身体拘束廃止未実施減算で収入10パーセント減のとんでもない罰則強化

介護のニュースについて紐解いていくべく記事の執筆を担当させていただくことになりましたブログの運営と主任介護支援専門員の二足の草鞋で活動をしており、居宅ケアマネとして奮闘中の

【公式】ケアマネ介護福祉士と申します。

連載9回目はコチラの記事について考えていきましょう⇩⇩

厚生労働省は来年度の障害福祉サービス報酬改定で、利用者の不当な身体拘束を防ぐための取り組みを怠っている事業所へのペナルティを強める。【Joint編集部】

現行で5単位/日の「身体拘束廃止未実施減算」を、最大で所定単位数の10%まで拡大する。減算幅は施設・居住系サービスと訪問・通所系サービスとで分けた。次の通りだ。

厚労省は「身体拘束廃止未実施減算」の拡充を今年度内に告示する。6日、来年度の障害福祉サービス報酬改定の全容を決定。その中に盛り込み、既にパブリックコメントの意見募集も開始した。

障害福祉サービス事業所には、利用者の不当な身体拘束を防ぐために下記の措置が義務付けられている。「身体拘束廃止未実施減算」は、これを実施していない場合に適用されるもの。同様の減算は介護保険にも設けられている。

《 身体拘束を防ぐための措置 》
◯ やむを得ず身体拘束を行う場合、その態様、時間、利用者の心身の状況、やむを得ない理由などの必要事項を記録する
◯ 身体拘束適正化の委員会を定期的に開催し、その結果を職員に周知徹底する
◯ 身体拘束適正化の指針を整備する
◯ 職員の虐待防止の研修を定期的に実施する

(引用:joint介護ニュース)

最早スタンダードな身体拘束防止の措置…

身体拘束を防止するためにいろいろやらなくちゃいけない…

10年くらい前からかな?

もうだいぶ前から当たり前になっているんですが身体拘束をしないようにする対策をしなくちゃいけなくなりましたね。

身体拘束なんか毛頭していないのにやらないといけない身体拘束委員会的な会議…。

【公式】ケアマネ介護福祉士も施設ケアマネをしていた時に身体拘束廃止委員会とか、虐待防止委員会的な会議に次々参加していました。

本当にいろんな会議があるもんだなあと思いながら参加してはいましたけど…。

よく一般職員とか現場リーダークラスだと、無駄な会議が多いと嘆きますが、身体拘束廃止の委員会ののみにならず、大体がやらないと収入が減算されるため、会議をやっていることが多いですね。

そのほかにも、監査(現在の運営指導)で疑われそうなミトンやつなぎの腹なんかを処分したりとか、ショートステイ利用時に着てきちゃう人とか、持ってきちゃう人が居ないかのチェックなんかもありましたね…。

身体拘束に関わる委員会をやらなかった場合は身体拘束廃止未実施減算を受ける形になるので報酬の10%減算されます。

介護報酬の10パーセントなので、特別養護老人ホームとかある程度の規模の施設だと職員のボーナスを一切なくしてもまったく
もって足りないくらいの収入減ですね…。

つまり無駄な会議なんかないんです…。

じゃあ会議は減算にならないように形だけで適当にやってだけおけばいいんだからあんなに長々やっても仕方ないでしょう?
そう思う方々がいるのもわかります。

ただ、もし適当に会議をやっていて、そんな会議はやってないのとおんなじだってみなされてみんなのボーナス全額カットや経営が苦しくなってリストラとかになっても大変でしょ?

