障害者の外出を支援するガイドヘルパーとは?資格の種類や取り方、向いている人について分かりやすく解説

障害者(児)を支援する仕事の中には様々なものがありますが、その1つに「ガイドヘルパー(移動介護従事者)」という仕事があるのをご存じですか?

ガイドヘルパー(移動介護従事者)は、1人では外出が難しい方のサポートを行う職種で、必要な資格は対象者の障害によって3種類に分かれています。

この記事では、ガイドヘルパー(移動介護従事者)の具体的な仕事内容を説明するとともに、資格の取得方法や取得にかかる費用、就業先などを紹介します。

ガイドヘルパー(移動介護従事者)とは

ガイドヘルパーとは、正式名称を「移動介護従事者」といい、何らかの障害によって、1人では移動が難しい人に対して、外出や移動の介助を行う職種です。ガイドヘルパーの利用対象となるのは、視覚障害や全身性障害(常時車椅子を利用する方)、知的・精神障害を持つ方で、一人で外出や移動を行うことが難しい人です。このような方々は、心身の状況から社会参加の機会が少なくなりがちです。

しかし、ガイドヘルパーが関わることで、これまでの生活を維持すること、社会交流の機会を増やすことができるようになります。つまり、ガイドヘルパーは単なる移動の介助だけではなく、生活の質を維持することや向上することにも影響を与える大切な役割を持っていると言えるでしょう。

ガイドヘルパーの仕事内容

ガイドヘルパーの仕事内容は、対象者が抱える障害の種類によって異なります。「視覚障害」「全身性障害」「知的・精神障害」の3つの障害特性ごとに見ていきましょう。

視覚障害

視覚障害者に付き添い、外出を支援することが主な仕事で、「同行援護」と呼ばれます。外出先では必要に応じて代読や代筆を行うなど、言葉で周囲の状況を伝え、対象者が安心して外出できるように支援します。

例えば、ドアの開閉や階段の昇降や交通機関の利用等の場面で、利用者に現在の状況や注意点を伝えることなどが挙げられます。

全身性障害

常時車椅子を利用する方の外出に付き添って支援を行います。自走できる利用者の場合、車や自転車、他の歩行者に気を付けて移動ができるよう誘導を行います。また、横断歩道の青信号は、車いすでは渡るには時間が足りないこともあるため、安全に移動できるよう適切な場面で介助を行う場合もあるでしょう。
自走ができない利用者の場合には、ガイドヘルパーが車いすを押して移動します。移動の際には利用者が怖い思いをしないよう、安全な場所を通ることや段差の衝撃を和らげるような丁寧な介助が求められます。

知的・精神障害

知的・精神障害者(児)の外出を支援することが主な仕事で、「行動援護」と呼ばれます。対象者によってはコミュニケーションを取ることが難しかったり、その場に適した行動を取ることが難しい場合などもあるため、対象者の特性に応じたコミュニケーション方法で、本人にとっては安全に、周囲にも配慮をしながら支援することが重要です。知的・精神障害がある人がガイドヘルパーを利用するケースは、通学や作業所などに通所するケースが多いでしょう。

ガイドヘルパーに必要な資格

ガイドヘルパーになるためには、前述した障害別に資格を取得する必要があります。では、それぞれの資格について詳しく見ていきましょう。

同行援護従業者養成研修

同行援護従業者養成研修とは、障害者総合支援法における視覚障害者の外出等を支援する「同行援護」を行う際に必要となる資格です。この研修には、一般課程と応用課程の2種類があり、次のような違いがあります。

課程 内容
一般課程 障害福祉制度の基本
視覚障害分野についての基礎知識
移動支援に関する基本的な技能 等
応用課程 障害や疾病の理解
障害者・児の心理
移動支援の技能や公共交通機関を利用した基本・応用技能 等

