介護・福祉・医療の現場で活躍するリハビリ専門職とは

病気やケガ等により麻痺・言語障害等の後遺症が残り、リハビリテーションを必要とする人たちがいます。

この記事では、リハビリテーションを必要とする人たちをサポートする専門職の特徴や仕事内容について解説するとともに、活躍する施設・機関を紹介します。

リハビリテーションとは

リハビリテーションとは、病気やケガ等による後遺症や障害を持つ人が、社会復帰を目指すために行う訓練のことをいいます(参考1)。

例えば次のような疾患・状況で行われます(参考2)。

  • 骨折や変形性関節症などの運動器疾患に対するリハビリテーション
  • 肺炎や尿路感染に伴う廃用症候群に対するリハビリテーション
  • 心筋梗塞や心不全に対する心臓リハビリテーション
  • リンパ浮腫相談、がんのリハビリテーション
  • 慢性閉塞性肺疾患に対する呼吸リハビリテーション

リハビリ専門職とは

上記のような訓練を実際に行うのが、リハビリ専門職の仕事です。患者に寄り添い、専門的知識と技術をもって患者の身体機能の回復をサポートします。

これらのリハビリ専門職を一つずつ取り上げ、その役割等を紹介します。

理学療法士

理学療法士は、PT(Physical Therapist)と呼ばれることもあり、身体に障害がある人たちに対し、医師の指示にもとづき、運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療を行います(参考3)。

仕事内容

理学療法士は、脳卒中患者の歩行訓練をしたり、腕を骨折した人が動作できるようにトレーニングをしたりすることが、主な仕事内容です。
また、患者の筋力・持久力・痛み等の心身機能や歩行等の基本動作の能力判定を行い、その結果に基づいて適切なサポートやアドバイスをします。

理学療法士になるには

理学療法士は国家資格で、毎年2月に行われる国家試験に合格すると、理学療法士の資格を取得することができます。
国家試験を受験するためには、文部科学大臣指定の養成校(4年制大学や専門学校等)で3年以上学び、必要な知識と技術を習得して卒業し、受験資格を得る必要があります(参考4)。

なお、既に作業療法士(後述)の資格を持っている人は、文部科学大臣の指定する養成校で2年以上学ぶことで理学療法士国家試験の受験資格が得られます。

理学療法士についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
理学療法士 理学療法士とは? 仕事内容、資格取得のメリットについて分かりやすく解説

作業療法士

作業療法士はOT(Occupational Therapist)と呼ばれることもあり、患者の認知機能などの心身機能や、食事動作・入浴・排泄といった日常生活機能(ADL)などのリハビリテーションのサポートを行います。
作業療法士の「作業」とは、食べる、入浴する、家事や仕事、趣味活動などの人が関わるすべての活動のことを指します。

仕事内容

作業療法士は、疾病、障害、精神疾患等が原因で、上記のような「作業」が行えなくなった人たちに対し、日常生活上で必要な動作のなかで問題点を見出し、適切な作業ができるように訓練したり、アドバイスしたりします(参考5)。

作業療法士になるには

作業療法士は、先述の理学療法士と同じように、毎年2月に行われる国家試験に合格すれば、作業療法士の資格を取得することができます。
国家試験を受験するためには、文部科学大臣指定の養成校(4年制大学、短期大学や専門学校等)で3年以上学び、必要な知識と技術を習得して卒業する必要があります(参考6)。

作業療法士についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
作業療法士とは? 仕事内容、資格取得のメリットについて分かりやすく解説

言語聴覚士

言語聴覚士はST(Speech Therapist)と呼ばれることもあり、「話す」「聞く」「飲み込む」といった能力を回復・向上させることを専門としています。

仕事内容

言語聴覚士とは、発話や聞こえ、嚥下(えんげ、食べ物を飲み込むこと)に障害のある患者に対し、リハビリテーションを行います。
例えば、脳卒中の患者が後遺症として言語障害(発語が難しい等)を負った場合、その原因・症状に合わせて、物品や絵カードを見せ、その名前を言う等の訓練があります。

言語聴覚士になるには

言語聴覚士になるためには、国家試験に合格する必要があります(参考7)。
国家試験の受験資格(国家試験を受験するための資格)を得るためには、次のような方法があります。

  • 高校卒業後に指定の養成校に進学し、卒業する
  • 大学卒業後に指定の大学・大学院の専攻科や言語聴覚士養成校に進学し、卒業する

言語聴覚士についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
言語聴覚士の仕事内容とは? 資格の取り方、取得メリットを分かりやすく解説

