介護業界では「介護福祉士」や「ケアマネージャー」など、さまざまな資格や研修があります。
しかし、介護を必要としている人にも幅広いタイプがあり、障害の区分や仕事内容によって、取得しておくべき資格も異なります。
そこで今回は、障害を持っている人の外出をサポートするために必要な「移動支援従業者養成研修」について紹介していきます。
- 移動支援従業者養成研修とは?
- 移動支援従業者養成研修はどんな職場に必要?
- 移動支援従業者養成研修を取得するメリットは?
このような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
記事でわかること
移動支援従業者養成研修とは
移動支援従業者養成研修とは、障害を持っている人の外出をサポートするための知識や技術を習得するための研修です。
研修課程は下記の通り3つ存在し、支援対象者の障害によって異なります。
- 視覚障害者移動支援従業者養成研修課程
- 全身性障害者移動支援従業者養成研修課程
- 知的障害者移動支援従業者養成研修課程
ホームヘルパーでは、利用者の代わりに買い物することはできますが、一緒に外出することはできません。
しかし、さまざまな障害を持つ人に合わせて、外出をサポートできる移動支援従事者(ガイドヘルパー)が不足しているのが現状です。
移動支援従業者養成研修のカリキュラム
それでは次に、研修課程ごとのカリキュラムを見ていきましょう。
視覚障害者移動支援従業者養成研修課程
視覚障害者移動支援従業者養成研修課程では、視覚障害者の社会参加の推進を目的としており、視覚障害者の外出をサポートするための知識と技術を学習します。
また、視覚に障害のある人は参加することができません。
科目 | 時間 | |
講義 | 障害者福祉に関する制度及びサービス | 3時間 |
身体障害者ホームヘルプサービスに関する知識 | 3時間 | |
サービス利用者の理解 | 3時間 | |
移動支援の基礎知識 | 2時間 | |
演習 | 移動支援の基本技術 | 2時間 |
屋内の移動支援 | 2時間 | |
屋外の移動支援 | 4時間 | |
応用技能 | 1時間 |
全身性障害者移動支援従業者養成研修課程
全身性障害者移動支援従業者養成研修課程では、脳性まひや筋ジストロフィーなどの全身性障害に関する基礎知識と、車いすやストレッチャーなどによる移動支援の方法を学習します。
また、外出時の食事やトイレの支援方法も内容に含まれています。
科目 | 時間 | |
講義 | 障害者福祉に関する制度及びサービス | 3時間 |
身体障害者ホームヘルプサービスに関する知識 | 3時間 | |
サービス利用者の理解 | 3時間 | |
移動支援の基礎知識 | 3時間 | |
演習 | 基礎的な介護技術 | 1時間 |
移動支援の方法 | 3時間 |
知的障害者移動支援従業者養成研修課程
知的障害者移動支援従業者養成研修課程では、知的障害者の基礎知識や心理状況と、移動支援の方法を学習します。
知的障害者は状況によって、「できること」と「できないこと」が変化するため、臨機応変なサポートが求められます。
科目 | 時間 | |
講義 | 障害者福祉に関する制度及びサービス | 3時間 |
身体障害者ホームヘルプサービスに関する知識 | 3時間 | |
サービス利用者の理解 | 5時間 | |
移動支援の基礎知識 | 2時間 | |
演習 | 移動の支援に係る技術 | 6時間 |
また、以下の資格を取得している人は、講義科目の指定時間が免除されます。
- 介護福祉士
- 居宅介護職員初任者研修修了者
- 障害者居宅介護従業者基礎研修修了者
- 障害者(児)居宅介護従業者養成研修1~3級課程修了者
- 介護保険法上の訪問介護員(ホームヘルパー)
- 介護福祉士実務者研修修了者
- 介護職員基礎研修修了者
- 介護職員初任者研修修了者
【視覚障害者移動支援従業者養成研修課程の免除科目】
免除される科目 | 時間 |
障害者(児)福祉の制度とサービス | 2時間 |
ホームヘルプサービス概論 | 2時間 |
ホームヘルパーの職業倫理 | 1時間 |
視覚障害者の疾病・障害の理解 | 2時間 |
障害者(児)の心理 | 1時間 |
