介護事業所の倒産件数最多で訪問介護は144件

介護のニュースについて紐解いていくべく記事の執筆を担当させていただきつつ、ブログの運営と主任介護支援専門員の二足の草鞋で活動も継続中、居宅ケアマネとして奮闘中の

【公式】ケアマネ介護福祉士(【公式】ケアマネ介護福祉士 (@BWm7LDaUhfW1TPC) / X)と申します。

ご好評いただいているため、連載2年目に突入!!

ご感想をお待ちしております。

そんな連載25回目はコチラの記事について考えていきましょう⇩⇩

今年の介護事業者の倒産件数が過去最多を更新したことが、東京商工リサーチのまとめで明らかになった。【Joint編集部】

11月1日時点の集計(速報値)によると、今年1月から10月の倒産件数は144件。これまで最も多かった2022年の143件を早くも上回った。

サービスごとの内訳をみると、訪問介護が71件で最多。通所・短期入所が48件、有料老人ホームが11件、その他が14件となっている。これらは全て前年を上回っていた。

倒産件数の急増の背景には、深刻な人手不足、物価の高騰、人材確保や利用者獲得をめぐる競争の激化などがある。今年度の介護報酬改定が事業者に打撃を与えた可能性も高い。今年はまだ2ヵ月残っており、数字はこれから更に大きくなる見通しだ。

介護業界では法人の新設が増加傾向にあり、スケールメリットを見込んで事業者が大規模化を図る動きもみられる。倒産件数の急増は業界の再編、適者生存の新陳代謝が進んでいることの現れでもある。

一方で、地域によっては介護サービス基盤の弱体化が顕著となっており、いわゆる「介護難民」の問題の加速を懸念する声も強い。関係者の間では今後、倒産件数の急増をどう位置付け、どんな対策を打つべきかという論争が、一段と熱を帯びることになりそうだ。

(引用介護joint)

11月の時点で過去最高

東京商工リサーチさんという、介護業界に関わらず、企業の信用調査やデータベース事業、情報事業、出版事業などを展開する有名な民間信用調査機関が調べた結果が出てきた形ですね。

もともと、企業の所在地や従業員数、財務状況等をまとめる機関であり日本では会社の買収や転職の際にどのくらいの企業なのかを調べるのに使ったりする信用度がそれなりに高いデータとされています。

そんな信用度の高い期間から発表された介護業界の倒産件数が11月の時点で今まで一番多かった一昨年2022年の143件を上回る144件となったということですね。

11月までのデータなので12月にも数件は倒産するでしょうから今年の倒産が過去最高をどこまで更新するのか?

という話になっていますね。

倒産件数が増えた理由

倒産件数が増えた理由はいくつかあるでしょうし、訪問介護、デイサービス、有料老人ホーム等により理由が違うってところも大きいでしょう。

ただ、例外なく訪れた理由もあるでしょうからそちらをまず先に考えていきましょう。

新型コロナウイルスの影響は計り知れない

4年前ほどから猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の影響はやはり甚大だったことでしょう。

利用者は極端に減り、感染の有無にかかわらず介護サービス利用を抑制した利用者さんに関しては身体機能、認知機能の低下がみられたっていうのが原因で、要介護度の悪化がみられているというはっきりとした統計があるくらい…。

特にリハビリ特化型やリハビリ特化型を歌っていたサービスは超大打撃ですね。

家族のレスパイト目的で、感染状況が悪くても使うしかないっていうサービスは他のサービスに比べて減少率は低かったようですが、それでも廃業がチラつく程度には収入が落ち込んでいる形です。

それでも感染状況が良くなかった数年をなんとか生き延びた企業さんが今やっと落ち着いてきましたね。

生き延びてきた企業は感染状況がよくなったにしても、もともと通っていた利用者さんが変わらず利用できるかといえば、そうでもなくて訪問介護で入浴サービスを受けていた人は環境の整ったデイサービスや施設でじゃないと入れない。