応用課程まで修了すると、サービス提供責任者資格要件を得ることができます。

受講資格

一般課程の場合、受講資格は特になく誰でも受講することができます。
応用課程の場合は一般課程を修了している人に限られています。

カリキュラム

一般課程のカリキュラムは次のとおりです(参考1)。約3日間かけて実施されます。

科目 時間数
視覚障害者(児)福祉サービス 1時間
同行援護の制度と従業者の業務 2時間
障害・疾病の理解① 2時間
障害者(児)の心理① 1時間
情報支援と情報提供 2時間
代筆・代読の基礎知識 2時間
同行援護の基礎知識 2時間
基本技能(演習) 4時間
応用技能(演習) 4時間

20時間

応用課程のカリキュラムは次のとおりです(参考2)。研修日程は2日間です。

科目 時間数
障害・疾病の理解② 1時間
障害者(児)の心理② 1時間
場面別基本技能(演習) 3時間
場面別応用技能(演習) 3時間
交通機関の利用(演習) 4時間
12時間

費用

研修は都道府県等が管理していますが、実施団体としては介護系の専門学校などが多く、年に数回開講している学校もあります。費用は一般課程3万円程度、応用課程は2万円程度が相場となっています。

全身性障害者ガイドヘルパー研修

全身性障害者ガイドヘルパー研修とは、全身に障害を持ち、常時車椅子を利用する人等の外出、移動時の支援方法を学ぶ研修です。
研修では、通院時の介助、車椅子の介助、外出時の更衣介助等、ショッピング、旅行の際の外出支援を学びます。

研修機関によっては「ガイドヘルパー養成研修(全身性障害課程)」や「全身性移動介護従事者養成研修」というように、研修名称が異なる場合があります。

受講資格

都道府県によって異なるため、無資格でも受講可能な地域もあれば、介護職員初任者研修修了者以上の有資格者でなければ受講資格のない地域もあります。
詳細については各都道府県の担当窓口にお問い合わせ下さい。

カリキュラム

カリキュラムは次のとおり(参考3)で、研修期間は約3日間です。

科目 時間数
ホームヘルプサービスに関する知識 3時間
ガイドヘルパーの制度と業務 1時間
障害者(児)福祉の制度とサービス 2時間
障害者(児)の心理 1時間
重度脳性まひ者等全身性障害者を介助する上での基礎知識 2時間
移動介助にあたっての一般的注意 3時間
移動介助の方法(演習) 3時間
生活行為の介助(演習) 1時間
16時間

費用

研修は都道府県等が管理していますが、介護系の専門学校などで実施されています。費用は45,000円程度が相場となっており、科目免除がある場合には費用も安くなります。

行動援護従業者養成研修

行動援護従業者養成研修とは、知的・精神障害により行動上著しい困難を有する障害者の外出、移動時の支援を学ぶ研修です。研修では、知的障害や精神障害に対する基礎知識やコミュニケーション技術、実際の援助方法などを学びます。

受講資格

特にありません。介護系資格の保有や実務経験等は問われていないため、誰でも受講することができます。

カリキュラム

カリキュラムは次のとおり(参考4)で、研修期間は3〜4日程度です。

科目 時間数
強度行動障害がある者の基本的理解に関する講義 1.5時間
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 5時間
強度行動障害のある者へのチーム支援 3時間
強度行動障害の生活の組み立て 0.5時間
基本的な情報収集と記録等の共有(演習) 1時間
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解(演習) 3時間
行動障害の背景にある特性の理解(演習) 1.5時間
障害特性の理解とアセスメント(演習) 3時間
環境調整による強度行動障害の支援(演習) 3時間
記録に基づく支援の評価(演習 1.5時間
危機対応と虐待防止(演習) 1時間
24時間

費用

研修は都道府県等が管理していますが、介護系の専門学校などで実施されています。費用は2〜3万円程度のところが多いです。

ガイドヘルパーとしての職場・勤務先とは?

