社長インタビュー

株式会社やさしい手

株式会社やさしい手
代表取締役社長 香取 幹氏

香取氏とイーライフ(前e介護転職運営)代表北上

介護業界の今後について 第1回(4回連載)

「やさしい手」の代表取締役社長・香取様にインタビューしました。

介護における成果主義とは?

ご利用者さんへの提供価値や利用満足度を数字に反映させる

北上

香取社長が経営者としての極めて高い意識で、新聞の記事に答えられているなと感じられたところがあったのです。

「これからは従来の福祉の考え方から業績中心の考え方に移行していく。ご利用者に対してどれだけ質の高いサービスを提供できるかを徹底的に考えて、数字に反映させる仕組みを構築していく」

これは従来の在宅福祉サービスの考え方から脱却するという意味にも取れますが、そのへんのジレンマとか、そのものにどのようなメッセージがあるのでしょうか。

香取氏

前提条件をまずお話します。今までは、なんとなくサービスをすることで私も満足し、ご利用者さんもなんとなく決められたサービスを受けておしまいでした。しかし、今後最も重要なことは、やさしい手でサービスを受けたことで、元気になったり、人生が楽しくなったという成果です。つまり、利用者さんに基づく、利用者満足度を成果主義で考えていくということですね。

お給料が成果主義ではなくて、ご利用者さんに一体どういう提供価値があったのか、ご利用者さんへの提供価値が成果主義だという形です。ご利用者さんへの提供価値を個別に図っていくということが非常に大切な考え方だと思っています。

全社的にこの考えを行動に展開することについては、当然難しい考え方ですので一般的には「そんな難しいこと、出来る訳ない」とよくお叱りを頂きます。確かに難しいですが、この考えを確実にする為に、弊社の従業員一丸となって目標目指して努力しています。この過程で弊社従業員にも考えをきちんと伝えられます。こうして初めて行動が展開できて、結果的に利用者様にいいサービスが提供できます。その上で最終的に成果を上げなければいけない。

いろいろな段階があるわけですが、その段階を少しずつ浸透させることができると信じています。

北上

なるほど。
いうなれば顧客満足度の最大化になると思うのですが、従来の介護サービス業界はその意識は比較的薄かったのでしょうか。

香取氏

従業員一人ひとりは既に意識していたと思います。まず「良い」概念を提案させて頂き、今までご利用者様が気が付かなかった良さを認識して頂きます。その具体的な行動の展開方法をご説明し、納得頂いてやっと実現できると考えています。

評価の仕組みは?

検診の様に評価することで成果をご実感頂きます

北上

そのなかで非常に大切な部分があると思うのですけれども、数字に反映させていく仕組みというのは、そのサービスの対価に対して誰かが評価していかなければいけないと思うのです。

それは直接利用者様に対して、例えば御社のどこか違う事業部がアンケート調査とか、意識調査とかいうのをやっていくということなのでしょうか。

香取氏

概念的には今の話ですね。介護予防でいうと健診という方法があります。

いわゆる測定SF-36という方法論や、都老研式という具体的な数値化のメジャー面とシステムがあります。調査をして具体的な数値を見せるということです。

簡単に言うと、健診後「あなたの体力年齢は67歳です」と出てくるものと同様フィードバックしていくことです。介護予防に限っていうと、そういうことになると思います。

ご老人は体力的、筋力的だけではなく歩行の問題がありますので、その点もきちんとご評価していく。その上で成果をご実感頂くということも非常に大切なことだと思います。

いずれにしても、より良い豊かな生活のために、ご利用者様が前向きにお考え頂けるような目標を設定し、それを共に達成する仲間として認めて頂けるように努力したいと思っています。

介護予防の利用率は10%?