デイサービスに歩いてきていた人が車いすに…。

元気に麻雀していた人が家族の名前すらわからなくなっていたり…。

そうなってくればヘルパーやデイは新しい顧客を捕まえなければならず、営業が上手くいかなかった特色のないデイサービスなんかは元通りの収益にはならないようですね。

そんな中始まってしまった支払い…

そんな中で始まってしまったのが借金の返済ですね。

実は、介護業界だけではないにしても新型コロナウイルス感染症が真っ盛りの時期に国から無利子のお金を借りまくっています。

借りた金額や返済の年月はマチマチですが、最大3年間の無利子、支払い猶予期間。

いわゆるコロナゼロゼロ金融でお金を借りまくっています。

そして多くの企業がその支払いが始まっています。

そのため、介護業界でも業績が回復していないのに借りていたお金の支払いが始まったっていう感じですね。

大きくてある程度余裕のあった企業は事業拡大のために借り、余裕のない企業はコロナ禍のランニングコストに消え…。

借りた後の使い方は様々でも支払いはみんな一律始まっている状況…。

おかげで文字通り借金で首が回らなくなっている企業も出てきてそのまま倒産っていうのが増えた原因…。

むしろゼロゼロコロナ融資で去年までは倒産せずにすんでいた企業が次々倒産し始めたっていうだけ…。

コロナ禍の倒産は黒字のうちに閉めようっていう企業と本当に資金がなくて倒産した企業が多かったでしょうが今年~来年からはコロナの影響で回復しきれなかった毎月赤字の企業や、資金ショートした企業が倒産しそう…。

本当の意味でこれからは借金を抱えながら倒産する企業が続々と出てくるでしょう。

その借金は国が貸し付けている…。

つまり私たちの税金なんでしょうけれど…。

介護サービスの再選定に選ばれなかった所が業績回復せず…

これも大きな部分ではあったと思われますが、コロナ禍においてデイサービスやヘルパーなどを一時休止する利用者さんが多かった印象です。

もともと通っていたデイサービスや来てもらっていたヘルパー事業所さんに満足していればそんなことは起きなかったのでしょうし、コロナ禍でも短期間でサービス利用を再開する人がほとんどでした。

なんとなく不満を持っていた利用者さんは長期間の休止期間をはさみ、違う事業所への乗り換えが結構多かった印象です。

そんな時に乗り換えられたサービス事業所や再選定時に選ばれなかった事業所さんは残念ですがもともと一定のサービス提供ができていなかったり強みがはっきりしていなかったりっていう場所がほとんど…。

正直なところ、新型コロナウイルス感染症で閉鎖した事業所は確かにいくつもありましたが利用者さんから一定の評価をもらっていた事業所は閉鎖しませんでした…。

いい意味でも悪い意味でも介護業界の事業所すべてが見直しされた機関となったのかもしれませんね。

上がり続けるランニングコスト…

そんなコロナ禍で借りたお金の支払いがどの事業所も始まっている中で最近はめちゃめちゃランニングコストが上がってきていますよね…。

水道代、電気代、食材費があがり最低賃金も上がっているので人件費もおそらく上がってきている感じ…。

ホントに泣きっ面にハチって感じですね…。

金銭面だけじゃない人材不足の理由…

そんな感じでコロナ禍以降、介護事業所はどこも金銭的に以前よりもきつくなっています。

支払いが増えても収入のてっぺんが決まっているし、単価も決まっているのが介護業界の仕組み…。

じゃあどこを減らすのかっていえばすごく単純でランニングコストを削るしかないですよね…。

光熱費や食費を無理のない範囲で削るなんて言うのはまだしも、絶対にやってはいけないところを削り始め、職員の離職に繋がったところも散見されます。

それは衛生用品…。

ディスポーザブル手袋やマスクをコロナ禍で節約しようとしたところは悪い評判とともに職員が出て行ってしまいましたね。

新型コロナウイルス感染症において、密や濃厚接触というのが危険とされてきている中、介護業界は人対人でもちろんその距離は濃厚接触…。

新型コロナウイルスの拡大とともに、感染を恐れたりそれを理由にやめていく職員が多かったのは業界全体として間違いない事実…。

その中でも、経営が傾き始めたところは感染が拡大されている中でディスポーザブルのガウンやマスクを用意できなかったり…。

使い捨てであるはずのフェイスガードを一人一枚の支給とし、ずっと使いまわさせたりなんていう状況…。

末期の所はディスポーザブルの手袋が品質低下で済めばいいものの、それすらケチり始める…。

結果的に職員が会社の悪い内情とともに外へ流出…。

ケアマネも様々なネットワークを持っている中で、そんな衛生的に疑問を持つサービス事業所を積極的に使おうなんて思いません。

結果的に顧客の獲得が出来ず更にじり貧です…。

じゃあ高品質の事業所だけが残って良い事ばかりじゃないの?