ガイドヘルパーの主な職場・就職先は、訪問介護事業所や障害者支援施設などが一般的です。サービス別に詳しく見ていきましょう。

訪問介護事業所

介護保険法・障害者総合支援法等に基づいて訪問介護サービスを提供する事業所を指し、障害者(児)を対象としたガイドヘルプサービスを行っている事業所も多くあります。

障害者(児)支援施設

日常的にサポートを必要とする障害者(児)のための福祉施設を指します。施設で職員として働きながら、ガイドヘルパー(移動介護従事者)の資格を生かし、普段の介護だけではなく、外出支援を担うことができます。

共同生活援助(グループホーム)

共同生活援助(グループホーム)は、障害者が日常生活上の支援を受けながら少人数で共同生活を送る施設です。日中は就労支援事業所等で作業を行い、夕方になると施設へ帰ってくるという生活リズムを送ることが多いとされています。

児童発達支援・放課後等デイサービス

児童発達支援とは、主に小学校就学前までの子どもが通い、支援を受けるための施設です。
日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、遊びや学びの場を提供しています(参考5)。

一方の放課後等デイサービスは、6歳〜18歳までの子どもが、放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる福祉サービスです(参考6)。個別の発達支援や集団活動を通して、家と学校以外の居場所づくり、友人づくりをするのが狙いです。

社会福祉協議会などの公的機関

公的機関に所属するガイドヘルパーは、利用者の要望に応じて派遣されることが多いです。

ガイドヘルパーのメリット・やりがい

ガイドヘルパーの大きなメリットは「身体的負担の少なさ」「個々に合わせた支援ができる」という2点です。
全身性障害を対象とした外出支援では、排泄や移動などで身体介護を必要とする場面はあるものの、他の介護関連職に比べると身体的な負担は少ないと言えるでしょう。また、1対1で支援することが多いため、一人ひとりに合わせた支援ができる点もメリットの1つといえます。

では、ガイドヘルパーのやりがいにはどのようなものがあるでしょうか。ガイドヘルパーとして最もやりがいを感じられるのは、実際に外出に同行した時です。外出をしたいが、障害によって外出を諦めざるを得ない人は、少なくありません。そんな時にガイドヘルパーが付き添うことで、障害を持つ人たちの生活を充実したものに変えられるでしょう。例え利用者が言葉では「ありがとう」という気持ちを伝えられないとしても、いきいきとした表情や笑顔を見ることで利用者と喜びを共有できる点こそが、ガイドヘルパーの醍醐味と言えるのではないでしょうか。

ガイドヘルパーに向いているのはこんな人

ガイドヘルパーのお仕事が気になるという方の中には、自分がやっていけるだろうかと考えている方もいるのではないでしょうか。では、どんな人が向いているのか見てみましょう。

人と関わるのが好きな人

ガイドヘルパーとして働く上では、利用者の方とのコミュニケーションが欠かせません。利用者の障害特性によっては、コミュニケーションの方法を工夫したり、分かりやすい表現を行う必要もあるため、人が苦手な方には向いていないかもしれません。

臨機応変に対応できる人

利用者との外出は、教科書通りに行かないこともしばしば発生します。そんなときにパニックになってしまったり不安な表情をしてしまうと、その雰囲気が利用者にも伝わってしまい、不穏な状態になりかねません。そういった事態に陥ったときには、冷静な判断で臨機応変に対応することが求められます。

方向感覚のある人

利用者との外出において、地図を読むことが得意だったり、方向感覚に自信があることは長所となり得ます。利用者がストレスなく目的地へたどり着けるよう、しっかりガイドできる能力があることが望ましいでしょう。

まとめ

障害を持つ人の社会参加を推進している現代において、外出時に支援が必要な障害者は増加傾向にあります。一方で、外出を支援するガイドヘルパーの数はまだまだ足りていないのが現状です。ガイドヘルパーはほとんどの場合誰でも取得することができ、短期間で取得することが可能な資格ですので、まずは資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献