業化し、作業効率も上げられるため結果的に人件費や消耗品費を抑えやすい構造にあります。
ですが、48.1%が赤字経営状態…。
もう一方で同じ特別養護老人ホームではありますが、また別の形でユニット型特別養護老人ホームというものがあります。
ユニット型と名前がついている通り、従来型の特別養護老人ホームが4人1部屋中心で、ベッド数も少ないところで40床~多い所で100床を超えますが、ユニット型特別養護老人ホームは9~10人を1単位として、3ユニットの30人前後が主流となっています。
一人当たりの介護単価が高い分、職員の配置も多く、全室個室。
個室料金もかかるため利用者さんの支払いも高くなる。
代わりに個別的ケアが主流であり、流れ作業のような介護ではなくある程度本人のタイミングで介護を受けられるというのが魅力。
こちらも34.5%が赤字という調査結果。
従来型の古い介護が世間から受け入れられなくなってきている?
【公式】ケアマネ介護福祉士も20年ほど介護業界に関わっているので、働き始めたころは従来型の特別養護老人ホームしかありませんでした。
6時に一斉起床、7時に一斉朝食。
例外なく、食後は寝かされ、9時から一斉オムツ交換。
10時からは入浴介助で終わり次第昼食。
まるで介護する方もされる方もオートメーションの機械にでも乗っているような感覚。
個別ケアなんて言葉はありませんでした。
2001年から創設されたユニット型特別養護老人ホームではありましたが広く普及し始めたのはここ15年ほどかなっていう印象…。
当初は従来型特別養護老人ホームの多くが利用料金5万円台~7万円台だったのに対し、ユニット型特別養護老人ホームは8万円台~10万円ほど…。
保険者が同一〔介護保険証を発行している市町村〕の人しか申し込みできない、費用も高いため地元の富裕層しか入れない印象でした。
それが今の高齢者の多くは厚生年金受給者で、高度経済成長期を支えてきた人たち…。
それなりの年金をもらっていて、より自由度の高いサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームという選択肢もある…。
その中で、一斉介助を受ける従来型特別養護老人ホームだけでなく、外出、外泊、他者の宿泊や飲酒、喫煙に制限がある特別養護老人ホームというシステム自体が受け入れられなくなっているのでしょう。
その結果、入居率が低くなり経営が悪くなっているという現実が見えてきます。
実際に、ある程度の大企業だと、所得制限によりユニット型特別養護老人ホームも安めのサービス付き高齢者向け住宅も費用的には変わらない。
様々な制限があるだけでなく、利用者さんを預ける家族側としても、通院は原則家族負担、要介護度3~5の間しか原則入居できない。
入院が3か月以上となれば即退去…。
それに比べ、サービス付き高齢者向け住宅なら要介護度による退去はないし、入院しても家賃と共益費を払っていれば追い出されることはない。
病院の通院だって、お金を払えばサービス付き高齢者向け住宅のコンシェルジュや施設の職員がやってくれる…。
ある一定の所得がある利用者さんにとってはサービス付き高齢者向け住宅のほうが利便性が高いし、従来型特養の4人部屋より個室で個別ケアを受けられるところのほうがいいでしょうっていう風潮が年々高まっている結果、大きく入居率を落としている特別養護老人ホームが赤字になっている。
これは紛れもない事実でしょう。
実際に、令和四年度における東京都の調査では稼働率が93%…。
(詳細は東京都社会福祉業議会の調査資料の10ページをご参照ください。)
100床あれば7床が空いているというのが現実です。
もちろん平均なので、埋まっているところはいつまでたっても埋まったままだけど、空いている特別養護老人ホームはとんでもなく空いているっていうのが
現状でしょう。
【公式】ケアマネ介護福祉士が従来型、ユニット型両方の特別養護老人ホーム入居相談員を兼務していた時は費用の安い従来型は100人待機者…。
ユニット型は利用料金も高いため、地元の富裕層しか入れないので、空床があった時期もあるくらいでした。
古めかしい施設は職員も集まらないのが原因?
それでも、東京とは違い所得が低い農村部では今でも特別養護老人ホームへの申し込みは絶えないのが現状…。
それでも赤字の事業所が半数近くというのは田舎は都会に比べて更に空床率が高いという話…。
なぜ、空床率が高いのか?
それは職員不足が大きな原因でしょう。
職員にとってはサービス付き高齢者向け住宅だろうがユニット型特別養護老人ホームだろうが従来型特別養護老人ホームだろうが介護従事者として働くことには大きな違いはありません。
働き方の違いっていうのは正直なところ、働いてみて感じるところが大きいでしょう。
それでも、昔ながらの従来型特別養護老人ホームや制度当初に作られたユニット型特別養護老人ホームは施設の老朽化が激しく、比較的最近作られたサービス付き高齢者向け住宅は新しいうえに場所によっては病院併設や高級ホテルのような外感だったりと、見栄えが大きく違います。
せっかく働くのであればそりゃあキレイな方がいいですよね。
空床が多く赤字で職員の人材採用にお金がかけられない、人材採用ができず、ベッドが空いていても、新規の利用者さんが入れられない。
最近だと、農村部ではサービス付き高齢者向け住宅やユニット型特別養護老人ホームを新しく建設しても職員が集まらないために年間通して空床が続くなんて言うところは結構多くみられます。
この構図は都心よりも農村部のほうが体感的には顕著な印象があります。
(詳細は東京都社会福祉業議会の調査資料の11ページをご参照ください。)
老人保健施設単体で見れば赤字だけどそれは見かけの数字だけ…
老人保健施設も前回調査時の2021年では33.8%が赤字でしたが、今回の調査では41.6%が赤字…。
じゃあ老健はこのままいくとつぶれるところも出てくるか?