ボーナスや自分たちの給料のためにしっかりと会議をやっているんですよね。
あっ…。

利用者さんのよりよい生活のために真剣に話し合う機会を会議という形で行っているんでした…。

決してやらないと減算されてボーナスが吹き飛んじゃうから仕方なしにやっているわけじゃないんでした…。

身体拘束をしちゃいけないわけじゃない…

自身のブログでは何度も言ってますけど、身体拘束をしちゃいけないわけじゃなくて、本当に必要かを判断しつくしてから身体拘束をしましょうっていう法律です。

試験に何度となく出てきて、みなさんはご存じだと思うんですけど、

  • 「切迫性」
  • 「一次性」
  • 「非代替性」
  • の三つですね。
    簡単に説明すると、命に関わる大きな問題が起きていて、一刻も早く対応しないと命の危険があるよっていう状態の「切迫性」

    例えば体をかきむしりまくる利用者さんで、もうこれ以上かきむしったら皮膚状態的に命に関わるくらい炎症しているとか、点滴や胃瘻をしていて、栄養が全然体に入らなくてそのうち死んじゃうかもしれないみたいな時が適応するんですかね?

    もちろん適応するかどうかは介護、医療等々の関わるすべての職種が判断する必要があります。

    ずっとしているわけじゃなくて、身体拘束が本当に必要かも含めて判断するため、24時間身体拘束をしていない、一時の期間で常に身体拘束を行うことが必要かを判断するための「一次性」

    例えば寝ているときは外しますとか、精神的に落ち着いている時に外してみます。

    出来るだけ外せるように試みてます。みたいなことをしっかりと記録。

    身体拘束している時も、興奮しているからこのまま身体拘束を続けますとか、落ち着いている様子が見られるので外そうと試みたけど、再び興奮状態になったのでそのままつけていますとか、寝ていて身体拘束を外しましたとかそういった記録をかなり細かく残す必要があります。

    本当に身体拘束以外に手立てはないのか?

    もしかしたら他の手もあるんじゃないか?

    そういったことをすべて試した結果、どうしても身体拘束以外に手立てがないよっていう時の「非代替性」

    例えばこんな声掛けしたときは落ち着いたから身体拘束いらないんじゃないか?

    これをやってるときは落ち着いていて危険な行為をしないから身体拘束いらないんじゃないか?

    そんな感じで身体拘束以外の手立てを全て出し尽くしたよっていう証拠が必要。

    もちろん、一回やったら終わりじゃなくて、緊急性、一時性についても常に検討していますよっていう状態で初めて身体拘束を行うことができます。

    もちろんそれでも勝手にやっていいっていうものではなく、同意書的なものが必要になりますから、多くの場合ご家族から身体拘束実施に伴う同意書だったり、経過の報告をしなければなりません。

    この三つを満たしたときに身体拘束を行うっていうのが介護業界のルール。

    ただ、実際は身体拘束すると上記で説明したとおりめちゃめちゃ書類が増えるし、本当にこの三原則にのっとって身体拘束が必要かを判断しつくしていないって判断されたり、ちょっとでも不備があれば四月から10%の報酬減になる…。

    今でさえ、一日5単位の減収入。

    100人の大型施設なら一日500単位…。5000円の収入減…。

    これが四月からは加算の取得状況にもよりますがなんと、一人当たり一日一万円に足りないくらいの介護保険報酬…。

    10%の報酬マイナスということは大きく見積もって一日1000円のマイナス…。

    ということは100人いれば一日10万円のマイナスですね。

    100人規模の特別養護老人ホームでは事務職やらなんやらいろんな人が働いていますが、とてもやりくりで一日10万円を削減できるようなものじゃないです。

    つまり、事実上身体拘束廃止未実施減算と判断されれば大赤字も大赤字…。

    身体拘束を行っていた期間にもよりますが、経営が大きく傾いてもおかしくありません。

    そんな怖い橋を渡って身体拘束する施設はないでしょう。

    なによりどこどこの施設が不適切な身体拘束していましたっていうことが行政によって公表されてしまいます。

    どれだけ身体拘束は仕方のないことだったと施設側が訴えたとしても、行政の発表は不当な身体拘束を行っていた施設として発表するだけ…。

    めちゃめちゃ施設にとってイメージダウンですね。

    じゃあ疑わしきことはやらないほうがいいよねっていう話なので、基本的に実情としてほとんどの介護事業所は身体拘束は何があっても行いません。

    やっちゃいけないわけじゃないけど、実際問題やっちゃいけない…。

    じゃあ一体どうするのか?