全員が切り替わるのに1年以上かかる為、数か月では何とも言えない

北上

何日か前の日経新聞に介護予防という記事が結構大きく載っていました。介護予防の利用率は10%前後だという数字が載っていたのです。

香取氏

まだ数カ月分しか動いていないので、これからだと思います。

現在、要介護認定のご利用者様は、毎月新しい認定に切り替わっています。ただ1年で一回りしないと全員が切り替わらないのです。
1~2割の方は、要介護認定の期間が2年に及ぶ時もありますので、全員が新要介護認定の介護予防給付の認定を受けるには、まだまだ時間がかかります。

このように、全体の利用者における介護予防利用者の比率は、全員がひと回りする状態から、ほど遠いです。それ故に、まだ10%という話が大げさというか、新聞としても報道意図があって、そのように書かれているのではないかと思います。

北上

確かに、日経新聞さんだけあって、直ぐに財政を結びつけるような記事の出し方でした。 今、お話をお伺いして「なるほどな」という印象を受けました。

香取氏

予防給付のことだけ書くとなると、予防給付はまだ始まったばかりですし、なかなか難しいと思います。

介護も医療も予防をスタートしたばかりで、本当に財源を投入していいのかという議論は、これからの話だと思います。私ども事業者が介護予防における予防の成果を上げられるかどうかは、私どもにとっても非常に重要なポイントになってくると思います。

介護事業者の立ち位置の難しさ

社会的なニーズを見極め供給出来る形で利益を出すことに意味がある

北上

社長がおっしゃっているように、現在訪問介護サービスの売上は若干減った。
それを介護予防と介護予防の事業でも展開と売上を上げていこうとしていますよね。
私どもの単純な考え方としては、おそらく国としても極力介護予防で終わらせたいのではないかと思っています。

結局、介護の需要が膨れあがってしまうと、どうしても財政を圧迫しかねない。
かといって介護事業者に対して手厚く保険料を払うことも難しい。というような、結構難しい位置に介護事業者さんはいらっしゃるのかなと思います。

その辺りのジレンマはいかがでしょうか。

香取氏

全員がみんな寝たきりになって、全員が要介護状態になればいいのかと言うと、そういう訳ではないと思っています。きちんと社会的なニーズを見極めて、きちんと供給できる形で利益も出ればこんなに良いことはないです。

このような社会的ニーズを見つけ出して実現していくことが、非常に意味があることだと思います。

介護予防とか予防医療という発想で考えると、例えば最近メタボリックシンドロームの報道がありますね。予防しようとしても、ついつい食べてしまう。結局の所、自分自身で自制して健康管理をしないといけないと思います。

昔よりも喫煙率も下がり、自己責任的文化は非常に進行しています。

気がついている人は長生きするけれども、気がついていない人は長生きできない。自己選択が可能な形に世の中がどんどん変わっていきます。

その中で、一人ひとりが健康に暮らす為の知識を深め、努力も求められてくる。
自立という意味では厳しい世の中になってくると思います。

人間が生きていく生命体である限りは、一人ひとりの人間がきちんと頑張って努力していかなければいけなくなるような気がします。

そういった意味での展開の一つが介護予防という発想ですし、自分の人生をどう生きるかに自己責任をもつ意識がここ20年で発達してきています。

今まではどうやって働くか、どうやって子育てするかという範囲で終わっていました。しかし今後は、高齢のリスクにどう対応するか、健康のリスクにどう対応するかも、まさに自分でリスクをきちんと負っていかないといけない。

リスクの文化をセルフマネージメントすることが、今後社会的ニーズとして有効な話になってくると思います。

北上

紙面の都合もありますので、香取様とのお話は第2回へと続きます。⇒
(第1回終了。)

やさしい手 会社概要

■設立年月
平成5年10月1日

■代表取締役社長
香取 幹

■業務内容
指定居宅サービス事業
訪問介護(滞在・巡回)/訪問入浴介護/通所介護(デイサービス)/福祉用具貸与販売・住宅改修/短期入所(ショートステイ)
指定居宅介護支援事業所
委託事業
包括支援センター/在宅介護支援センター
有料職業紹介事業
一般労働者派遣事業
フランチャイズ事業
各種介護職員養成講座(初任者研修・都県指定ホームヘルパー2級養成講座・他)
サービス付き高齢者向け住宅運営事業