実際、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人が経営破綻して、譲渡や売却されることも珍しくない…。
このままだと、老健も同じ道をたどりそうな数字ですが、こちらはそんな心配はありません。
ではなぜ数字上、老健の経営が悪化しているように見えるのでしょう…?
2018年から療養型から介護医療院への切り替えが始まった
いわゆる病院の療養型病床といわれる介護療養型医療施設でしたが、こちらは介護医療院への切り替えが2024年の4月からとなっており、あと一か月で亡くなってしまう制度…。
2018年から病院の療養型がなくなるっていうのは決定しており、2024年4月までの時限的措置でした。
老人保健施設、所謂老健は施設長が医師であることが条件。
ほぼすべての老健が医療法人であり、病院が経営しています。
老健を作る医療法人は、高齢者をターゲットの中心にしている病院が多く、小児科がやっている老人保健施設なんてのは聞いたことがありませんが、脳神経や、内科、外科と名の付く大きな病院さんが運営しているところが多い印象です。
外科や、内科は高齢者が入院すると長期間の入院になることも多く、療養型がくっついているイメージも大きいです。
療養型が2024年でなくなってしまったら患者さんはどこへも行くところがない…。
それでも、患者さんは家に帰ることができない状態だから療養型へ入院していた…。
そんな人たちが2024年にあふれかえる…。
その受け皿を作るために、老健は意図的にベッドを開けていた時期ではあるので、赤字になる所が多かったのは間違いありません。
介護医療院へ次々利用者さんを…
また、3年前からは療養型病床の代わりに新しくできた介護医療院というシステムへ移し替えるところも増えました。
療養型病床や、空いている老健のベッドを介護医療院へ配置転換…。
老健は介護医療院へ利用者さんを送り込むことにより在宅復帰率も上がる。
老健の収入は落ちても、それ以上に介護医療院で収益を上げることができる。
つまり、老健からは利用者が減って赤字になりますがその分を介護医療院で設け、老健自体は在宅復帰率が上がることにより一人当たりの単価が上がる。
国が目指す、老健から在宅への復帰という看板を名目上クリアできるわけです。
現状の多くとしては老健の空いているベッドをかき集めた一区画や、複数階建ての建物内移動なんかが行われただけで、利用者さんが在宅復帰したとは言い難い。
建物の中を移動しただけで、老健(入所施設)から介護医療院(在宅サービス)という構図なので在宅復帰した認定…。
これで国にもいい顔ができるし、収益効率も上がる。
老健は赤字だからと来年からは国の報酬も上がる…。
医療法人が損しないけど、はた目から見れば赤字だから報酬をあげなくちゃいけないよねって見える素晴らしい仕組みが出来上がっています。
【公式】ケアマネ介護福祉士的に特別養護老人ホームが生き残るための職員獲得術が確立されているかどうかがカギ
【公式】ケアマネ介護福祉士は、ライターという副業上、いろいろな施設のインタビューや施設を良く見せるためのお手伝いをしたりします。
正直なところ、上手く行っている施設さんは人材に苦労していません。
人材に余裕があるから施設や法人のSNSを利用して発信。
それを見た入職希望者が集まる。
入職希望者が集まるからまた、SNSやいろいろな媒体、もしくは施設内外、地域内外のイベントに力を入れて発信。
また入職希望者が集まるっていう構図が完全に出来上がっています。
逆に、人材不足でベッドが空けられない施設は、もちろんそれだけで一般業務すら回っていない中でキラキラしたSNS発信もできないし地域内外、施設
内外でのイベントなんか全然無理…。
結果、閉鎖的な職場になり地域の評判もがた落ち…。
職員が集まらずにいつまでたっても利用者さんを受け入れられず経営は火の車…。
アナタが今働いている職場はどちらに当てはまるでしょう?
20年前はどんぶり経営でも、赤字だろうが黒字だろうが大事なのは補助金を引っ張ってくること。
それ次第で経営の良しあしが決まっていましたね?
だからこそ補助金に詳しい元行政職員とかが施設の理事に関わっていた…。
そんな話は等の昔に終わり、今は経営者が経営しないと社会福祉法人も潰れてしまう。
今この記事を見ているあなたの職場は未来が明るいか?
それとも暗いのか?
負のループから抜け出すことは容易ではありません。
日々の業務で精いっぱいなのであれば、それを改善し外へのアピールが必要。
それを考えられる環境づくりと、アピール方法を即座に受け入れてくれる上層部なのか?
沈む会社か、上り行く会社かは見極めが必要でしょう。
この記事を書いた【公式】ケアマネ介護福祉士
大規模法人にて、グループホーム、老人保健施設、通所リハビリテーションにて介護職員として従事。
経験を活かしながら介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し8年ほど従事。
その後自身の転居をきっかけに、相談員、介護職員を兼務しながら施設ケアマネとして5年間勤務。中間管理職を経て居宅ケアマネへ転身。
現在は主任介護支援専門員として日々子育てと仕事に全力で奮闘中。同時にブログも運営中。
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