    デイサービス、ホームヘルパー、ショートステイとかの在宅サービスだと、自宅にいるときはサービス介入時に身体拘束していた場合はサービス利用を断るとか、送迎時やケア前に身体拘束具を外させてもらう。

    こちらからはケア終了後も身体拘束具を付けないので、家族にその後をゆだねるなんて言うのが当たり前。

    じゃあ逃げ場のない施設系サービスはどうするのか?

    本当にどうしようもない場合には、開き直って病院になんだかんだ理由をつけてお願いしたり、強制的に退去の方向へ話を持って行ったりするのが今までの実情でした。

    どんなことが身体拘束になるかどうかの基準もあいまいなこの社会において、やらないほうがいいに決まってるよね…。

    今時は『ちょっと待ってて』というお決まりの声掛け一つでも虐待にあたるんじゃないかといわれる時代…。

    身体拘束についても同様で国がはっきりと身体拘束だよって言っているケースっていうのがものすごく少ないので、実際は何が身体拘束にあたるのか?

    身体拘束どころか虐待と認定されてしまうのか?

    身体拘束や虐待の基準がはっきりとしないので対策もどこまでやればいいのかわからない…。

    そんな基準のないことをどうやって未然に防ぐのかっていう手探りの会議なんでそりゃあ定期的な身体拘束や虐待防止の会議は時間もかかるし、本当に

    みんなで頭を抱えて誰がこれを虐待とするのか?

    身体拘束だと位置づけるのか?

    みたいな雰囲気になります。

    結局それを誰も決められないので終わりが見えないダラダラの会議になりやすい…。

    結局この会議やってる意味あるのって思う人が出てきてもおかしくないのはわかりますけど、何度も言うようにしっかりと中身ある会議にしないととんでもない減算になるのである程度の落としどころが見つかるまでは会議を続けないといけません…。

    過剰に身体拘束や虐待を恐れた結果が…

    更に懸念しなければならないのは今後の介護職員の働き方…。

    身体拘束や虐待の定義がいまだに曖昧の中、過剰に恐れて今までの業務が怖くてできなくなる可能性もあります。

    今まで行っていたケアは本当に正しかったのか?

    虐待や身体拘束に当てはまらないのか?

    今まで行っていた声掛け一つも見直す必要が出てくるかもしれません。

    今までの介護に慣れていた職員が疲弊し、介護業界を去ることにならなければいいのですが…。

    【公式】ケアマネ介護福祉士的に身体拘束が必要な人は確実に病院へ…

    病院も身体拘束が厳しくなった…

    今年の四月は医療、介護保険のダブル改定…。

    精神科は除外とか抜きで病院でも身体拘束に関して厳しくなるみたいですね。

    病院では入院時にさらっと身体拘束の同意書をもらっていればまあまあ簡単に医療行為の妨げにならないようにっていうことで身体拘束が出来ていましたが、四月からはちょっとそんなわけにはいかなくなったみたいですね。

    介護保険同様の水準で考えるとの発表がありました。

    ということは、今後本当に身体拘束が必要な患者さんはどこに行っちゃうんでしょうね?

    薬剤でべろんべろんにするのかって話にもなりかねませんが、それについても一応薬剤で身体の自由を奪うってことで身体拘束に当てはまるからその辺もダメなことにはなっています…。

    実際問題、その辺をうまいこと医療はやっていくのかなって思うところではありますけど…。

    見出しには身体拘束が必要な人は病院へって書いたものの、どこにも行き場がなくなってきますね。

    在宅に帰して、在宅での身体拘束を推進するのかな?