視能訓練士

視能訓練士はCO(Certified Orthoptist)と呼ばれることもあり、小児の弱視や斜視の視能強制など、視機能の検査を行います。

仕事内容

視能訓練士の仕事は次のとおりです(参考8)。

業務 内容
視能矯正 弱視や斜視の視能訓練
正常な両眼視機能の獲得を目的とした視能訓練
視機能検査 視力検査、屈折検査、眼圧検査、視野検査、眼底・前眼部の写真撮影と画像診断検査等
健診(検診)業務 母子保健センター等で実施される3歳児健康診査における視覚検査等
ロービジョンケア 眼疾患や外傷などにより視機能が低下した状態(ロービジョン)患者に対し、拡大鏡・単眼鏡・拡大読書機等の選定・説明等

視能訓練士になるに

視能訓練士は国家資格であるため、年に1回実施される国家試験を受験し合格すれば、視能訓練士資格を取得することができます。
受験資格(国家試験を受験するための資格)は、次のいずれかの方法で取得することができます(参考9)。

  1. 視能訓練士養成校を卒業する
  2. 短大卒以上で視能訓練士養成所(1年以上)を修業
  3. 外国の視能訓練士の学校を卒業し、日本の養成学校で学んだのと同等の技術があると厚生労働大臣が認定される

視能訓練士についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
視能訓練士とは? 資格の取り方・仕事内容について分かりやすく解説

歩行訓練士

歩行訓練士とは、視覚障害生活訓練等指導者のことを指し、目の不自由な人が杖を使って安全に歩行できるよう訓練・指導を行う専門職です(参考10)。
国家資格ではありませんが、厚生労働省が認定する資格の一つです。

仕事内容

歩行訓練士は目の不自由な人が杖を使って安全に歩行できるよう、歩行訓練を指導します。また、点字やパソコンを使って、他人とコミュニケーションを図ることができるように技術を教示します。その他、調理・掃除・食事など日常生活に必要な動作・技能の指導を行います。

歩行訓練士になるには

歩行訓練士になるには、次の2つの方法があります(参考11)。

ルート 内容
養成課程を受講し修了 4年制大学を卒業、または視覚障害リハビリテーション関連施設で2年以上、実務経験を積み、厚生労働省委託の日本ライトハウスの視覚障害生活訓練等指導者養成課程を受講する
学科を卒業 国立障害者リハビリテーションセンター学院視覚障害学科に進学し、卒業する

歩行訓練士についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
歩行訓練士とは? 資格の取り方・仕事内容について分かりやすく解説

柔道整復師

柔道整復師は、昔から「ほねつぎ」「接骨師」として広く知られ、骨折・脱臼等の損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定を行う専門職です(参考12)。

仕事内容

柔道整復師はスポーツや日常生活の中で生じた、打撲、捻挫、脱臼及び骨折などの各種損傷に対して、外科手術、薬品の投与等の方法ではなく、手を用いた応急的若しくは医療補助的方法により、その回復を図ります(参考13)。

柔道整復師になるには

柔道整復師は国家資格で、年に1回実施されている国家試験に合格すれば取得することができます。
受験資格を得るためには、養成施設(専門学校・短大・大学)において、解剖学、生理学、病理学、衛生学その他必要な知識及び柔道整復の技能を3年以上修得したうえで、国家試験を受験し合格する必要があります(参考14)。

柔道整復師についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
柔道整復師とは? 仕事内容・資格の取り方について分かりやすく解説

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、体の痛みやこりなどの症状を訴える人たちに対して、撫で・揉み・押しなどの刺激を身体に与えたり、マッサージをしたりします。
結果、身体のこりをほぐし血行を良くしたり、脊椎のゆがみを矯正することにより、症状の緩和・改善、体力回復、健康増進を図ります(参考15)。

仕事内容

あん摩マッサージ指圧師は、治療院や介護施設、医療機関等において、次のような施術を行います。

あん摩 身体のコリを解消するために、押し・撫でる
マッサージ リンパの流れを良くするため、撫でる・擦る
指圧 筋肉や神経等の調整を目指すため、指を使ってツボを押して離す

あん摩マッサージ指圧師になるには

あん摩マッサージ指圧師は国家資格です。
資格取得のためには、高校卒業後、文部科学大臣か厚生労働大臣が認定する学校や養成施設で決められた期間(3年以上)学習し、国家試験に合格しなければなりません(参考16)。