そんな形で新型コロナウイルスのまん延によって、経営が上手くて未曾有の状況でも倒産しない企業。

自社の強みや特色を分かっており、利用者さんを獲得できる事業所がしっかりと残った形ですね。

言い方が難しいですが、経営が上手くないところや利用者さん、職員から選ばれなかった事業所が潰れている。

結果的によかったのかと思える状況にも見えます。

不採算部門は切り捨てられたまま…

一見すると優良企業だけが残ったように見えますが、とんでもない大きな問題が取り残されています。

それは不採算部門の切り捨て放置…。

これは新型コロナウイルスのまん延、感染拡大により介護業界だけではないですが経営の見直しが入り、不採算を叩いてきたところが次々閉鎖され、企業のスリム化が行われましたね。

特に介護業界は職員の離職も相まって事業が継続できない施設も出てきた…。

そうなれば不採算部門から人を配置換えして事業所を閉鎖させるのは仕方のない判断でしょう。

でも、不採算部門の多くはもちろん決まっているんですよ…。

過疎地域のサービスはもう戻らない…

不採算部門の多くは過疎地域…。

利用者さんを含めた人口自体が少なくて職員の人件費を含めたランニングコストをどうやっても上回らないだろうっていう地域ですね。

もともと、社会福祉法人や医療法人が地域のためっていう感じで赤字だけど他の事業で黒字だからまあ閉鎖せずに残していたって感じの事業所…。

もちろんもともといた事業所が赤字だったんだから新規のサービス事業所参戦はほぼ皆無。

地域の方々のためにと地元の法人が地域貢献のために事業を運営していたところは経営悪化で撤退…。

過疎地域のサービスは今後よほど大きな地域加算がない限り撤退したまま。

過疎地域では介護サービスが受けられないまま…。

すでに【公式】ケアマネ介護福祉士のエリアでは介護サービスを受けるために超高齢で介護状態になってから都心部へ引っ越す方もいるような状況…。

これが過疎地域の現状ですね。

訪問介護は報酬減が大きな理由

訪問介護に関しては今回の報酬改定により大きな報酬減となっています。

一番利益率が高いということで今回大幅な報酬減となりましたが、サービス付き高齢者向け住宅等のほぼ施設系といっていいような訪問介護によって利益を上げている所が大きな原因。

自宅を訪問しているタイプの訪問介護事業所さんに関しては介護業界においてスタートアップ企業になっている所も多く経営的にも未熟なため、高報酬でないとすぐに倒産してしまう…。

今回も、急な報酬減により今までのどんぶり勘定+α経営をしていた所は簡単に赤字転落したでしょう…。

コロナゼロゼロ融資の返済も始まってしまったため、新規で開業したところの多くはゼロゼロ融資の使い方もままならないままに借りた額によってはもともと利子すら払えないくらいだったなんて事もあることでしょう…。

訪問介護はスタートアップ企業ではなく安定した経営をしている企業が細々と行う業態へ変化してきている様子ですね。

通所介護は再編成の波

通所介護は利用者さんの多くがサービスの利用停止、事業所側もコロナ発生により閉鎖、休止を余儀なくされ、再編成が進みました。

どんなことがあっても通いたいという理由がない事業所は一気に利用者さんの現症となりましたね。

基本的になんとなくリハ特化型かなっていうデイサービスと昔ながらのデイサービスに関しては利用者減少が激しく、再獲得が困難だったような印象です。

しっかりとリハビリ特化している事業所に関しては新型コロナウイルスの影響はあったにしても、本当に元気な姿へ戻りたいという利用者さんを多く抱えていたり、コロナ後の身体機能低下を取り戻したいという理由で利用者さんの維持、再獲得を行えていた。

それに対し、なんとなくリハ特化かな?