    国はずっと前から地域包括ケアシステムを押しています。

    障害があっても高齢でも基本的には住み慣れた環境で暮らしてくださいね?

    そのために地域は地域独自のシステムを作り上げてください。

    それが地域包括ケアシステムっていうやつですね。

    ということは身体拘束が必要な利用者さんも在宅へっていう方向なのでしょうか?

    実際に一般家庭での身体拘束は基本的に黙認しているのが今の現状。

    デイサービスやショートステイの利用中は普通の服を着ているけど、家族は常につなぎ服を着せていたり、ミトンや拘束具で自由を奪っているなんてパターン…。

    最近はあまり見なくなりましたが、10年~20年前までは結構見てたなっていう印象があります。

    ただ、10年~20年前は身体拘束をする家族さんと一緒に住んでいましたが、最近は独居の高齢者さんも多い。

    そんな中で、身体拘束を誰がするのかって、誰もしませんよね?

    もちろん他人に危害を加えるような症状の方々は地域に居れば警察や救急隊、地域包括支援センターの職員等が介入して、精神科の病院へ入院なんてこともあるかとは思います。

    ただ、例えば自ら胃瘻を抜いてしまう、鼻腔チューブを抜いてしまう。

    身体を必死にかきむしって血だらけになってしまうなんていう自傷行為はあるものの、他害はない人っていうのはもちろんそのまま地域に取り残されてしまうでしょうか?

    行き場をなくして高齢者は医療を受けにくくなる?いや…高齢者だけじゃない…

    本当に介護保険同様に身体拘束廃止に取り組むのであれば高齢者だけではなく医療行為自体がはなかなか難しいものになるかもしれませんね。

    今まで気軽に身体拘束を行って治療していたのが、身体拘束を行えないとなれば治療している間、ご家族が24時間付き添ってください。

    そうじゃなければ治療しません…。

    そんなことが起きてくるかもしれませんね。

    身体の期間が未発達で食事を食べられないからチューブを入れている小児や乳幼児に関しても身体拘束ができないので、うっかり自分で管を抜いちゃうかもしれない…。

    家族が24時間長い期間付き沿うとなれば生活保護まっしぐらな気がしますね…。

    小児だったり若年層なら付き添ってくれる人が居るかもしれませんが、高齢者に関してはずっと付き添ってくれる人が居るのかどうか…。

    居たにしても、きっと高齢の配偶者さんとかになるのかな…。

    体力的にめちゃめちゃつらいですよね。

    実際問題、身体拘束するっていうのはいつ危険行為があってもおかしくないから24時間の見守りが必要…。

    とても一人じゃ無理…。

    小児の子だって、両親が無職になっても二人だけじゃ無理でしょって思っちゃいます…。

    お金があれば家政婦サービスとかに頼るのかな?

    昔は病院専門の家政婦さんとか確かにいましたしね…。

    身体拘束が容認できない社会になるのは素晴らしいことだと思いますが、それによって行き場をなくした患者さんや利用者さん…。

    更には仕事を失うご家族さんが出てくる可能性は看過できません。

    介護離職ゼロを目指す上でこれが本当に正しい選択だったのかどうかは何年後、何十年後かにはっきりするのでしょうか。

    この記事を書いた【公式】ケアマネ介護福祉士

    高校生からホームヘルパー2級(現介護職員初任者研修)を取得しアルバイトにて老人保健施設にて勤務。そのままアルバイト先の老人保健施設へ入職。
    大規模法人にて、グループホーム、老人保健施設、通所リハビリテーションにて介護職員として従事。
    経験を活かしながら介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し8年ほど従事。
    その後自身の転居をきっかけに、相談員、介護職員を兼務しながら施設ケアマネとして5年間勤務。中間管理職を経て居宅ケアマネへ転身。
    現在は主任介護支援専門員として日々子育てと仕事に全力で奮闘中。同時にブログも運営中。

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