介護のニュースについて紐解いていくべく記事の執筆を担当させていただきつつ、ブログの運営と主任介護支援専門員の二足の草鞋で活動も継続中、居宅ケアマネとして奮闘中の
【公式】ケアマネ介護福祉士(【公式】ケアマネ介護福祉士 (@BWm7LDaUhfW1TPC) / X)と申します。
ご好評いただいているため、連載2年目に突入!!
ご感想をお待ちしております。
そんな連載27回目はコチラの記事について考えていきましょう⇩⇩
政府は29日、新たな総合経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を閣議決定した。【Joint編集部】
介護職員の賃上げ、職場環境の改善に向けた補助金を新たに支給する方針を打ち出した。
その財源として806億円を計上。常勤の介護職員1人あたり、およそ5.4万円の一時金を支給できる規模とした。
これで他産業との給与格差を縮小しつつ、人材の定着や離職の防止などにつなげたい考え。国会で野党から「不十分」といった批判が噴出しそうだ。
政府が新たな補助金の支給対象としたのは、今年度の介護報酬改定で拡充・一本化された処遇改善加算を取得している事業所・施設。今回も居宅介護支援などは対象外とされた。
補助金の使途は事業者の裁量に委ねられる。多職種の賃上げ、職場環境の改善などの経費に充てることも可能だ。このため、1人あたりの一時金の額は事業所・施設ごとに異なることになる。
補助金の支給要件は、介護現場の業務の棚卸し、効率化に向けた課題の見える化などに取り組み、職員の負担軽減の方策を立案すること。
人材確保がますます難しくなる今後を見据え、政府は賃上げとセットで生産性向上を前に進めることにこだわった。
厚生労働省は支給要件の細部をこれから詰める。処遇改善加算の上位区分の取得要件などと重なるように設計し、その算定率の向上につながる仕掛けとする方向で検討する。
補正予算が政府案通りに成立すれば、補助金の要綱やサービスごとの交付率などを速やかに示す構え。これまでと同様に、事業所・施設が計画書や実績報告書を都道府県に提出する制度とする。
厚労省の関係者は、「できるだけ現場に負担がかからない仕組みとなるよう十分に配慮する」と説明。「補助金をなるべく早く事業所・施設へ届けられるよう尽力する」と話した。
補助金の支給が始まる時期はまだ不透明。都道府県ごとの違いも生じる見通しだ。
今後、こうした補正予算案の是非は臨時国会で論じられる。例えば立憲民主党は、一時金ではなく恒久的な賃上げの実現に向けた独自の法案を提出する。
こうした対案に光が当たり、政府案の修正などを求める議論が活発化するかどうかが焦点だ。
独り歩きする介護職員への5.4万円の一時金…
物価高騰により、いろんな人が苦しんでいる。
特に介護保険みたいな物価や人件費が上がっても価格に反映できない事業はつらい。
介護保険という国が運営する制度でありセーフティーネットを担う人たちの生活も考えてあげなくちゃね?
みたいなところから介護職員一人当たり5.4万円の補助金をだしますっていう話が国会で持ち上がっていますが、その金額だけが独り歩きしている状態。
もしかしたら5万4000円もらえるぞとウキウキしている介護職員さんたちがいるかもしれませんが再度検討されている内容を確認していきましょう。
処遇改善加算を取得していることが条件
処遇改善加算の算定率は今年から一本化され、正確な取得率はまだ出ていませんが一本化前の取得状況は95%近く…。
稀有な部類ではあると思いますが、そもそも事業所が処遇改善を取得していない場合、この5.4万円は支給されないものです。
処遇改善加算が一本化され、まだ取得できていない事業所さんももしかしたらあるかもしれない。
この記事を見ている方は自身のお勤めになっている事業所が処遇改善加算を算定できているか再度確認が必要かもしれませんね。
常勤1人当たり5.4万円…
まず、基準となるのは介護職員の常勤数に合わせた補助金ということ。
全員が常勤という職場はないでしょう。
パートさんや臨時職員等に配る分の補助金は出ない。
補助金が常勤10人分の54万円出たとしても、パートさん等を含めた15人で分配するのであればもちろん満額はもらえません。
職場によっては満額もらえない、もしくはパートさん等には支給しないというところが出てくるでしょう。
どの職場でも、どんな働き方でも満額一律もらえる給付金ではないことをまず念頭に置いておきましょう。
生産性向上がセット条件
5.4万円の支給を受けるにあたり、生産性の向上がセット条件となっており少なくとも給料を5.4万円上げると介護職員のやる気が上がって生産性が1.1倍になりますみたいな言い訳は難しい。
つまり、この一人当たり5.4万円支給された中から生産性を上げる施策を取るための何かをしなくちゃいけないっていうことですね。
【公式】ケアマネ介護福祉士がぱっと思いつくお金の使い方としては
①介護職員の離職率を下げ、余計な新人教育という仕事を減らし、生産性を上げるために福利厚生を豊かにするためのお金にする
②介護職員の生産性を高めるために徘徊センサーや記録用デバイス等の機器を導入する費用にする。
③より質の高い介護職員を雇用するために紹介会社へ払う費用やSNS運用のコンサルを入れたりホームページを刷新したりするお金に使う
みたいな使い方がポピュラーになるのではないでしょうか?