みたいなデイサービスは、リハビリをしなくても死なないけど、コロナになったら死んでしまうっていう心理の利用者さんが多くコロナ禍でサービス利用が一気に鈍化した印象が強い。

そういった心象の利用者さんはコロナ禍での体力低下が著しく、リハビリ特化型のデイサービスではなく、機械浴があるようなデイサービスへの移り変わりが大きかった印象で、基本的に以前通っていたデイサービスに戻れる方が少なかった印象ですね。

また、もともと大規模法人の看板パワーで特に特色を打ち出さなくても集客ができていたデイサービスに関しては魅力度っていう意味でも低く、もともと集客能力が弱かったのもありコロナ禍後の利用者獲得が遅れているようですね。

もともと大規模法人のデイを利用している利用者さんの心理としては基本的に何かあった時に助けてくれるだろうという心理…。

これに関しては支援にあたるケアマネや胡坐をかき続けた大規模法人の職員にも責任の一端はあるでしょうが、家族や本人のコロナ感染時にショートステイや緊急入所を目論んでいたご家族や利用者さんを失望させるのには十分な理由となったことでしょう。

施設系はランニングコストとクラスターによる評判保持の戦いに負けた

施設系に関してはいたって単純…。

コロナ禍においてクラスターを発生させまくってしまった所に関しては、地域での評判もがた落ち…。

多くの職員が離職…。

求職者から選ばれない施設となったため、人員不足による施設運営自体が困難になったところも多い。

職員を確保するために派遣やスポットバイトを利用すると人件費が大きく跳ね上がってしまう…。

その割に評判が後を引き利用者さんの新規獲得が難しい…。

また、施設系は業界全体で感染症が流行ると面会ができないとか大きく制限するとか割と当たり前だった事実により施設入居をためらうご家族がめちゃめちゃ多かった印象ですね。

おかげでいつかは施設にという流れから、家で最期をという流れにいったん傾いた印象もあります。

施設全体の印象が新型コロナウイルスのまん延、施設内クラスターにより低下した中、それでもこの施設で最期を過ごしたい、過ごしてほしい。

そう思えるような施設が勝ち、選ばれなかった施設が潰れてきている印象ですね。

安い入居費用を売りにしていた施設に関してはこの物価高により利用料金へ転嫁しないとやっていけない状況。

利用料金が安いということで集客していたはずなのに気づいたら相場とそんなに変りない状況…。

こういった所は苦戦している印象ですね。

一方で光熱費や人件費を抑えながらも一定の評判を保持したり、コロナウイルスのまん延中も過度な制限を設けずに利用者さん、ご家族さんの満足度を上げることができたところっていうのは今も運営できている…。

また、評判が悪くとも経営が上手かったり長年の運営で内部留保が潤沢だったところに関しては運営が続いている状況ですがこれからも運営できるかどうかはわからないっていう所ではありますね。

介護業界が再編成されている昨今

引用記事の通り、本当に介護業界は再編の時期となっています。

経営の見直し、事業所ごとの魅力とその発信方法。

開設すれば営業なしで仕事が来る時代はすでに終了しており生き残り戦略をしっかりと立てた所が残っている…。

実際に新型コロナウイルスのまん延前ではこれといった魅力を発信できていなかった所も企業全体、法人全体での魅力、事業所ごとの魅力を再設定できた所は再び集客が成功し、新型コロナウイルスのまん延前以上に利用者さんを獲得している所も実際にあります。

この記事を見ている皆さんが運営、働いている場所の魅力や強みは何ですか?

そしてその魅力を発信できていますか?

介護業界の再編成に気付いて動いている企業はすでに実績が出始めている…。

この状況で動けない企業に未来はない。

それが今の介護業界なのかもしれません。

この記事を書いた【公式】ケアマネ介護福祉士のプロフィール

高校生からホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)を取得しアルバイトにて老人保健施設にて勤務。そのままアルバイト先の老人保健施設へ入職。
大規模法人にて、グループホーム、老人保健施設、通所リハビリテーションにて介護職員として従事。
経験を活かしながら介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し8年ほど従事。
その後自身の転居をきっかけに、相談員、介護職員を兼務しながら施設ケアマネとして5年間勤務。中間管理職を経て居宅ケアマネへ転身。
現在は主任介護支援専門員として日々子育てと仕事に全力で奮闘中。同時にブログも運営中。

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