あん摩マッサージ指圧師についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
あん摩マッサージ指圧師 あん摩マッサージ指圧師とは? 仕事内容・資格の取り方について分かりやすく解説

リハビリ専門職が活躍する介護・福祉・医療施設とは

リハビリテーションに関わる専門職は、どのような場所で活躍しているのでしょうか。ここでは、専門職が活躍する施設・機関を紹介します。

デイケア

デイケアは、主に要介護高齢者等が通うリハビリテーションを指します。
デイケアは主として介護老人保健施設、病院等に併設されており、要介護高齢者等がここへ通い、リハビリ専門職から「機能の維持回復訓練」や「日常生活動作訓練」を受けます。

デイケアについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
デイケア(通所リハビリテーション)とは?役割や人員基準、働くメリットなどを詳しく解説!

介護老人保健施設

介護老人保健施設とは、医療機関に入院していた要介護高齢者等が、急性期の治療が終わり、今後は回復期でのリハビリを中心とした生活に移行する時に入所する施設です。
施設内では、医学的な管理を受けながら、介護(食事、入浴、排泄等)や看護を受けます。また、リハビリ専門職によるリハビリテーションを受けます。
自宅に復帰することが目標で、主に要介護1以上の人が対象です。

介護老人保健施設についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
介護老人保健施設とは? 仕事内容や人員基準、必要な資格について詳しく解説!

病院

病院は、何らかの原因で身体・精神上の機能不全を起こしてしまった際に、その治療を行い、その後回復をするための医療施設です。
急性期では主に患者の治療を行い、その後の回復期において機能回復を図るためのリハビリテーションを提供します。
総合病院などの大規模な病院では、リハビリテーション科を専科として設けていることも珍しくありません。

児童発達支援、放課後等デイサービス

児童発達支援放課後等デイサービスは、発達障害などを持つ子どもが通所する施設で、通ってくる子ども等に対し、リハビリ専門職が専門知識・技術に基づき、サポートを行います。
サービスの概要は次のとおりです。

サービス 内容
児童発達支援施設、センター 小学校就学前までの障害のある子どもが通い、支援を受けるための施設です(参考17)。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、遊びや学びの場を提供する。
放課後等デイサービス 6歳〜18歳までの障害のある子どもが、放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる福祉サービスです(参考18)。「障害児にとっての学童」といえる。

児童発達支援についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
児童発達支援とは?仕事内容や職種、持っていると役立つ資格、やりがいについて詳しく解説!

放課後等デイサービスについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
放課後等デイサービス 放課後等デイサービス(放デイ)とは?仕事内容や職種、持っていると役立つ資格、やりがいについて詳しく解説!

まとめ

日本がますます高齢化しているなかで、リハビリ専門職の果たす役割は増え、その重要性が高まっています。

また、人々のニーズは多様化しており、「その人らしい、いきいきとした生活を支援する」専門職の存在が求められています。

リハビリ専門職は、専門性の高いリハビリテーションを提供するとともに、広い視点を持ったジェネラリストとしての活躍が期待されているといって良いでしょう。

参考文献

  1. 日本障害者リハビリテーション協会(JSROD)「リハビリテーションの職種とは?3つの専門職とその他の職種をあわせてご紹介」
  2. 地方独立行政法人市立大津市民病院「リハビリテーション科・リハビリテーション部」
  3. 公益社団法人日本理学療法士協会「理学療法士になるには」
  4. 公益社団法人日本理学療法士協会「理学療法士になるには」
  5. 一般社団法人日本作業療法士協会「作業療法士になるには」
  6. 一般社団法人日本作業療法士協会「作業療法士になるには」
  7. 一般社団法人日本言語聴覚士協会「言語聴覚士を目指す」
  8. 公益社団法人日本視能訓練士協会「視能訓練士の業務内容」
  9. 公益社団法人日本視能訓練士協会「視能訓練士の業務内容」
  10. 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET「歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)」
  11. 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET「歩行訓練士(視覚障害生活訓練等指導者)」
  12. 公益社団法人日本柔道整復師会「柔道整復師とは」
  13. 厚生労働省 職業情報提供サイト「柔道整復師」
  14. 厚生労働省 職業情報提供サイト「柔道整復師」
  15. 厚生労働省 職業情報提供サイト「あん摩マッサージ指圧師」
  16. 厚生労働省 職業情報提供サイト「あん摩マッサージ指圧師」
  17. 厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
  18. 厚生労働省「放課後等デイサービスガイドライン」