そもそも事業所にお金が入るっていう話…
ここまで読んでいただいた方々は『介護職員に5.4万円なんて嘘っぱちだ』と思っているかもしれませんが、そもそも介護職員1人に対して5.4万円の補助金を出すっていう話なだけであり、介護職員に配るという話がそもそもの間違い…。
介護職員に配ってもいいというだけで、基本的には事業所が使い方を決める補助金になり、条件的にも直接介護職員に配る前提になっていません。
人件費高騰、人材獲得費用の増大、ランニングコストの上昇により基本的には事業所は経営が圧迫されている状態。
職員の還元に回せる事業所がどれほどあるのかも疑問な状態です。
介護職員が居ない部署には支給できない
仕組みが以前の特定処遇改善と変わらない支給方法ということで、基本的には処遇改善加算を算定できるところでしか算定できない…。
相も変わらずこの方式を使うとなればもちろんいつも通り居宅ケアマネ、福祉用具貸与事業所、訪問看護ステーションは介護職員が居ないので1円も入りません。
物価高騰も人材不足も状況は同じであるはずなのですが…。
大きい法人さんでもデイ、特養で働いている職員には支給できるけど、ケアマネや訪問看護には支給できない。
同じ会社に勤めているのに支給されない部署も出てくるでしょう。
その分を会社が補填するのかっていう問題も大きい…。
処遇改善が初められたばかりのころはそういったことを行う事業所もありましたが、やはり金銭的な負担も大きかったのでしょう。
ボーナス等で目に見えない形で配る事業所がふえ、その風習もほとんどみかけなくなりましたね。
職員に配るとしても大きな問題が出てくる…
仮に職員へ還元するとしても大きな問題が出てきます。
今回は物価高騰や人材獲得に対応できるよう介護職員1人に対して5.4万円を給付するというもの。
介護職員に対して給付するものではないですし、物価高騰は職員全員に降りかかっている問題であり介護職員だけの話ではない。
分配方法も当たり前ではありますが介護職員に限定されているものでもない…。
介護職員だけに物価高騰に対する一時金を出したら不平や不満が溜まるのは目に見えているでしょう。
職場内の雰囲気が一時金によって大きく崩れるくらいなのであれば分配などせずに生産性向上に補助金を全て使うというのも決して愚策にはならないでしょう。
また、職員に還元するにしても職員全員に均等分配したほうが手続き的にも楽ですし、不平や不満を生まないのではないでしょうか?