【全身性障害者移動支援従業者養成研修課程の免除科目】
免除される科目 | 時間 |
障害者(児)福祉の制度とサービス | 2時間 |
ホームヘルプサービス概論 | 2時間 |
ホームヘルパーの職業倫理 | 1時間 |
障害者(児)の心理 | 1時間 |
【知的障害者移動支援従業者養成研修課程の免除課程】
免除される科目 | 時間 |
障害者(児)福祉の制度とサービス | 2時間 |
ホームヘルプサービス概論 | 2時間 |
ホームヘルパーの職業倫理 | 1時間 |
障害者(児)の心理 | 1時間 |
(参考:東京都福祉保健局”東京都障害者(児)移動支援従業者養成研修事業実施要綱”平成28年1月25日)
移動支援従業者養成研修修了者の就業場所について
移動支援従業者養成研修を修了した方は、下記の様な職場で就業することが可能です。
- 訪問介護事業所
- 重度訪問介護事業所
それぞれ詳しく紹介していきます。
訪問介護事業所
サービスの1つとして、移動支援事業をおこなっている訪問介護事業所もあります。
訪問介護の基本は、身体介護・家事援助・通院・乗降介助ですが、移動支援がない場合も少なくありません。
また、事業所によっては、障害者だけでなく高齢者の介護をおこなっている場合もあります。
重度訪問介護事業所
重度訪問介護事業所では、重度の肢体不自由・重度の知的障害・重度の精神障害を持っている人の自宅に訪問して支援をおこないますが、訪問介護事業所と同様に、移動支援事業をおこなっている場合もあります。
ただし、重度訪問介護事業所で働くためには「重度訪問介護従業者養成研修」を修了している必要があります。
重度訪問介護従業者養成研修については、以下の記事で詳しく解説しているので、こちらも参考にしてみてください。
重度訪問介護従業者養成研修について~研修内容や働ける場所についてご紹介!その他
これまでに紹介してきた「訪問介護事業所」や「重度訪問介護事業所」以外にも、以下のような職場では、移動支援従業者養成研修を活かして働くことができます。
- 障害者支援施設
- 障害者グループホーム(共同生活援助)
- 障害者デイサービス(生活介護)
- 放課後等デイサービス
- 就労移行支援事業所
上記のように、移動支援従業者養成研修を活かせる職場は多岐にわたります。
キャリアの選択肢を広げたい人は、取得しておいて損はないでしょう。
移動支援従業者養成研修を修了するメリット
それでは最後に、移動支援従業者養成研修を修了するメリットについて紹介していきます。
移動支援従業者養成研修を修了するメリットは、以下の3つです。
- スキルアップ
- 需要が高まる=採用されやすい
- 経験を積みキャリアップも可能
それぞれ詳しく紹介していきます。
スキルアップ
移動支援従業者養成研修では、移動支援の知識だけでなく、障害者に関する基礎的な知識が身に付くため、幅広い業務に活かすことができます。
介護福祉の職員としてスキルアップしたいと考えている人なら、受けておくべきでしょう。
需要が高まる=採用されやすい
障害者が居宅介護を利用する件数は、年々増加しています。
移動支援従業者養成研修は、実務経験がなくても取得できるため、これから介護福祉業界に転職する人には大きな武器となるでしょう。
経験を積みキャリアップも可能
移動支援従業者養成研修を修了して、さまざまな業務をこなしていくと、サービス管理責任者などへキャリアアップも可能です。
将来的に管理職を担当したいなら、さまざまな領域の業務を経験しておく必要があります。
高齢者だけでなく、障害者に対する知識や技術を獲得できるため、移動支援従業者養成研修を受けておくメリットは小さくありません。
まとめ
今回は、移動支援従業者養成研修についてお伝えしました。
移動支援従業者養成研修とは、障害を持っている人の外出をサポートするための知識や技術を習得するための研修です。
障害者が居宅介護を利用する件数は年々、増加しているため、移動支援従業者養成研修を活かせる職場も増えてきています。
スキルアップしたい人や転職の武器がほしい人には、ぴったりの研修なので、ぜひ検討してみてください。
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