一律にして配る場合、事務職やセラピスト、看護師さんやドライバーさんや用務員さん等関わっている業種は多岐にわたります。
その金額は5.4万円からは大きくかけ離れたものになるのは安易に想像できることでしょう。
全国平均1万円~2万円もらえれば御の字…
というところで、そもそも5.4万円もらえると思っている人たちが多い中、多くが生産性向上の費用に回され、介護職員のみに分配するのか全職員に還元するのかで大きな違いはあるでしょうが全国平均として多くても1万円~2万円もらえれば御の字。
基本的に1円ももらえないというのもいたって普通の補助金になるでしょう。
【公式】ケアマネ介護福祉士が経営に参画しているのであれば1万円前後を分配するくらいなら忘年会の費用にでもして会計を楽にしたいところではありますね。
忘年会の費用でクオカードでも買って、全員に配る。
そうなれば給与計算とかしなくて済むから…。
一時金なわけだし…。
事務職員の手間を考えると現金での支給はちょっとハードルが高い気がしますね。
支給要件が確定する時期や実際に支給されるタイミングによりますがボーナス時期でもない限り現金支給はしんどいし、たとえボーナスタイミングだったとしても手間が増えるのは変わりないし全員に配るとなるともともとボーナス支給予定がなかった人の計算まで…。
最近103万円の壁が壊されるというのが話題になっていますが、現状では働き控えが発生している中で現金支給はいろいろとハードルが高いですね。
特に現金での支給は他にもハードルが高く、支給予定だった職員が退職したりで支給前と支給後に再計算が必要な場合がほとんど…。
クオカードは買ったら終わりですからね…。
そもそも一時金で何か解決する問題なのか…
物価高騰はともかく、人材獲得や安定した人員の確保というのは一時金でどうにかなる問題ではないでしょう。
本来であれば3年に一度の介護保険報酬改定で変えるべきものだったもの…。
生産性の向上に関しても、介護職員一人当たり5.4万円の一時金でどうにかなるものではありません。
本気で取り組むのであれば恒久的な資金投入が必要。
2024年度の改正を行わなかったため、介護関係から批判の嵐であり一時金という形で乗り切ろうという国の動きに見えてしょうがないですね。
今回の5.4万円も国が悪いのかメディアが悪いのか…
今回の介護職員5.4万円に関しても、誰の伝えた方が悪いのかはわかりませんが、まるで介護職員が5万円を毎月もらえるような話し合いがなされているようなように勘違いする見出しが躍っていますね。
基本的に一時金ですし、事業所が使い道を決められる上に介護職員へ配る必要性もそれほど強くない。
こんな見出しにされると企業として、補助金を適正に使って残りの微々たる額を職員に分配したところで非難を浴びるだけ…。
もはや補助金をもらったことを内緒にして使ってしまうか、ハナから補助金をもらわない方がいいんじゃないかと思ってしまいます。
むしろ国も大きな補助をしているようなパフォーマンスに見え、実際補助金を受ける企業も減りそう…。
そんな木阿弥に見えて仕方ないですね。
介護職員はもう慣れっこ?
とはいえ、特定処遇改善加算が創設された時にも介護職員の給料が8万円上がるっていうワードだけが独り歩きしましたね。
あの時も、印象操作がひどかったイメージが大きくあたかも介護職員全員に8万円が給付されるような聞こえ方でした。
実際に8万円もらえる人は施設に1人いればいい…。
3種類の処遇改善加算関係に介護職員は一喜一憂した事でしょう。
実際はもらえない人はもらえない、もらえる人はもらえる仕組みだったのでかなり潤った人が居たのは間違いないでしょう。
とはいえ、多くの職員がどうせもらえないんでしょう?
みたいなマインドになっているのではないかと考えます。
しっかりと仕組みを理解すれば落胆もしない
この記事をここまで読んでいただいた方に関しては心配がないかもしれませんが、介護業界というのは基本的に介護保険、またはそれに付随する補助金のような形で給料が支払われている一般企業とは違う業態です。
処遇改善に関しても今回のことを考えるともはや多くの介護職員は見出しに踊らされずに過ごしているのではないでしょうか?
そもそも処遇改善に関しても見出しに踊らされずに仕組みを理解することが大きな問題なのではないでしょうか?
あるいはすべての介護職員がわかりやすく不公平感を感じないシステム作りが国、企業を含めた雇用者側の取り組みとして必要なのかもしれません。
実際に、処遇改善加算に関してはしっかりと説明し制度の理解を深めようとする企業とA4用紙1枚だけ渡して終わりの事業所とで理解度が大きく違い、会社が8万円くれずに1万円しかくれない!ピンハネ企業だ!と大きく揉める所が想像をはるかにうわまわるくらい出てきましたし、今でもそう思っている職員さんがいるのも事実。
介護保険という制度から自分たちの報酬が出ていることを踏まえ、3年に一度の法改正やこういった特例の法整備に関してアンテナを高くできるような人がこの記事を通して一人でも多くなることを願います。
この記事を書いた【公式】ケアマネ介護福祉士のプロフィール
大規模法人にて、グループホーム、老人保健施設、通所リハビリテーションにて介護職員として従事。
経験を活かしながら介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得し8年ほど従事。
その後自身の転居をきっかけに、相談員、介護職員を兼務しながら施設ケアマネとして5年間勤務。中間管理職を経て居宅ケアマネへ転身。
現在は主任介護支援専門員として日々子育てと仕事に全力で奮闘中。同時にブログも運営中。
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